首相官邸に入る石破茂首相=22日午前、東京・永田町 参院選で大敗したにもかかわらず、続投を宣言した石破茂首相(自民党総裁)に対し、党内の反発が強まっている。首相に批判的な国会議員らの会合が活発化し、地方組織からも退陣要求が続出。首相サイドは「石破降ろし」の拡大阻止に苦慮している。
「国民からすれば、議席が一番多い政党は自民だと、胸を張る姿を見たいのではない」。小泉進次郎農林水産相は22日の記者会見で、続投理由として「比較第一党」を連呼する首相に、こう苦言を呈したことを明らかにした。
小泉氏は、政権運営で首相に再三助言するなど、関係は良好とされる。それでも続投に注文を付けざるを得ないほど、党内の空気は厳しさを増している。21日の高知県連に続き、22日は栃木、茨城両県連などで退陣要求が表面化。同様の動きはさらに広がる見通しだ。
「地方の反乱」の背後には、党内有力者の意向も見え隠れする。栃木県連会長は首相と距離を置く茂木敏充前幹事長。その茂木氏は21日夜、党内唯一の派閥となった麻生派を率いる麻生太郎最高顧問と会談し、続投に賛同しない立場を擦り合わせた模様だ。
22日には旧茂木派中堅ら11人が会合を開き、党の重要事項を決定する両院議員総会の開催に向け、署名集めを行うことを決定。中心メンバーの笹川博義衆院議員は記者団に「総大将がけじめをつけると示すことが大事だ」と強調した。
旧安倍派などの保守系議員も、両院議員総会の開催や、総裁選を前倒しする党則の「リコール規定」適用を求める構えだ。既に署名の文案づくりを始めている。
一方、首相に近い村上誠一郎総務相、岩屋毅外相、中谷元防衛相らは参院選の投開票前日の19日夜に集まり、結果が「与党過半数割れ」でも首相を支える方針で一致。岩屋氏は22日の会見で「進むも地獄、退くも地獄だが、国家、国民のため進まなければいけない」と述べ、「石破降ろし」への対抗意識をあらわにした。
退陣論の拡大を警戒する執行部内では、31日に開催予定の両院議員懇談会の前倒し案が浮上。沈静化を図るため、首相と党総裁を分ける「総総分離」を唱える向きもある。
「求められているのは潔さだ」。選挙後、首相にこんなメールを送った党ベテランは「反応がない。見ているのが忍びない」と心中をおもんぱかった。