記者団の取材に応じる赤沢亮正経済再生相=22日、ワシントン 3カ月に及んだ日米関税交渉が急転直下、合意に達した。米国が25%の相互関税を課すと通告した8月1日が迫る中、税率15%で着地。経済へのダメージを最大限緩和する現実的な妥協策に踏み切った。一貫して目指してきた撤廃は勝ち取れなかったが、政府は「対米貿易黒字国の合意内容の中では最低税率」と胸を張る。
「羽田空港を離陸した時点では、トランプ米大統領との面会は決まっていなかった」。8回目の訪米でトランプ氏の決断を引き出した赤沢亮正経済再生担当相は、ワシントンでの記者会見で明らかにした。
交渉のカギになったのは、ラトニック商務長官との綿密なやりとりとみられる。米側は当初、ベセント財務長官、グリア通商代表部(USTR)代表を含めた3人で交渉を進めたが、終盤はラトニック氏に集約されていったという。ある経済官庁幹部は「ラトニック氏を『一本釣り』した赤沢さんのけい眼には感服する」と語る。
日本側は今回、政府系金融機関を活用した5500億ドル(約80兆円)の投融資で米経済への貢献をアピール。自動車への追加関税は25%から半減し、コメもミニマムアクセス(最低輸入量)枠内の調整で決着した。政府関係者は「この世界で『ウィンウィン』はめったにない。それが実現し歴史的だ」と指摘する。
ただ、民間試算によると、15%の相互関税により国内総生産(GDP)は0.1〜0.5%程度下押しされる。中小企業などを中心に懸念は残ったままだ。
また、米国に対する経済依存のリスクも浮き彫りになった。自由貿易に背を向け、奔放な言動を繰り返すトランプ氏に振り回され続けた日本にとって、欧州連合(EU)や東南アジア諸国連合(ASEAN)など、経済連携をより多様化、強化することがますます重要になりそうだ。

日米貿易交渉の様子=スカビーノ大統領補佐官のX(旧ツイッター)より