
与党で過半数を割り込むなど自民党の大敗となった参議院選挙。党内からは石破総理の退陣を求める声が高まっています。石破総理はこのまま持ちこたえ、続投できるのでしょうか。
参院選で自公大敗 総理は続投表明も“石破おろし”加速か石破総理
「極めて厳しい国民の皆様方のご審判をいただきました。こっから先は、まさしく茨の道であると、このように考えております」
参議院選挙から一夜明け、改めて続投を表明した石破総理ですが、その道筋は見えていません。自民・公明の与党は合わせて47議席、「勝敗ライン」とした過半数に届かず、衆・参両院で少数与党に転落しました。
石破総理
「なにを言ってんだか…」
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石破総理は20日夜、報道対応後にいらだちを見せる場面もありました。
公明党は、神奈川や愛知など長年議席を守り続けた選挙区で落選が相次ぎ、改選14議席から8議席に減らしました。
参院選では過去にも自民党が歴史的大敗を喫しています。
1989年、自民党は結党以来、初めて過半数割れとなり、当時の宇野総理が辞任しました。また、2007年には第一次安倍政権で自民党が大敗。当時の民主党が参議院第1党となりました。
このとき石破氏は、当時の安倍総理に辞任を求めていました。
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石破茂 衆院議員(2007年)
「辞めろという権限は我々にはないんだよ。総理がお辞めになるとご自身でおっしゃるしかない。今までもそうだった。そのことに対する総理の得心のいくお答えが聞きたい」
しかし、安倍氏は続投を表明。
自民党 安倍晋三 総裁(2007年 当時)
「ここで逃げてはならない。大変厳しい状況になっていくが、こうした状況の中でも政治の空白は許されない」
はからずも今回、安倍氏と同じ立場に立たされることになった石破総理は21日の会見で…
石破総理
「今、最も大切なことは国政に停滞を招かないということであります。政治には一刻の停滞も許されないということでございます」
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過去、自らが批判していた安倍氏と同様に“続投”を表明しました。
2024年の衆院選、6月の都議選、そして今回の参院選と、大型選挙での「3連敗」に党内からは…
自民党 西田昌司 氏
「党の総裁としての責任をはっきりさせて頂かなければ。たくさんの我々の仲間が今回落選してますが、彼らにとってもその責任を果たすことをやって頂かないと泣くに泣けない」
自民党 佐藤正久 氏
「結果についてはトップが責任を取るのが組織の常道だ。総裁自ら判断していただきたいと思う」
また21日夜、河野氏は石破総理を支えてきた森山幹事長が責任を取るべきだとの考えを示しました。
自民党 河野太郎 前デジタル大臣
「総理が(米国との)関税交渉などでお残りになるというならば、(森山)幹事長が全ての責任は自分にあると言って全責任を負って辞表を出されるべきだ」
一方、意気消沈する与党を横目に勢いづくのが…
国民民主党 玉木雄一郎 代表
「まるでこの選挙がなかったかのような対応で、選挙を通じて示された民意に対して真摯に向き合っている姿勢を感じませんでした」
議席を伸ばし躍進した国民民主党と参政党。
「手取りを増やす夏」を訴えた国民民主党は改選4議席から4倍以上に増やし、17議席となりました。
そして、注目されていたのが参政党。「日本人ファースト」を掲げた参政党は、改選1議席から14議席へと大幅に増やし、単独で法案を提出することが可能になりました。
参政党 さや 氏
「日本のために、日本人の皆様のために、これから本当の戦いがスタートしていくと思います」
参政党 大津力 氏
「住民の暮らしを守るということでの日本人ファーストが刺さった」
参政党 宮出千慧 氏
「(国民の)政治に対する不満があった中で、そういったところにアプローチできたのかな」
7つの選挙区で議席を獲得。比例では、立憲民主党、国民民主党と並ぶ7議席を獲得しました。
一方、野党第1党の立憲民主党は、改選前と同じ22議席にとどまりました。
立憲民主党 野田佳彦 代表
「参政党が伸びた分、複数区で食われた部分もあったりしますので、ただ『日本人ファースト』というその一言が多くの人たちに届いた。その背景をよく分析しなきゃいけない」
今後の政権運営には野党の協力が不可欠となります。石破総理は、野党との連携について…
Q.連立の枠組みを拡大する考えは?
