インタビューに答える野尻智紀(ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8) 2025年、オートスポーツwebは前身のクラッシュネット・ジャパンから名称を変更してから20周年を迎えました。これもひとえに、読者の皆さまのご愛顧のおかげです。そこで、皆さまへの感謝の意味も込め、20周年特別記念連載をスタートさせます。題して『オートスポーツweb20周年企画 20の質問で丸わかり』です。かつて、AS+Fやオートスポーツ本誌で連載されていた『100の質問』を20周年記念版でリメイク。スーパーGT GT500ドライバーのプライベートを解き明かしていきます。
第12回は、ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT #8に乗る野尻智紀選手が登場です。
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Q1:趣味は何でしょうか?野尻:疲れを癒すための温泉旅行です。──温泉いいですね! 直近ではどちらに?野尻:最近は大分の由布院温泉に行きました。九州のオートポリスに行く時は、いつも忙しくてサーキットに行くだけになってしまい、周りの温泉が前々から気になっていたので、初めて行ってきました。家族みんなで大自然を感じられてよかったですね。──次に気になっているところは?野尻:次もまた九州で、黒川温泉というところです。ここもまだ行ったことないのですが、高級な温泉街があるみたいで気になっています。
Q2:最近気になっている芸能人や有名人は?野尻:気になる芸能人はとくにいないですね。昔からあまりテレビは見ないので、強いて挙げられる人もいないかな。
Q3:好きな本や映画、音楽は何ですか?野尻:プレイリストは平成に人気だったアーティストが多いかなと思います。自分が中高生ぐらいのころによく聞いたアーティストが多くて、チームメイトのノブ(松下信治)とも年が近いので、GTの時はサーキットに行く車内で聞いたりしています。
Q4:行ってみたい場所はどこですか?野尻:具体的な場所は思い当たりませんが、景色が綺麗なところに行きたいですね。最近は綺麗な海を見たいなと思っています。静かな沖縄の離島のような、リゾートビーチみたいな場所でぼーっとしたいです。
Q5:もし何か新しいスキルをひとつ身につけられるとしたら、何を学びたいですか?野尻:社交性を身につけたいです。人とうまく会話をしたいですね。──インタビューしているとそのような印象はありませんが野尻:いやぁ、会話を盛り上げるのは苦手なんですよ(笑)。元々引っ込み思案で、家から外に出ること自体も幼いころから苦手意識を持って育ってきたので。外との関わりが苦じゃないように生きられたら楽だなと思います。ただ、改善の気配もないので、もうごまかしながら生きていくしかないかなと思っています(苦笑)。
Q6:休日もしくは暇な時間はどのように過ごすことが多いですか?野尻:レーシングドライバーの休日は、世間的には平日なんですよね。なので僕の場合は、子供が学校に行ってからコーヒーを飲んでゆっくりしながら、音楽を流したりYouTubeを観たりしていますね。──動画をどのようなものを? やはりレース関連?野尻:もちろんいろいろレースの動画を観ますが、休みの時はレース関係はほぼ観ないですね。というのも、大体が見尽くしてしまっているので。ただ、ファンの人が撮ってくれた映像とかは観たりしますよ。──趣味関連では?野尻:ガジェット系の動画が好きです。充電器とかイヤホンとか、そういう電化製品の紹介を見て散財しちゃうんですよね。良さそうなものがあるとすぐ欲しくなっちゃうし、必要なさそうでも買い替えたくなっちゃうこともあります(笑)。そういえば、毎年GTのSUGO大会のレースウィークあたりで新しいiPhoneが発表されますよね。なのであの週末は、新型iPhoneへの散財をレースの結果で取り返そうとして頑張っていたりもします(笑)。
Q7:人生で一番大切にしていることは何ですか?野尻:社交性の話につながりますが、『めんどくさい』とか『嫌だな』とか、あらゆることに億劫なイメージを持ちがちなので、マイナスな言葉を自分にも周りにも言わないようにしています。──前向きな心構えですね野尻:ある程度年齢も重ねてきて、チームのなかでも年長者になりつつあるので、自分の意見を言いやすい部分もあります。そのなかで『嫌だ』と言ってしまうと、周囲に悪影響ですからね。と言っても、『お前、めちゃくちゃ“嫌だ”と言ってるじゃないか』という指摘がどこかから聞こえてきそうですが(笑)、そういったことを思ったとしても自分の感情を抑えて、なるべく言わないように気をつけています。
Q8:どんな時に幸せを感じますか?野尻:仕事としては、レースを長年やらせてもらってきたなかで、自分が経験してきたことが役に立ったなと思う瞬間が幸せですね。結果を出すことができた時はもちろん幸せですが、結果を出せていない時でもチームのメンバーに助言をしたあとに調子が上がった時とか、『これまでの経験が活きた』と実感したときに幸せを感じます。──仕事以外では?野尻:家に帰って、家族といっしょにゆっくりしている時ですね。子どもは元気で騒がしい時もありますが、静かに寝ている姿を見るとやはり幸せな気持ちになります。
Q9:尊敬する人は誰ですか?野尻:いちばん尊敬しているのは鈴木亜久里さんです。F1にも乗られていましたし、若くして自分でチームも作っていますし、決して今の自分にはできないことだなと思います。
