首相官邸に入る石破茂首相=24日午前、東京・永田町 自民党内で活発化する「石破降ろし」を旧安倍派と旧茂木派が主導している。石破茂首相(自民総裁)との過去の因縁が尾を引いているためだが、旧安倍派が震源となった派閥裏金事件への批判は根強く、党内の混乱が続けば世論のしっぺ返しを受けかねない。
「民主主義なのだから、いろんな意見があってもいい」。首相は24日、参院選で当選した鈴木宗男氏と首相官邸で面会し、「石破降ろし」について感情を抑えながらこう評した。
続投姿勢を崩さない首相に、党内の不満は広がる。奈良県連は24日、執行部刷新を求める意見書を提出したと発表。事実上の退陣要求だ。国会議員間でも首相を引きずり降ろそうと両院議員総会開催を求める署名集めが進む。
旧安倍派は23日夜、かつて「5人衆」と呼ばれた同派有力者の萩生田光一元政調会長、西村康稔元経済産業相、松野博一前官房長官、世耕弘成前参院幹事長(離党)が東京都内で会談。「石破降ろし」へ策を練ったもようだ。
同日昼には、高市早苗前経済安全保障担当相に近い山田宏参院議員ら10人超が衆院議員宿舎に集まり、退陣要求の署名集めなどを協議。萩生田氏も顔を出した。
昨年の衆院選で、裏金事件に関わった旧安倍派幹部らは公認されず、一部は不出馬を決めた。2007年参院選で大敗した当時の安倍晋三首相の続投方針に、石破首相が批判を浴びせたことを元幹部らは生々しく覚えており、「どうかしている。辞めさせなければ」。石破政権を打倒して主導権を取り戻したい同派の思惑がにじむ。
国会議員間で進む署名集めの中心役を担うのは旧茂木派だ。他の旧派閥などに連絡役を置いて賛同者を募っている。旧茂木派会長だった茂木敏充前幹事長は昨年の総裁選で首相に敗れた後は非主流派に甘んじている。茂木氏は21日夜、麻生太郎最高顧問と会談。官邸幹部は「当然『ポスト石破』をにらんだ動き」とみる。
もっとも、参院選惨敗について裏金事件のけじめが付いていないためと指摘する向きは多い。「元をたどればわれわれの責任。5人衆が動くなど許されない」。旧安倍派の閣僚経験者は恥ずかしそうに語る。
衆参で少数与党に転落したのに党内政局にかまけていれば、支持回復は容易でない。ベテランの船田元氏はウェブサイトで「党内政局化を容認する余裕は全くない」と批判した。
「『首相はけしからん』と言っている人が本当に党や将来の日本を考えているのか。権力争いのようなもので、首をかしげたくなる」。首相と面会後、鈴木氏はこう語った。