日米貿易交渉が電撃合意 株価は急上昇、石破総理 続投意向も包囲網 自民党幹部「アメリカとの関税交渉合意が“花道”だ」【Nスタ解説】

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2025年07月23日 22:00  TBS NEWS DIG

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TBS NEWS DIG

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風雲急を告げています。今朝、飛び込んできたニュースは日米貿易交渉の電撃合意です。そして、石破総理の進退を巡る動きも慌ただしくなっています。午後2時、異例ともいえる会談。歴代総理3人と向き合いました。

【写真を見る】直接交渉を終え、笑顔で親指を立てる赤沢大臣

コメは実質的に輸入拡大 日本の農家は“国産米離れ”の進行に懸念

けさ、トランプ大統領を電撃訪問し、およそ1時間にわたる直接交渉を終えた赤沢大臣。JNNのカメラがとらえたのは、笑顔で親指を立てる姿でした。

その直後、ホワイトハウスでは…

アメリカ トランプ大統領
「ちょうど歴史上最大の貿易取引に合意したところだ。取引は日本と行った。全員にとって素晴らしい取引だ」

トランプ大統領は「日本が5500億ドル(およそ80兆円)を投資する」と発表し、「数十万人の雇用が創出される」と成果を強調しました。

一方、日本が巨額の投資などと引き換えに得たのが…

石破総理
「対米貿易黒字を抱える国の中で、最大の引き下げ幅が得られたことは大きな成果だと思っております」

アメリカは来月1日から発動するとしていた日本への相互関税を25%から15%に引き下げ。また、自動車に対してすでに課している25%は、既存の税率2.5%を含め15%にします。

株式市場は、この合意を歓迎。

記者
「きょうの東京株式市場は全面高の展開。値動きを表すボードは一面、値上がりの赤色に染まっています」

日経平均株価は、自動車関連株などが大幅に値上がりし、結局、きのうより1396円高い4万1171円で取引終了。終値として4万1000円台を回復するのは約1年ぶりです。

ただ、今回の合意、手放しで喜ぶことはできません。

日本が“譲歩”した実質的なコメの輸入拡大をめぐっては不安も残っています。

合意では、毎年関税をかけずに輸入するおよそ77万トンのミニマムアクセスの枠内で、アメリカから輸入する割合を増やすとしています。

アメリカの農家
「カリフォルニア州のコメが日本の店頭に並び認知されれば大きなメリットだと思う」

アメリカの農家はさらなる販売チャンスに期待を寄せますが、一方の日本のコメ農家は気をもみます。

小池農園 小池貴史さん
「あまりにも(米国産米の)価格が国産に比べて安いと生産者としてはちょっと複雑。お客様によって米国産のお米が価格と品質などでもいいという方もいる」

安いアメリカ米によって、“国産米離れ”が進まないか心配だと漏らします。

さらに、経済界からは関税が引き下がっても、状況は厳しいとの指摘が…

経団連 筒井義信 会長
「国内経済の影響ということを考えると、決して(関税率は)低くはないと思う。GDP成長率に及ぼす影響は、それなりに大きいものがあることは事実」

専門家は、今回の合意で日本のGDPが0.55%押し下げられると試算しています。

日本経済の屋台骨である自動車業界への逆風は間違いなく吹き続けているのです。

今年4月以降、8回も訪米した交渉担当の赤沢大臣。合意直後、自身のSNSに「上司を発見」と石破総理とトランプ大統領の写真を指さす姿とともに「任務完了」と投稿しました。

ただ、関税による日本経済へのダメージは今後、本格化する見通しで、中小企業への支援などの対策が“急務”となります。

石破総理 続投意向示すも…「ポスト石破」の動き活発化

きょう午後、自民党本部に集まった岸田、麻生、菅氏ら総理経験者たち。参議院選挙の敗北を受け、石破総理が急きょ、会談を要請したもので、歴代総理が一堂に会するのは極めて異例です。

1時間20分におよぶ会談のあと、石破総理は「危機感を共有した」と述べ、会談の意義を強調しました。

石破総理
「強い危機感をみんなで共有したこと、党の分裂が決してあってはならないということ等々、いろんなお話がございました」

また、自らの進退について、会談では「一切話に出なかった」とした上で、関税交渉の合意を受け、「国民生活がきちんと守られるよう全力を尽くしたい」と続投する意向を重ねて示しました。

