1960年(昭35)9月20日に東京・銀座に開館した映画館「丸の内TOEI」が本社ビル・東映会館の再開発と本社移転を受けて27日に閉館。65年の歴史に幕を下ろす。特集企画「丸の内TOEI閉館 過去、現在…東映の未来」最終回は、社史にも書かれていない14年4月26日に発生した1つの事件を、映画担当が振り返る。【村上幸将】
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有楽町で1件、舞台あいさつの取材を終えた足で「相棒−劇場版3−巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ」(和泉聖治監督)初日舞台あいさつが行われる丸の内TOEIに向かうと、劇場前で“大捕物”が繰り広げられていた。急いで横断歩道を渡って走り寄ると、警備員3人に取り押さえられた男が警察官に引き渡され、パトカーに乗せられるところだった。慌てて男の背中を撮影した。
事件は、取材を入れずに行われた1回目の舞台あいさつで主演の水谷豊(73)が「ようこそ相棒ワールドへ。警視庁特命係、杉下右京です」と口にした午前11時35分ころ、7階宣伝部で発生。舞台あいさつ中で社員が少ない中、試写室付近を歩く不審な小太りの男に気付いた社員が「泥棒!」と叫び警察に通報した。
警備員が身分証の提示を求めると、男は2年前まで使用されていた関係者パスを提示。「通用しない」と言われると「1階に身分証がある」と劇場脇のマスコミ待機場所に向かったが「ないじゃないか」と追及され、暴れたため同11時48分に警視庁築地署員に建造物侵入と窃盗容疑で現行犯逮捕された。当時50歳の男が持っていた袋には、同年8月23日公開の市川海老蔵(現團十郎=47)の主演映画「喰女−クイメ−」(三池崇史監督)のマスコミ用資料100部が入っており「盗んだのは間違いない」と容疑を認めた。
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当時、複数の映画会社が非売品グッズ目当てとみられる不法侵入者の被害に遭っていた。日本映画製作者連盟(映連)が各社に回した、防犯カメラ画像にも男とみられる人物が写っていた。第1発見者の女性社員は「うちにも何回も入っている。1年以上前から見ていて(画像に)見覚えがあった」と語った。男が提示したパスも当時、使用されていないもので盗難された可能性が高いとみられた。
水谷ら登壇した17人は事件発生を知らされず、2度の舞台あいさつを無事にこなした。取材を終え、引き揚げようとした途端、他の映画会社の宣伝部長や役員から相次いで電話がかかってきた。東映は「仮面ライダー」や「戦隊シリーズ」のショーもやっており「東映さん、仕込んだんだろ?」「話題、全部持って行かれたよ」などと言う声に「違うんです。『相棒』顔負けの本当の事件が起きたんです」と説明しているうちに2時間が過ぎた。
“映画グッズ連続盗難事件”の犯人が、現代を代表する刑事ドラマ「相棒」の舞台あいさつ中に捕まった、ドラマを地でいくような展開に、芸能メディア各社は大きく報じた。翌4月27日付の日刊スポーツ本紙では「相棒に泥棒」とのメイン見出しをつけ、社会面のトップで報じた。
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