中田秀夫がホラーを撮り続ける理由、松原タニシが事故物件に住み続ける理由。夏の恐怖対談

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2025年07月25日 12:10  CINRA.NET

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Text by 麦倉正樹
Text by 西田香織
Text by 今川彩香

「事故物件住みます芸人」として人気の松原タニシの実体験をもとにした映画『事故物件 恐い間取り』が、約5年の歳月を経て、ついに帰って来た——。 

Snow Manの渡辺翔太を主演に迎えたことをはじめ、共演者の畑芽育ら、キャストと世界観を一新して送り出す、待望のシリーズ最新作『事故物件ゾク 恐い間取り』が7月25日から全国で公開されている。興行収入23億円を超えた、ジャパニーズ・ホラーのスマッシュヒットとなった前作と同じく、原作を松原タニシ、監督を中田秀夫という布陣で臨んだ本作は、果たしていかなる「恐怖」を演出するのだろうか? 

今回は、今日の日本におけるホラーブームを牽引する、松原タニシと中田秀夫の対談が実現。『女優霊』『リング』など、Jホラーの立役者のひとりである中田監督と、昨今のホラーブームを牽引する重要人物である松原タニシは、この待望の続編映画について、どんな思いを抱いているのか? そして「新しいホラーブーム」について、どう見ているのだろうか。その答えは、意外にも劇中の「みんなが行くほうに行くな」という、あるタレントの発言にあった?——本作の制作から、松原が事故物件に住み続ける理由、中田がホラー映画を撮り続ける理由に至るまで、縦横無尽に語ってもらった。

―本作は、前作『事故物件 恐い間取り』から約5年ぶりとなるシリーズ最新作になるわけですが、まずは前作の大ヒットについて、どのように感じているのでしょう?

松原タニシ(以下、松原):前作の公開時に、中田監督と何度か対談させていただいたり、僕のラジオに出てもらったりしたんですけど、そのときに監督が「恐(こわ)ポップ」ってことをおっしゃっていて。それが、めっちゃいいなって思ったんですよね。恐いだけじゃなくてポップな部分があるというか、恐いんだけどクスッと笑っちゃうところがある。それが映画全体のトーンというか、映画を見終わったあと、いろいろな感情が湧くことにつながっているような気がして。それが個人的には、すごく心地良かったです。

松原タニシ(まつばら たにし)

1982年生まれ、兵庫県出身。松竹芸能所属のピン芸人。現在は「事故物件住みます芸人」として活動。2012年よりテレビ番組『北野誠のおまえら行くな。』(エンタメ~テレ)の企画により大阪で事故物件に住みはじめ、これまで関西、関東、沖縄、四国、九州、北海道など全国24軒の事故物件に住む。日本各地の心霊スポットを巡り、インターネット配信も不定期に実施。著書に『事故物件怪談 恐い間取り』シリーズ、『異界探訪記 恐い旅』『死る旅』『恐い食べ物』『恐い怪談』(二見書房刊)がある。

中田秀夫(以下、中田):僕も前作の公開時には、何度か映画館に足を運んで……。

松原:監督、めっちゃ映画館に行かれてましたよね(笑)。

中田:うん。映画評であるとか、いろんなものが出ますけど、やっぱり映画館で観ているお客さんの反応が、いちばん信用できるんですよね。とはいえ、映画館でみんながみんな感想を言い合ったりはしないので、感想を言いそうなグループの近くで聴き耳を立てていたんですけど、「ひょっとすると、私の部屋も事故物件かもしれない」みたいなことを言い出したんです。そしたら別の子が、「多分そうだよ。映画のなかでも、誰かひとりでもあいだに入れば、告知の義務はないって言ってたじゃん」「ひえー」みたいなやり取りをしていて……。

中田秀夫(なかた ひでお)

1961年生まれ、岡山県出身。東京大学卒業後、にっかつ撮影所に入社。テレビドラマで監督を務めたのち、1996年『女優霊』で映画監督でデビュー。その後、『リング』(1998年)が大ヒット、ジャパニーズホラーブームを牽引。近作に、『“それ”がいる森』(2022年)、『禁じられた遊び』(2023年)、『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』(2024年)などがある。前作、『事故物件 恐い間取り』(2020年)に引き続き本作でもメガホンをとる。

松原:(笑)。

中田:そのときにやっぱり、ちょっとほくそ笑みましたよね。しめたというか、自分に引き付けて見てもらえたら、映画は当たるわけで。だから、数字的なことはもちろん大事なんですけど、そういうナマの感想が聞けたのは、監督として非常にうれしいことでした。

―結果的には、興収23億円超えの大ヒットとなったわけですが、そうなるとやはり続編の話が出てくるわけで。それについては、どんなふうに捉えていたのでしょう?

