<虎を深掘り。>
阪神の旬の話題に焦点を当てる随時企画「虎を深掘り。」。今季の第13回は阪神ジョン・デュプランティエ投手(30)の飛躍の要因に迫ります。13試合に先発して6勝3敗、防御率1・42の安定感。キレ味鋭い変化球も駆使して4連勝中で、105奪三振はリーグトップです。来日1年目で先発ローテを支える“快投乱麻”。チームメート同僚や首脳陣、他球団007らの証言から飛躍の要因をひもときます。【阪神取材班】
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(1)捕手陣の証言 今季途中から毎試合マスクをかぶる坂本が、デュプランティエの特長を明かす。「球は全部すごい。全部が武器になるくらい良いボールを持っている」。真っすぐも変化球も球種はすべて一級品。開幕当初バッテリーを組んでいた栄枝は、その中でもカーブを絶賛する。「他のピッチャーならストライクゾーンにくるカーブが、キレがすごいのでワンバウンドになってしまう。やっぱりストレートが強いので、ストレートをマークしながら(変化球を)打つのは、すごく難しいと思う」。
打者から見ると、ストライクの軌道からストンと落ちていく感覚。150キロを超える直球との緩急で、より効果的になるという。加えて、独特なフォームも打者にとっては厄介だ。193センチの長身ながら、リリースポイントは低い。栄枝は「角度は長身ピッチャーというほどはない。リリースが低いということは、それだけ打者の近くで離しているということ。たぶんタイミングを取りづらいんじゃないかな」と見ている。
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高い投球技術に加えて、貪欲な向上心が異国での奮闘を支えている。坂本は「メカニック的にも配球的にも『もっと良くなりたい』と思っている。『こういうのはどう?』とか本人からいっぱい話をしてくれるので。お互いいろいろ考えたことを話し合って、試合でベストな選択ができています」と明かした。心身両面の充実が、好成績につながっていると感じている。
(2)コーチ陣の証言 安藤投手チーフコーチは「よく考えていますね。調整とか。自分で細かくいろいろ考えている」と野球に取り組む姿に感心している。金村投手コーチはかつて在籍した元守護神と重ね合わせ、レベルの高さを表現した。「スアレス(現パドレス)とか近いんじゃないかな。変化球の精度がすごく高いし真っすぐが強い。スアレスって絶対的な打たれないピッチャーじゃないですか。それに近いんじゃないですか」。来日1年目から発揮中の高いポテンシャルに、首脳陣も目を細める。
(3)007の証言 他球団の警戒も上がっている。あるセ・リーグのスコアラーは「米国人なのに流行のショートアームとは正反対。テイクバックが大きく、独特の間があるからタイミングを合わせにくい。体も日本人とは全然違う。あの体をムチのように使えるから、すごい球を投げます。スーパーピッチャーの要素を持っている」と語る。また、別球団のスコアラーは捕手坂本とのコンビネーションに注目。「打者の内側にスライダーなどを投げたい時でも、坂本選手はあえて外に構えている。(変化球の)曲がり幅を計算して、ここを狙えという『的』として構えている。逆球に見えるけど、逆球じゃない。制球がアバウトだなと思っていると痛い目に遭います」と弱点探しに懸命だ。
(4)同僚の証言 性格の良さも魅力のひとつだ。今季ともに新加入したネルソンは「彼の良さを伝えるのに何か1つと言われると、いろんな要素がありすぎて選べないよ」と笑う。常に付き添う中西通訳は勉強熱心な素顔を明かした。「相手の考えていることをしっかり考慮して発言したり、立ち振る舞っている。優しさが根本にある。日本語を覚えるのも早いし、学ぶ理由もチームメートとコミュニケーションを取るため。ここで成功するためにチームメートを知ろうとする姿を見ますね」。米ヒューストンの難関校、ライス大学出身のクレバーさも武器だ。
(5)デュプランティエの証言 異国での活躍に本人も手応えを感じている。「投球動作に関してはすごくハマっている。悪い時はちょっと(体が)開いてしまうからその分、少しボールがそれたりする。やっと自分の中で納得する形でハマっているよ」。真価発揮を期し、常にマイベストを追求中だ。前半戦ラスト先発は20日の巨人戦。確かな手応えを自信に、真夏のローテもけん引する意気込みだ。
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○…海外でもデュプランティエの注目度は高まっている。MLBのある国際スカウトは「米国時代から力のある球を持っていたけど、制球が課題だった。日本に来てからはコントロールがまとまっている。続けていけば注目を浴びて、メジャー復帰のチャンスがあるかもしれない」と変身ぶりに注目。別の国際スカウトは「日本はリード、要求するボール自体が違う。日本では力で勝負できるから」と好調の要因を分析した。
◆ジョン・デュプランティエ 1994年7月11日生まれ、米デラウェア州出身。ライス大から16年ドラフト全体89番目でダイヤモンドバックスに指名され、19年にメジャーデビュー。同年は先発、中継ぎで15試合に登板して初勝利、初セーブをマーク。21年も4試合先発した。23年11月にブルワーズとマイナー契約し、その後自由契約に。メジャー通算は19試合に登板(うち先発7)して、1勝4敗1セーブ、防御率6・70。193センチ、103キロ。右投げ左打ち。今季推定年俸は1億1600万円。
【デュプランティエ全登板】
▼4月3日・DeNA戦(京セラドーム)−6回3安打8三振1失点
▼4月19日・広島戦(甲子園)●5回4安打8三振3失点
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▼4月26日・巨人戦(甲子園)−5回4安打9三振2失点
▼5月3日・ヤクルト戦(甲子園)○6回4安打3三振無失点
▼5月15日・DeNA戦(横浜)−5回2安打7三振無失点
▼5月22日・巨人戦(甲子園)−6回6安打9三振1失点
▼5月29日・DeNA戦(甲子園)●7回5安打6三振4失点
▼6月5日・日本ハム戦(エスコンフィールド)○6回2/3 2安打12三振無失点
▼6月12日・西武戦(ベルーナドーム)●4回5安打5三振4失点
▼6月19日・ロッテ戦(甲子園)○9回4安打12三振無失点【完封】
▼6月28日・ヤクルト戦(神宮)○7回3安打7三振無失点
▼7月5日・DeNA戦(横浜)○9回3安打9三振無失点【完封】
▼7月12日・ヤクルト戦(甲子園)○7回5安打10三振2失点
通算13試合6勝3敗、82回2/3、105奪三振、1被本塁打、防御率1・42
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