野尻智紀、久々のノーポイントに「どう切り替えればいいのか……」予選での脱輪判定には提言も／第7戦

　7月20日に富士スピードウェイで行われた全日本スーパーフォーミュラ選手権の第7戦。予選Q2で走路外走行（4輪脱輪）によるタイム抹消があり12グリッドからのスタートとなった2021＆2022年王者の野尻智紀（TEAM MUGEN）は、終始中団グループでの戦いを強いられ、スタートポジションと同じ12位でチェッカーフラッグを受けた。

　完走扱いとなった決勝レースで野尻がノーポイントに終わったのは、2019年以来のこととなるはず。レース後のミックスゾーンでは、「久々の二桁順位ということで、どう受け止めて、どう切り替えていけばいいのか……と個人的には悩んでいます」と戸惑いを隠さなかった。

　この日朝の予選、Q2のアタックラップでの最終パナソニックオートモーティブコーナー立ち上がりでテールスライド状態となった野尻は、4輪がコース外に出たという判定によりこのベストタイムが抹消。判定に対する野尻の見解は後述するが、Q1からQ2に対しては「少しパフォーマンスが落ちた」とも感じていたという。

　スタートポジションが下がったことで、ある程度思い切った戦略も求められることになった野尻陣営は、『リヤタイヤを守る』方向のセットアップを施し、決勝へと向かう。場合によっては1周目で義務となるタイヤ交換を消化し、クリーンエアを得ながらのロングスティントも見越していたのだろう。

　しかし、一部車両のトランスポンダー（計測器）のバッテリーに関する不具合を解決するため、スタート進行がディレイ。この間にサーキット上空には雲が広がった。

　42分遅れで開始された決勝では、野尻のリヤを守るセットアップ自体は機能していたものの、路気温が下がったことで周囲のマシンもリヤタイヤをセーブできる状況となり、「なかなかそのセットアップが活きるようなコンディションではなかった」と相対的な優位性は消滅することとなった。

　実際、前を走るマシンがその戦略を採らなければ、オープニングラップでのピットインも考えたという野尻だが、福住仁嶺（Kids com Team KCMG）がピットに向かうのを視認したことでステイアウトを選択。これにより集団のなかでレースを進めることを余儀なくされ、「浮上のきっかけをつかむのは厳しかった」という。

「残念ながら今回のコンディションにはフィットしないセットアップだったけど、効果は感じました、ただ、あまりやってはいけないセットアップなのかな……というのも収穫のひとつとしてあったので、より精度が上がる経験はできたのではないかと思います」

　冒頭で触れた気持ちの部分は「長くやってきたので、切り替えは簡単だと思うのですが、『本当にそれでいいのか？』と自分で思うところもある」と野尻。セットアップについては、「このレースをしっかり見直して、何が良かったか・悪かったか、自分でも分析してみないといけない。それをやった先に、必ずまたいい走りができると思う」と、復活を誓った。


■「はっきりしないのは良くない」

　予選Q2での走路外走行の判定に関しては、「僕は（右フロントタイヤは）出ていないと思っていますよ、いまだに」と野尻は話す。競技団から示された判定の根拠となったコースカメラの画像は「まったくと言っていいほど鮮明ではなかった」という。

「はっきりしないのは、良くないですよね。選手としてこのスポーツに取り組むなかで、もやもやしてしまうので。そこは今後の課題だと思います」

　予選で12番手に沈んでいなければ「今日の決勝のようなセットアップはしていないので、また違ったレースになったと思います」と、予選の一件がレースの最終結果にも影響した可能性も野尻は示唆している。

　なお、公式アプリ『SFgo』を通して公開されているオンボード映像などが判定のエビデンスになっていない現状について野尻は、「せっかくいい参考になる映像であることは明らかなわけですから、今回の件が白か黒かは置いておいて、なぜ早急に導入しないのかな、というのは疑問ではあります」と述べた。

「せっかくああいうのものがあるのだから、早く（判定の材料として）導入してもらってもいいんじゃないかなと思っています。それだけでは分からないことも多くあると思いますが、過去には接触などもありましたから、そういう動きにどんどんなっていけばいいなと思っています」

[オートスポーツweb 2025年07月21日]