南米最高峰のFF"SUV"ツーリングカー選手権TC2000では4度のチャンピオン獲得経験を持つ父リオネルが僚友ピケJr.を降して初戦を制覇している 開幕からのアルゼンチン・ツアーを終え、ウルグアイへと渡ったTCRサウスアメリカ・シリーズ第5戦が7月12〜13日にアウトドローモ・デ・メルセデスで開催され、“新生”ホンダYPFレーシングのネルソン・ピケJr.(FL5型ホンダ・シビック・タイプR TCR)や、リオネル&ティアゴのペーニャ親子がグリッド上位トップ3を占めるなか、南米最高峰のFF"SUV"ツーリングカー選手権TC2000では4度のチャンピオン獲得経験を持つ父リオネルが僚友ピケJr.を降して初戦を制覇している。
ウルグアイの首都モンテビデオから281km、アルゼンチンのブエノスアイレスから317kmに位置するシウダード・デ・メルセデス・スポーツコンプレックスで迎えた2025年シーズン第5戦のレースウイークを前に、シリーズは大きなカレンダー改訂の必要性に直面。
今季より“SUVストック”採用の新時代を迎えているSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”との併催が予定されていた8月15〜17日のベロオリゾンテ、ミネイロン・スタジアムでの一戦は「都市型サーキットのインフラ整備に必要な期間に関する技術的分析に基づき、求められる安全性と品質基準を確保するのに追加時間が必要になる」とされ、同国パラナ州カスカバルのジルマー・ビューに変更されることとなった。
その開催地変更からわずか数日後、カレンダーにさらなる調整が加えられ、そのカスカバルは9月5日〜7日に延期されるとともに、従来の8月15〜17日にはミナスジェライス州ベロオリゾンテから北150kmに位置するシルクイート・ドス・クリスタイスに変更。また、10月24〜26日にリオグランデ・ド・スル州ヴェロパークで予定されていたイベントは急きょの開催中止が決定した。
そんな急変のなか迎えたウルグアイでの初戦は、初開催だった昨季2024年に安全性と舗装状態が大幅に改善された全長2960m、9つのコーナーを有する低中速トラックが舞台に。これが初挑戦となる前戦テルマス・デ・リオ・オンドでポールポジション獲得のピケJr.も「慣れないコースなので、最初から難しい週末になることは分かっている」と気を引き締める。
「この選手権自体、今季が初のフル参戦だし、初の前輪駆動ツーリングカーを含めて険しい道のりになることは分かっていた。今週のメルセデスもまた初めての経験だから、同じ状況になるだろう。でもこの先、昨季のストックカーで走ったエル・ピナールに参戦することで、もう少し有利になると思っている。タイトル獲得を強く望んでいるし、チャンピオンシップ後半戦はより僕らにとって有利になると思っているよ」
そんな言葉とは裏腹に、走り出しのフリープラクティス(FP)から2セッション連続で初挑戦サーキット最速を記録したピケJr.は、まさに上昇気流に乗っていることを証明する走りで予選へ挑むと、最初の予選Q1こそリオネルに首位を譲ったものの、午前FPの気温6℃という肌寒いスタートと濃霧のなかでも、同日最高の17℃というコンディションに変化したQ2でもチームメイトに0.045秒差をつけ、2戦連続のポールを射止めた。
「簡単ではなかったね。予選中に渋滞に巻き込まれたが、ホンダのマシンは練習走行から速かった。今週は40kgのバラストを積んでいたにもかかわらず、非常に良い走りを見せてくれた」と満足げなピケJr.。
「もう少し良い結果が出せたかもしれないが、チャンピオンシップに重要な10ポイントを獲得した。チーム全員と(代表の)セバスチャン・マルティノに祝福を送りたい。このマシンのおかげで、本当に楽になったよ」
予選日翌日、日曜のメルセデスの気温は10℃と肌寒さを感じさせるなか、レース1はスタートで勝負が決し、フロントロウ発進だったアルゼンチン出身のベテランが、ブラジル名門一家の多彩な男に逆襲。ネルシーニョをパスして首位に躍り出たリオネルが、オーバーテイクが難しいことで知られるサーキットでしっかりとしたディフェンスを見せ、そのまま0.423秒差で今季4勝目を飾った。
「素晴らしいスタートを切り、その後も粘り強く走り続け、僕よりも速かったネルシーニョのプレッシャーにも耐え抜いたと理解している。スタートこそが鍵だったね」と勝者リオネル。
一方のピケJr.も「マシンはとても速かったがスタートは少し慎重になり過ぎた」と同様の敗因を認めた。「ポールシッターがレコードラインのダーティサイドからスタートする。僕はすべてのセクターで少し速かったけど、オーバーテイクが非常に難しいサーキットだし、前にチームメイトがいたので、あまりリスクを冒せなかったんだ」
リバースグリッド採用のレース2では、序盤に首位浮上を果たしたヘナロ・ラゼット(PMOレーシング/プジョー308 TCR)にジャンプスタート裁定でドライブスルーペナルティが課され、続く2周目にルイス・ラミレス(PMOレーシング/プジョー308 TCR)をパスしていたファン-アンヘル・ロッソ(パラディーニ・レーシング/Lynk&Co 03 TCR)がトップへ。
終盤ラファエル・レイス(W2プロGP/クプラ・レオンVZ TCR)が追いすがるなかでもポジションを堅持し「後続が非常に速かったから決して楽ではなかったが、マシンはつねに同じ挙動を示し、つねにやるべきことをやってくれた。たとえ僕らが周囲ほど競争力がなかったとしても、すでに昨季よりは勝利数が増えている。正直言って、とてもうれしく満足しているよ」と語ったロッソが今季2勝目を手にした。
この最終ヒート直前で、エンジントラブルによりリタイアしたディフェンディングチャンピオンのペドロ・カルドゥソ(PMOレーシング/プジョー308 TCR)に対し、リオネルが92ポイントの余裕の差をつけ、スタンディング首位独走体制を築いたTCRサウスアメリカ・シリーズ。続く第6戦は7月25〜27日にウルグアイの首都モンテビデオからわずか30kmほどに位置する、エル・ピナールのビクター・ボラット・ファビニ・サーキットにて争われる。
[オートスポーツweb 2025年07月17日]