Q10:これまでの人生で、一番の挑戦は何でしたか?野尻:これまでに一度もレースをやめなかったことです。実は一時期、結果が出なくて自暴自棄みたいになったころがあったのですが、それでも最後の一線を越えずに踏みとどまって。そこを乗り越えてからは結果が少しずつ出始めて、ちょっとずつキャリアが進み出したので、その時期が一番の挑戦だったかなと思います。
Q11:困難な状況に直面した時、どのように対処しますか?野尻:困難を直視する強さがあればいいなと思いますが、逃げることも大切にしています。自分の殻を破りたいという前向きな気持ちを持ちながらも、弱気になった時は自分の心にある程度従いながらちょっとだけ逃げて。メンタルが復活してきたときには困難に向き合って頑張る、というメンタルバランスを大切にしながら対処する感じです。
Q12:自分の長所と短所は何だと思いますか?野尻:長所は、レースを長く続けられているところかな。もちろん、たくさんの方々の協力もありますが、苦しい時に辞めるという決断をしなかったところは、粘り強く頑張れた長所じゃないかなと思います。ただ逆に言うと、短所として優柔不断なところもあるので、そこは表裏一体なのかな。
Q13:子供の頃はどんな子どもでしたか?野尻:とにかく内気で、人と会話するのが苦手でした。あまり友達もおらず、なかなか人の輪に入れた記憶がないですね。入りたいという気持ちは当然ながらありましたが、どうしたら入れるのかとかを考えて、結局は身を引いてしまうところがありましたね。その気持ちは今でもあるのですが(笑)。──そのころは、どんな時間の過ごし方をしていた?野尻:とにかく時間が過ぎるのを待っていた感じでした。基本は静かにしていて、よく周りを見ていたかな。カートコースとかでも、周りの人たちはコミュニケーションを取って遊んだりとかしていたのですが、その輪には入れず。おそらく自分に自信がなかったのだと思います。かなり内気な子どもでした。
Q14:他の人から、どんな人だと言われることが多いですか?野尻:普段から言われているわけではないのでわかりませんが、無口とかつまんないとか、思われていそうだなぁと思います(苦笑)。土屋(圭市)さんとか亜久里さんとかには、弱気だとか言われたりしたことがあったような気もします。
Q15:動物に例えられるとしたら、どんな動物だと思いますか?野尻:アクティブな感じではないと思うので、フクロウとかがちょうどいいかもしれないですね。静かでひっそりとした感じで。
Q16:20回以上通っているお店かレストランを教えてください野尻:特定の店舗ではありませんが、遠出をした時にはよくCoCo壱番屋に行きます。トータルなら20回以上行っていると思いますし、CoCo壱番屋のカレーは大好きです。
Q17:20年以上、使っているものはありますか野尻:20年以上は、さすがにないですね。──では、これから20年間使っていきたいを思うものは?野尻:それは、最新のシビック・タイプR。あれはもう、ほんとうに最高のクルマですよ。
Q18:20年前は何をしていましたか野尻:当時は学生なので学校に行っていましたが、すでに週末はレースをしていたので、そういった意味では今と大きくは変わらないかなと思います。一応、部活動もしていましたが、まったく熱中できなかったんですよね。──ちなみに何部に?野尻:ソフトテニス部でした。人気漫画の『テニスの王子様』に憧れて、テニスプレイヤーはかっこいいなぁと思って部活動に入りましたが、レースのアドレナリンには勝てなかったですね。とにかくレーシングカートが楽しくて、勝ちたくて一生懸命やってました。
Q19:20年前の自分に言いたいことは野尻:『辛いことの方が多いけれど、頑張りなさい』と言いたいです。結果が出なくても頑張れ、という感じで。
Q20:20年後にしていたいこと野尻:レースに関わる仕事をしたいです。まだGTはチャンピオンを獲れていないので、それは頑張って獲って、そのあとはSFも含めて本当にやり尽くしたと思ったときに現役をしっかり辞めて、次のステップに行けたら理想かなぁ。そのあとは、自分が今まで多くのことを勉強させてもらったレース業界への恩返しとして、何か新たな関わり方ができたら嬉しいなと思います。
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温泉旅行やガジェット趣味など、プライベートな一面が垣間見えたインタビューとなりました。次回の『20の質問で丸わかり』もお楽しみに!
●プロフィール 野尻智紀(のじり・ともき)
幼少期からレーシングカートスクールに通い、2003年に全日本カート選手権に参戦。06年にFAクラスのチャンピオンに輝き、翌07年は渡欧して各選手権に参戦した。08年は鈴鹿サーキットレーシングスクール・フォーミュラ(SRS-F)を首席で卒業してスカラシップを獲得し、09年以降はフォーミュラ参戦を開始した。14年からはDOCOMO TEAM DANDELION RACINGから全日本選手権スーパーフォーミュラにステップアップし、SUPER GTのGT300クラスにも初参戦。15年からはGT500クラスにステップアップした。21年にはスーパーフォーミュラにTEAM MUGENから参戦し初のタイトルを獲得、22年は連覇を達成した。現在もスーパーフォーミュラとスーパーGT500クラスに参戦している。
[オートスポーツweb 2025年07月25日]