松原:僕は、やっていただけるなら……しかも、また中田監督がやっていただけるのであれば、それはもう楽しみでしかないという(笑)。

中田:続編のスタート自体は結構前だったと思いますけど、次はどういう切り口にするかってところで、わりと時間を掛けさせてもらったんですよね。(松原)タニシさんの実体験をもとにしつつ、その展開みたいなものは、前作同様こっちで考えさせてもらったので。

―本作は、前作の直接的な続編ではなく、キャストや設定を一新したかたちになりましたが、それはどんな理由からだったのでしょう?

中田:さっき「恐ポップ」という話がありましたけど、前作は亀梨(和也)くん演じる主人公が売れないお笑い芸人で、例えばクロちゃんのような、実際の芸人さんにたくさん出ていただいて……それこそ前作は、亀梨くんと瀬戸(康史)くんのコントから始まるわけじゃないですか。

松原:前作は、芸人たちの青春映画っぽい感じがちょっとありましたよね?

中田:そうですね。だから、本物の芸人さんたちを呼んで、ちょっとポップにしてもらおうという意図もあったんですけど、今回もまた芸人さんを主役にすると繰り返し感が強いような気がしたんですよね。じゃあ、何を志す人にしようかって話し合いながら、「タレントはどうだろう?」って僕が言って。そこは似て非なるものというか、芸人とタレントには、はっきりした境界線があるような気がするんですよね。

―いずれにせよ、ホラーマニアとかではなく、巻き込まれ型の主人公であることが、このシリーズでは重要ということですか?

中田:まあ、そうですね。

松原:今回の映画は、「住みます芸人」ではなく「住みますタレント」が主人公だからこそ、前作とは違った雰囲気になっていて。たとえば、プロデューサーから「お前は明日から事故物件に住むことになったから」って言われたときのリアクションって、芸人とタレントではちょっと違うじゃないですか。まあ、それは渡辺翔太さん演じる今回の主人公「桑田ヤヒロ」の実直さもあると思うんですけど、「何だよ、それ」って言いながらも、わりと素直にやり続けている感じがある。そこは芸人ではなく、タレントを目指しているヤヒロだからこそ、成り立つ話なのかもって思いました。

―ヤヒロはタレント志望なので、特に「笑い」に結びつけて物事を考えていないというか……そこは渡辺さんのキャラクターも関係しているのかもしれませんが、すごく素直で雰囲気が柔らかいんですよね。

松原:いやー、しょっぴー(渡辺翔太)、良かったですよね(笑)。たしかに、柔らかい感じがするというか、すごくやさしい感じがするんです。で、その「やさしさ」みたいなものが、じつは今回の映画のテーマにもなっているのかなって思っていて。

(C) 2025「事故物件ゾク 恐い間取り」製作委員会

―先ほど「恐ポップ」という話がありましたが、中田監督は今回の作品で、どんな種類の「恐さ」を演出しようと思ったのでしょう?

中田:僕が、『女優霊』(1996年)や『リング』(1998年)を撮っていた頃は、別に「Jホラー」ってことでも、じつはなくて……。そもそも、そういう言葉もなかったし、まだみんないろいろ模索中だったと思うんですけど、むしろ「モダンホラー」って言うのかな? 日本の怪談というのは、たとえば『四谷怪談』のお岩さんだったら伊右衛門憎しで、ある特定の個人を恨んで祟るみたいな、そういうのが日本の正調ホラーじゃないですか。だけど、モダンホラーっていうのは、『リング』の貞子に象徴されるように——もちろん、貞子が殺されたいきさつはあるんだけど、貞子は自分を殺した人間だけではなく、ビデオを見た人を、平等に祟るわけです。それを称して、僕らは「モダンホラー」って呼んでいて。だから今回は、そういうモダンホラーの部分と、日本の怪談のような正調ホラーの取り合わせを、しっかりやろうと思った感じですかね。

