
参院選の投票日が20日(日)に迫っています。JNNの情勢調査では、これまで自民党が圧倒的な強さを誇っていた群馬県で参政党の新人が自民現職を猛追しています。「保守王国」で一体、何が起きているのでしょうか?
【写真で見る】JNN インターネット調査では与党が厳しい情勢に
自民・立憲が“横一線” 激戦の佐賀九州有数の米どころ、佐賀県。参議院選挙で2010年から“負けなし”の自民党が危機感を強めています。
1議席を争う佐賀選挙区。JNNの情勢調査では、立憲民主党の新人と自民の現職が激しく競り合う展開となっています。
江藤拓 農林水産大臣(当時)
「私もコメは買ったことありません、正直。支援者の方々がたくさんコメをくださるんですね。まさに売るほどあります」
今年5月、佐賀市内の講演で江藤前農水大臣が失言。県内の農家からも不評を買っています。
コメ農家 古庄達治さん
「世間がコメがないと言いながら、あんな風に言うのはちょっとおかしいかなと。いくら農家でもコメはその年の自分たちの分しか持ってない」
3期目を目指す自民現職の山下雄平氏。逆風を感じながらの選挙戦です。
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自民現職・山下雄平候補
「いま自民党というだけで、なかなか話を聞いてもらえないような状況です。しかし、この12年間、農村の声、地方の声を一番聞いてきたのは山下雄平だという自覚があります」
12年前に33歳の若さで初当選して以来、「最も厳しい戦いだ」と話します。
自民現職・山下雄平候補
「経済対策や物価高対策が十分でないことだったり、農業政策については生産者・消費者両側から違う立場での指摘をいただくことも多い。党と政府の“不人気”度合いと、自分が個人的に12年間築いてきた人間関係とのどっちを重視してくれるかの勝負なんじゃないかと」
激しく競り合うのは、立憲の新人、富永明美氏です。
立憲民主党 新人・富永明美候補
「何もかも値上がりして物価高と言われ、ずいぶん経ちました。それなのに給料も年金もほとんど上がらない。私は変えていけるんだということを訴えていきます」
国民民主党の県組織からも支持を受け、18年ぶりの野党系の議席獲得を狙います。
立憲民主党 新人・富永明美候補
「県民の怒りの積み重ねが今、来ているのかなと感じています。減税とコメは農業者への戸別所得補償制度の復活を願われる声が非常に多い。皆さんと一緒に変えていきましょうということを訴えていきたいです」
4人が立候補している佐賀選挙区。“接戦”の2人を参政党の新人が追いかけ、諸派の新人は厳しい情勢です。参政党の下吹越優也氏は…
参政党 新人・下吹越優也候補
「この失われた30年の中で我々の所得は全く上がっていない。まず優先的に日本人の生活を豊かにしてください」
佐賀選挙区では、このほかに諸派の松尾芳治氏が立候補しています。
争点となっている「物価高対策」。県内のスーパーでは切実な声が…
3人の子育て中(30代)
「子どもが大きくなるにつれ、食べる量も増える。1人当たりの量も多くなるから買うものも増える。安いものを探して割引とか狙って買ったりする」
年金で生活(70代)
「苦しい、年金生活者になると。コメは高い。なんとか食べていけるけど、やっぱり食べるだけじゃなくて他にも色々いるじゃないですか。もう少しみんなが楽しく暮らせるような世の中にしてほしい」
名物“湯もみ”で知られる草津温泉や、石段がシンボルの伊香保温泉など、日本有数の温泉街を有する群馬県。
こちらも1議席をめぐる争いですが、佐賀とは事情が異なっています。
群馬と言えば…
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福田赳夫氏、中曽根康弘氏、小渕恵三氏、福田康夫氏と、戦後、4人の総理大臣を輩出してきた“保守王国”です。
自民党に逆風が吹いた2024年秋の衆院選でも県内5選挙区を独占しました。そんな“自民党一強”とも言える場所でいま、異変が起きています。
JNNの最新の情勢調査では、自民の現職・清水真人氏が一歩リードし、参政の新人・青木ひとみ氏が猛追。その後を立憲民主の新人・河村正剛氏が追う展開です。
自民党 現職・清水真人候補
「見えない何かが後ろから迫ってくる、そのような感じであります」
参政党 新人・青木ひとみ候補
「自民党王国その壁は分厚い、だけれども諦めないで、皆さんと一緒に新しい政治をここ群馬から一緒に作り上げていきたいんです」
「日本人ファースト」を掲げ、今回の参院選で“台風の目”になっている参政党。