石破総理
「現時点において、連立の枠組みを拡大する考えを持っているわけではない」
選挙後の政権枠組みが不透明なまま、物価高やトランプ関税などの懸案にどう向き合っていくのでしょうか。
なぜ石破総理は続投を表明? 政権運営や“最大の争点”はどうなる?小川彩佳キャスター:
続投を表明した石破総理ですが、党内では石破おろしが既に出てきているんですね。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
今回の事態はそもそも非常に深刻なんです。与党が衆議院でも参議院でも少数なので、法案や予算案を出しても通らないということですから、国政が進まないというのが実態です。
ただ、自民党の中には「今の状況で総理を買って出る人はいないんじゃないか」という声もあり、おそらく石破総理も高をくくっているんだと思います。総裁選になれば手を挙げる人も出ると思いますが、今ここで自分が粘ればまだしのげると思っているんだと思います。
藤森祥平キャスター:
まさに粘ろうとしているようなんですが、実際、内心は石破総理としてはもうやめるタイミングをはからなければいけない状況にあるんじゃないんですか?
星浩さん:
選挙中は「もしかしたら辞任に至るかもしれない」と思っていたようですが、石破総理としては、一つは関税の日米交渉があるということと、もう一つは連立の補充をして、ある程度メドをつけてから自分がその身を引くということなら考えざるを得ないとは思っているようです。
藤森キャスター:
ただ、このまま続けていこうとすると、石破総理はこれまで以上に国会運営も含めて、野党に対してとにかく手を差し伸べていかないといけないと、これまで以上に協力が必要になりますよね。
星浩さん:
数を補充するには野党と組まないといけないわけですが、今の野党はなかなかネガティブな対応です。
【野党との連立は?】
立憲「必要性はない」
国民「石破政権とはあり得ない」
参政「自民党の党内改革を」
維新「現時点で考えていない」
維新に関しては「現時点で考えていない」ということで、石破総理も淡い期待は持っていますが、実際にはそう簡単にはいかないと思います。
今回の選挙で示された民意とかけ離れた政権なので、長く存続するというのは無理があると思います。
小川キャスター:
「国難に近い状況だから政治の空白を生めない」ということで石破総理は続投を宣言したわけですが、選挙後の枠組みもかなり不透明で、「国難だからこそ今の政権に任せられない」という声がこの選挙の結果なんだという見方もできるわけですよね。
米重さんは有権者の声をどう受け止めますか?
JX通信社 代表取締役 米重克洋さん:
石破総理が続投するということに関しては、やはり内閣支持率などには必ず、かなりネガティブに響くと思います。
私自身、年中世論調査の分析などをやっていますが、やはり選挙のアナウンスメント効果というのは非常に大きくて、「負けた」とか、あるいは衆院選に続いて都議選も含め「3連敗である」ということに関しては、自民党支持層の中での石破内閣の支持率というのは多分かなり下がると思うんです。
今回の選挙の一番大きな敗因というのは、2024年の衆院選も同じなんですが、「物価高に端を発する若い世代の離反」と私は分析しています。
特に20代〜50代の若い世代を中心に自民党からかなり離れていって、しかもその受け皿が国民民主党や参政党になったことで、かつての安倍政権の時と比べると相当ダメージを受けているという現状があるんです。
なので、その支持構造を根本的に再建するというようなことをしないと、自民党は支持率を回復できず、このままの状態では相当難しいだろうなと思います。
藤森キャスター:
そういう点では、総理の続投というのは?
米重克洋さん:
支持層には受け入れがたいでしょうね。
藤森キャスター:
選挙は終わりましたが、何よりも「とにかく政策の実現を急いでほしい」というのが1票を投じた有権者の思いだと思います。「給付」や「減税」など散々議論しましたよね。
星浩さん:
非常に皮肉なことが起きて少数与党になったもんですから、給付を盛り込んだ補正予算案を仮に出しても、野党が反対して実現しないと。一方で、野党でも減税の考え方が違うので、減税もそう簡単に進みそうにないですね。
今回の選挙は、物価高に対する対応を有権者が選択して、「何らか手を打ってくれ」という悲鳴に近い投票があったわけですが、現実はこういう構造で政策が進まないということになってしまうので、これはやはり政治の最高責任者である石破総理が身を引くなどの打開策をいずれ検討せざるを得ないと思います。私の見立てではもって秋までだと思いますね。
藤森キャスター:
とにかく政策も前に進めてもらわないとですね。
小川キャスター:
何も手が打たれないというのが国民にとって最も不幸な状況ですからね。
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〈プロフィール〉
米重克洋さん
JX通信社 代表取締役
世論調査や選挙分析などを手がける
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
政治記者歴30年 福島県出身