―たしかに今回の映画は、その2つの要素が混じり合っているようなところがあって……そう、「事故物件」というのは、必ずしも因果関係が明らかにならないところが、ちょっと面白いなって思いました。

松原:ああ……でもホント、そうですね。事故物件って、そこで何か不思議なことが起こったとしても、その原因みたいなものに、なかなか辿り着かないんですよ。もちろん、そこで実際に亡くなった人がいるわけだから、その影響なのかなってところで片づけられがちなんですけど、結局わからない部分がすごく多いんです。で、それがわからないまま、僕の場合は、次の事故物件に行っちゃうんですけど(笑)。

それは、今回の映画も同じなんですよね。これって、結局どういうことだったんだろうっていうのがはっきりわからないまま、次の物件に進んでいく。そこが僕は、むしろすごくリアルだなって思いました。事故物件って、そういうものだから。

―そういう意味では、渡辺翔太さん演じるヤヒロのキャラクターも良かったですよね。恐がりではあるんですけど、あまり執着しない感じの人というか……。

松原:そうですね(笑)。あの執着のなさは、ちょっと説得力あるなって思って。いろいろ気にしてしまう人だと、この映画は成り立たないというか、そもそも「事故物件住みますタレント」なんて、やらないと思うんですよね。そういう意味で、渡辺さん演じるヤヒロは、事故物件に住む才能があるなって思いました。

中田:そうだよね。僕も編集しながら、毎回笑っていましたから。

松原:監督、編集しながら笑っていたんですか(笑)。

中田:だって、あんなにひどい目にあったり、その部屋で亡くなった人に対して深々とお辞儀したりしているのに、次のシーンで畑芽育さん演じる花鈴に会ったら、うれしそうにはしゃいだりしているじゃないですか。

(C) 2025「事故物件ゾク 恐い間取り」製作委員会

松原:沈鬱な面持ちで事故物件を出たあと、花鈴ちゃんと会って、一緒にご飯をモリモリ食べたりしているという(笑)。あのシーン、すごく良かったです。

中田:まあ、僕がそういうふうに演出しているんだけど、渡辺くん、じつに回復が早いなって、ちょっと思ったりして(笑)。

松原:自分で演出したのに(笑)。

中田:や、あんなに恐い体験をして、もう事故物件には住みたくないとか言っておきながら、次のシーンでは、ご飯を美味しい美味しいって言いながら食べているのって、ちょっと複雑過ぎてよくわからないじゃないですか。それだけ恐い思いをしたら、普通ご飯は食べないだろっていう。

松原:でも、だからこそ、事故物件に住めるというか……それでちょっと思い出したことがあって。事故物件を掃除する、特殊清掃の人たちっているじゃないですか。あの人たちって、亡くなった人の現場を掃除したあと、めちゃくちゃ肉を食べるんですよ。

中田:そうなんだ。何で肉なんですか?

松原:理由は特にないって、その人たちは言っていたんですけど、僕が勝手に思ったのは、生と死のバランスじゃないですけど、死の現場に引っ張られているからこそ、生きるエネルギーとして、肉を食べることが必要なのかなっていう。

中田:なるほど。それは興味深い話ですね。

松原:だからやっぱり、何かあるんだろうなっていうのは思っていて。そうやって深読みすると、だからこそ、ヤヒロも、あんなにモリモリご飯を食べていたのかなって思ったり。ホラーが好きな人というか、そのへんのことに詳しい人は、そうやって深読みしながら、あのシーンを見るかもしれないです。

※以下、本作終盤のネタバレを含みます。あらかじめご了承ください。

―なるほど。いずれにせよ、ヤヒロはわりと切り替えの早い人物ではありますよね。

松原:そうですね(笑)。

中田:まあ、あまり恐さみたいなものを引っ張っちゃうと、映画を見ているお客さんも、それに引っ張られてしまうところがあるじゃないですか。今回も前作同様、4つの事故物件が出てくるわけですが、1軒目も2軒目も、結構重い話と言えば、重い話じゃないですか。

松原:そうですね、3軒目も結構重いと思います(笑)。

中田:まあ、そうか。でも、だからこそ、それを引っ張らずに、「よしっ、次に行こう!」みたいな主人公じゃないと、なかなかこういう構成にはしづらいところがあるんですよね。