群馬でも支持を拡大しています。青木氏がアピールするのは看護師として働いてきた経験です。
参政党 新人・青木ひとみ候補
「他の政治家には負けない思いがあります。それは看護師の道を選んだ時と変わらない、困っている人を一人でも多く救いたい。誰かの役に立ちたい、この思いは今も変わりません」
この選挙戦に手応えを感じているといいます。
参政党 新人・青木ひとみ候補
「参政党知らなかったんだけどテレビで観て『いいこと言ってるじゃん』と仰って来てくださる方も多いです」
ただ、中には参政党への“不信感”を口にする人も。
男性
「正直、参政党という党の考えにちょっと懐疑的な部分があるので、まずは青木さんとは思ってるんですけど」
参政党 新人・青木ひとみ候補
「減税、子育てをまず1本2本でやっていく」
その青木氏に猛追されているのが、自民の現職・清水氏です。情勢調査ではリードしていますが、演説では相手を意識した発言が目立ちました。
自民党 現職・清水真人候補
「今回、思いもよらぬ新興勢力が上がってきている。大変大変厳しい選挙戦ではあります。もうここまで来ると皆様方のお力にすがるより他ない。これくらい厳しい状況であります」
念頭にあるのはもちろん、参政党の追い上げです。
自民党 現職・清水真人候補
「同じ土俵である意味戦っているようで、戦っていないのではないかとも言える部分があるかな。(参政党は)ネット上の戦いが非常に優れているのではないか」
“相手の土俵に乗っても意味はない”と話す清水氏、戦略は「地道な声かけ」だといいます。
自民党 現職・清水真人候補
「今まで私どもを支持していただいた方々に、真摯に私たちの政策を訴えていく。その上で理解をしていただいて、一票を投じていただく」
児童養護施設などの支援に取り組んできた立憲民主党の河村氏。訴えたのは“現役世代への支援”です。
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立憲民主党 新人・河村正剛候補
「子どもたちを支えるためには、親御さんの世代を支えていかなければいけないということに気づき、やはり働く人たちを支える政策を強く強く推し進めていかなければいけない」
演説を聞きに来た人
「一昔前だと“とりあえず自民”みたいなところだったが、いろんな情報を見て、そこに対して一歩立ち止まって考えて『どうしよう』と自分で(投票する)政党を考える人が増えてきた印象」
共産党の高橋保氏は消費税減税などを掲げています。
共産党 新人・高橋保候補
「当面緊急に(消費税を)5%に下げること。そして、インボイスを廃止すること。これを要求しています」
群馬選挙区ではこのほかに、諸派の井田雅彦氏と上楽宗之氏、無所属の辛嶋美紀氏が立候補しています。“保守王国”の議席を自民党が守るのか明け渡すのか。その行方が注目されます。
JNN インターネット調査では与党が厳しい情勢に藤森祥平キャスター:
終盤に差し掛かっている参議院選挙。勝敗の鍵を握ると言われているのが、32の「1人区」です。2022年の参院選では、与党が28選挙区、野党が3選挙区で議席を獲得しました。
しかし、JNNが土日にインターネット調査を行い、取材を加味して分析した最新の情勢では、与党の優勢が8選挙区、野党系の優勢が16選挙区、接戦が8つの選挙区と与党が厳しい情勢にあることがわかります。
ただ、今回の調査では約4割の人が「まだ投票先を決めていない」と答えています。この後、最終盤で情勢が大きく変わる可能性もあります。
小川彩佳キャスター:
与党がかなり苦戦しているという情勢です。
株式会社QuizKnock CEO 伊沢拓司さん:
高齢化が進んで、地盤や組織の力が弱まるということになると、与党に流れていた保守系の層が、保守風の政党が増えてきているので、そちらに流れているのが現状なのかなと思います。
ネットを通して、多様な選択肢が見えるのはいいことですが、一方でわかりやすさ・投票しやすさというのは、やはり警戒をした方がいい。分断やデマは、“わかりやすい”に直結しますが、それが本当に正しい選択なのかというのは難しいところですよね。
正しい情報を選ぶというのは、非常にわかりづらいことですから。今はまだ投票先を決めてない4割の方がいらっしゃるとすれば、じっくりと勉強して、時間もそんなにないのでジャンルを絞って、興味あるジャンルだけでも、様々なソースから学びながら苦しんで投票していただきたいと思います。
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<プロフィール>
伊沢 拓司さん
株式会社 QuizKnock CEO
クイズプレーヤーとして活躍中