一方、同席した森山幹事長は、総理経験者の1人から参院選の総括を「できるだけ早くおこなうべき」と注文がついたことをあきらかにし、「両院議員懇談会」を当初予定していた今月31日から前倒しして、28日に開催すると述べました。

しかし、石破総理への“包囲網”は狭まっています。

自民党 中曽根康隆 青年局長
「大変声が大きかったのが、総裁および執行部の刷新、そして、即時退陣というものでありました」

党の青年局はきょう、緊急のオンライン会議を開催し、執行部に早期退陣を迫りました。

また、党内では、執行部が決めた「懇談会」ではなく、総理退陣の議案も決定できる「両院議員総会」を開催するよう求める署名がおこなわれています。

自民党 鈴木貴子 衆院議員
「いま1人でも多く、賛同してくれる仲間を募っているところです」

署名活動を行っている鈴木衆議院議員は、石破総理ら執行部に対し、敗北の“けじめ”をつけるよう訴えました。

自民党 鈴木貴子 衆院議員
「自民党再生、再興、立て直しを図っていく上では、けじめがあっての、禊があっての再スタートというのは、これはセットだと思う。(Q.それ、やはり総裁が責任を取るべき?)はい」

さらに「ポスト石破」の動きも活発化しています。

去年の総裁選で石破総理と最後まで争った、高市前経済安全保障担当大臣を支援するグループがきょう、都内で会合を開きました。

出席者によりますと、10人ほどが集まり、今後の政治日程などにかかわらず、早期の退陣を求める意見が出たということです。

さらに党内からは下野、つまり野党になって、党の立て直しを図るべきとの主張まで飛び出しています。

自民党ベテラン議員
「いま政権を担っても、手柄はすべて野党に持っていかれる。自民党は評価されない」

きのう、執行部の1人、木原選挙対策委員長も「野党になることも選択肢の一つ」と明言したほか、自民党幹部も党の参院選の敗北検証のあと、総理退陣の可能性を示唆するなど、執行部も一枚岩とは言えない状況となっています。

関税交渉の合意が退陣の「花道」になるか。政権維持をめぐる駆け引きは、いまヤマ場を迎えています。

自民党幹部「アメリカとの関税交渉合意が“花道”だ」

井上貴博キャスター:
石破総理の“退陣圧力”が強まっています。そんな中、石破総理は改めて続投を表明しましたが、ご自身として進退をどう判断するのでしょうか。

TBS報道局 岩田夏弥 政治部長:
23日、一部報道で「石破総理は7月中にも退陣を表明する」といった話がありましたが、その直後に石破総理自身がカメラの前で「そういったことは一言も言ってない」と否定しました。

ただ状況は厳しく、自民党青年局や国会議員が顔出しで「石破総理は辞めるべきだ」と声を上げています。

井上キャスター:
(総理を)続ける理由がなくなってきた気がします。

TBS報道局 岩田夏弥 政治部長:
状況的にも厳しいですね。またある自民党幹部は「アメリカとの関税交渉の合意が“花道”だ」と話しています。

つまり、みんなから「やめろ、やめろ」と言って引きずり下ろされるのではなく、関税合意ができたということを成果に「総理よくやってくださいました」と、みんなから惜しまれ、花道を通って退任していく道ができたということです。

ただ、この花道を歩くかどうかを決めるのは石破総理ですので、どうなるかというところですね。

井上キャスター:
(花道を)歩かないことも考えられますか?

TBS報道局 岩田夏弥 政治部長:
状況的に難しくなっています。今後のスケジュールを見ると、自民党両院議員懇談会が7月28日で意見を聞く。

さらに8月は『広島 原爆の日』『長崎 原爆の日』『終戦の日』といった国の重要な予定が控えています。その後もアフリカ開発会議や、参院選結果の検証など、大事な日程が結構詰まっています。

その中で石破総理が「辞める」という判断をどうつけるのか。長引けば長引くほど辞めさせる動きも出てくると思うので、注目していきたいところですね。

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<プロフィール>
岩田夏弥
TBS報道局 政治部長 元官邸キャップ
小渕総理以来、主に政治取材を担当

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