―ちなみに本作も、前作同様、最後の4軒目には、あっと驚くような仕掛けが施されていて……。

松原:そうそう(笑)。どこまで話していいのかわからないですけど、あれも深読みしたら、結構あるかもなっていう話ではあって。以前、霊に取りつかれている人の話を聞いたことがあるんですけど、そもそもその人の言っていることが、どこまで信じられるのかっていう問題があって。その前提から、じつは間違っているかもしれないみたいなことって、意外とあるんですよね。

―怪異系の話って、誰のどの話を、どこまで信じればいいのか、ちょっとわからないところがありますよね。それはあくまでも、聞く人自身の判断というか。

松原:そうなんですよ。だから、この映画の場合も、疑り深い主人公とかだったら、途中で何かおかしいって気づくと思うんですけど、そこでもまた、ヤヒロのキャラクターが活きるという(笑)。

―基本的には、人を疑うことを知らない素直な人物なんですよね(笑)。そう、今回の映画の最後に、松原さんの「事故物件は、過去であり、現在であり、未来です」という言葉が引用されていて……。

松原:はいはい。

中田:そう、あの言葉について、ちょっと直接聞きたかったんですよ。あれは、タニシさんのどういう体験からきている言葉なんですか?

松原:あれはまあ、事故物件というのは誰かが亡くなった場所で、その人が生きていた時間は、もう過去にはなってしまっているんだけど、そこにいまから住む人にとっては現在だし、そこを退去したとしても、その人の人生は続いていくという意味では未来でもあるんだよなっていう。なんか最近、そういうことを感じたんですよね。

事故物件というのは、過去で終わるものではなく、この映画のヤヒロのように、そこに住んだからこそ生まれる未来があるし、そんな彼と関わるようになった花鈴にも、また未来があるわけで。単なる過去の話として、片づけられるものではないなっていう。それが、今回の映画の内容とつながったらいいなと思って、あの言葉を寄せさせてもらいました。

中田:なるほどね。解説してもらって、すごくよくわかりました。

―ところで、ひとつお聞きしたいと思っていたのですが、「事故物件住みます芸人」である松原さんの活躍や今回の映画もそうですが、そのほかにも、昨年映画化された雨穴さんの『変な家』や、この夏映画版が公開される背筋さんの『近畿地方のある場所について』など、かつての「Jホラー」とは、また違う種類の盛り上がりが、昨今の日本のホラー映画界にはあるように思っていて。それについては、いかがでしょう?

松原:やっぱりそれは、ちょっと違うものなんですか?

中田:まあ、違うと言えば違うのかもしれないけど、僕はいつもこれを言って、みんなをズッコケさせちゃうんだけど……僕は、特にホラーが好きだったわけでもないというか、過去に好きだったわけでもないし、いまもそこまで好きじゃないんですよね。

松原:あ、そうなんですか?

中田:ホラーというジャンルについてはね。だけど、映画づくりは好きだし、ホラーをやってくれと言われたら、自分の持てる力でベストを尽くすというか。まあ、恐がりというか、ホラー向きの性格ではあるのかもしれないけど、そういう自分の特性を活かしながら、もう30年近くもやってきたわけで。だけど、ホラー映画こそ自分のやりたいことだし、これをずっとやっていきたいって思ったことは、じつは一度もないんです。

松原:そうなんですね。

中田:ただ、いまこうしてお話ししていて思ったんですけど、たしかに「Jホラー」なる言葉が、たぶん2000年ぐらいに生まれたり、『リング』がアメリカでリメイクされたり、いろいろあって……そう、『リング』のあと、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』(1999年)という映画が流行ったじゃないですか。

―はい。日本でも大ヒットしました。

中田:ああいった、モキュメンタリーというかフェイクドキュメンタリーみたいなものが、いままた日本でちょっと流行っているような気がするんですけど、ここまでくると、そういう流行り廃りっていうのは、もうあまり関係ないのかなって思うようになって。

たとえば、さっき言った「恐ポップ」だって、映画の内容自体は全然違いますけど、ちょっと前に『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017年)という映画があったじゃないですか。ピエロのキャラクターが出てきて、やたらと恐いんだけど、ちょっと「オモシロ恐い」みたいな要素もあって。それがヒットしたから次はああいう感じでいこう、とかはあまり考えず、要は自分がいま良いと思うものをやったほうがいいような気がするんですよね。まわりのことは関係ないというか、もちろんお互い影響はし合うし、「これすごいな」とか「これは恐いな」って思うことは、どこかで自分の映画のヒントにはなっているんでしょうけど、「いま何が求めてられているのか?」みたいなことを考え過ぎると、逆につまらなくなるなって思っていて……。

松原:あ、それはわかります。

中田:要するに、自分はこれが恐いはずだと思う信念というか、そのときそう思えるものを頑張ってつくろうと。それは、今回の映画をつくりながらあらためて思ったというか、完成披露試写会とかで、実際のお客さんに見てもらいながら、わりとはっきり思ったところではあるんですよね。

―ただ、先ほど言ったように、松原さんは昨今のホラーブームの立役者のひとりでもあるわけで。そのあたりは、どんなふうに見ているのでしょう?

松原:うーん……僕もじつは、こんなん言っていいかわからないですけど、昨今のホラーブームみたいなものには、あまり興味がなくて。モキュメンタリーがまた流行ってるとか情報としては入ってくるんですけど、やっぱり自分が興味あることにしか興味がないんですよね。この事故物件に住んだら、どんなことが起きるんだろうとか、事故物件を映画化するとなったらどんな映画になるんだろうとか。そこまで、まわりのことを考えられないんです。だから、ブームがどうこうっていう話はじつはあんまりわからなくて。ただ、事故物件に興味を持っている人がいる、しかも結構たくさんいるみたいなことは、自分なりにわかってきたところがあって……。

―とはいえ、「住みます芸人」は、もう10年以上も続けられていますよね。

松原:そうですね。僕がやっていることを「ものづくり」と言っていいのかわからないですけど、誰もやりたがらないことだからこそ、自分も興味を持ち続けることができるというか。誰もやりたがらないからこそ、自分が発信できるものとして、ここまで続けられたのかなって思っていて。そう、この映画のなかの台詞にもあったじゃないですか。「みんなが行くほうに行くな」って。

―はいはい(笑)。

松原:自分がやってきたことも、それとつながるところがあるなって思って。だから僕、じつはひとりでちょっと感動していたんですよ(笑)。

中田:(笑)。でも、それを言ったら、僕も同じですよ。ホラーはそこまで好きじゃないとか言いながら、いちばん最初、『女優霊』を撮った頃は、自分は他人と何が違うんだろうみたいなことを、ずっと考えていて。で、その「みんなが行くほうに行くな」じゃないですけど、ほかの人と自分の違いみたいなものを、どうにか見つけて——僕はそれまで、助監督を7年ぐらいやっていたんですけど、当時まわりを見渡しても、そんな人はあまりいなかったんですよね。だったら、それを売りにして、撮影所を舞台としたホラー映画はどうだろうと思って企画を出したら、それが採用されたっていう。

松原:そうだったんですね。

中田:だから、発想の仕方としては、ちょっと似ているというか、撮影所に長いこといたのは事実だし、それまでにホラーのテレビドラマとかは撮っていたから、それを一緒にして「撮影所ホラー」というのは、どうだろうと。そしたら、業界内で評価されて……それが、『リング』につながっていったんですよね。

―ただ、おふたりとも、最初のきっかけはどうであれ、それを現在に至るまでずっと続けられているわけで……それはそれで、やはり興味が尽きないところがあるのでしょうか?

中田:まあ、僕の場合は、言葉は悪いけど、ある種の腐れ縁みたいなところがあって。こっちは「もういいから」って言っても「まあそう言わずに私と付き合っておけばいいのよ」みたいな感じで、気がついたらまたホラーを撮っているという(笑)。そんな感じなんですよね。

松原:僕の場合は……これ以上、事故物件に何かあるのかなって、正直ちょっと悩んだときもあったんですけど、いざ住んでみたら、結局そこでまた何か見つかるというか、やっぱり事故物件って、一軒一軒違うんですよ。当たり前の話ですけど、亡くなった人の数だけ、事故物件があるわけで。これは何かひと言で片づけたり、まとめられたりするものじゃないなって。そこに気づいてからは、ずっとできるなって思っているようなところがあるんですよね。
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