“チケット完売”SYO×石井勇一×加藤ひとみ×櫛山慶が映画を語るイベント開催 デザイン&編集&プロデュースの裏側に会場驚き

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2025年07月26日 09:40  クランクイン!

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(左から)櫛山慶、石井勇一、SYO、加藤ひとみ トークイベント「Cinema SyoWindow〜つくる⼈、届ける⼈、観る⼈。みんなで映画を語る夜〜」Vol.1の様子  クランクイン!
 映画ライターのSYOが企画する、映画を愛する観客と映画制作に携わるクリエイターとの距離を縮め、業界の魅力をより多くの人に届けるトークイベント「Cinema SyoWindow〜つくる⼈、届ける⼈、観る⼈。みんなで映画を語る夜〜」Vol.1が、25日に映画館Strangerで開催された。本イベントは、映画界を支えるクリエイターを迎え、ひとつの作品に関連したトークではなく、「映画そのものの魅力」や「自身を形作った作品」、「自身の仕事について」など、幅広いテーマで語り合うトークイベント。チケットは完売しており、熱心な映画ファンで満席のスクリーンに、SYOとアートディレクター/デザイナーの石井勇一、編集技師の加藤ひとみ、日本テレビプロデューサーの櫛山慶が登場した。

【写真】会場から称賛の声が上がった、石井勇一のパンフレットが入ったアタッシュケース

■クリエイターならではの視点で映画を語る!

 本イベントは、映画ライターとして独立してから今月で5周年を迎えるSYOが兼ねてから温めていた企画。「邦画洋画問わず映画の話をしたい」という思いを抱く中で、取材で撮影現場を訪れた時にさまざまな日本のトップクリエイターに出会い、そこで聞いた興味深い話を映画ファンにも共有したいと思い、イベントが立ち上がった。

 チケット完売で満席となった本イベントにはSYOのほか、小学生の頃に父親の横で『サイコ』や『時計じかけのオレンジ』を借りて見ていたという編集技師の加藤ひとみ、小学生の頃に『ターミネーター2』で映画に初めて触れたというアートディレクター/デザイナーの石井勇一、『ガメラ 大怪獣空中決戦』に感銘を受け「いつか日本テレビで『ガメラ』を作りたい」と思い就職活動をした日本テレビプロデューサーの櫛山慶が登壇し、来場者から事前に集めた質問を交えながらトークを展開。

 SYOが「すごく柔らかい方なんですけど、めちゃめちゃハードな作品をたくさん手掛けられている人」と紹介した加藤は、『孤狼の血』シリーズや『死刑にいたる病』『極悪女王』など白石和彌監督作などを担当してきた編集技師。

 そんな加藤が、話題作の劇場パンフレットのデザインを手掛けてきた石井に聞きたいことがあると、自身のパンフレットコレクションを取り出し、パンフレットトークが始まった。ポテトチップスのような袋に入った『ギャラクシー・クエスト』やスカーフが封入されたフランソワ・オゾン監督作『焼け石に水』など加藤のユニークなパンフレットコレクションが次々に紹介され、その貴重な品々に会場からは驚きの声が上がる。

 続いて出てきたのが、石井が手掛けた『燃ゆる女の肖像』のパンフレット。加藤から石井へ「絵画がテーマの作品のパンフレットをデザインするのは難しくなかったですか?」と質問が投げかけられると、石井は「実は3回くらい本国からNGが出たんです」と表紙のカリグラフィーにまつわる裏話を紹介。「最初は僕の手書きだったのですが、文字が走っていないと言われまして…。要は向こうの人からは、僕たちで言う『下手な日本語の手書き文字を外国で見た』ような感じに見えたんでしょうね」と話し、分かりやすい例えに一同納得。その後、知り合いのカリグラファーにオファーをし、満場一致で現在のデザインにたどり着いたという。

 さらに石井も自身が手掛けたパンフレットが8割も入っているという、アタッシュケースを持参。櫛山が「かっこいいな」と言う程スタイリッシュなケースは「(グローブ・)トロッターなんです」と石井は言う。そこからSYOが「これ覚えてる」と取り出したのは『ニューノーマル』のパンフレット。iPhoneの箱のようなデザインで、石井は「実際にiPhoneの説明書をフリマサイトで買って、書体などをインプットしたデザインになっています。初めてAppleの書体を使いました」とこだわり深い制作過程を明かす。

 石井がパンフレットづくりにおいて意識しているのは「どこに顔を持たせるか」だそう。「引っ越しで捨てるか捨てないかの決断を迫られる場面があると思うのですが、そこで残ったもん勝ちだと思っています」と語り、『かがみの孤城』や『水曜日が消えた』『あなたの番です 劇場版』などアニメと実写の垣根を越えて幅広くプロデュースを行う櫛山は「洋画の仕事、いいですね」「僕が担当した作品のパンフレットを石井さんが手掛けてくれたら、どんなものが生まれていたんだろうと考えちゃいますね」と洋画パンフレットのデザインの自由さに心惹かれていた。

 そんな櫛山は8月8日公開の『近畿地方のある場所について』のプロデュースを担当している。本作のプロモーションは非常にユニークで、映画公式から出題された“謎解き”にチャレンジし、プレミア会場を導き出せた人だけが参加権を得られるというイベントや、ある場所からある場所へ参加者を連れていく“東京のある場所”ミステリー・バスツアーなどが行われている。

 櫛山は「『近畿』が当たってほしいなと思うんですけど、『国宝』が映画プロデューサーの夢みたいな当たり方をしたんですよ」と言うと会場からは笑いが。続けて『なんていい当たり方したんだって思ったら、『鬼滅』が4日間で73億円で抜いていったので、たまらないですよね」と本音を漏らす。

 話題作が多い中で、実は今年はホラー/スリラー映画が豊作な年でもある。『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』をはじめ『見える子ちゃん』や『ドールハウス』『事故物件ゾク 恐い間取り』『8番出口』『火喰鳥を、喰う』などゾクッと感を楽しむ映画が立て続けに公開されているのだ。

 そこに並ぶ『近畿地方のある場所について』は<場所ミステリー>とうたっているが、櫛山によるとこれには理由があるそう。「昔は『ほんとにあった怖い話』など怖い番組が放送されていましたが、今はホラーだと視聴者が離れてしまうんです。特に朝の時間には流しにくいですよね。なので<ホラーと言わない>みたいな流れがあるんです。『変な家』は<間取りミステリー>という言い方をしていましたね」と映画宣伝の難しさを語る。

 すると加藤は「ジャンルが変わる映画が最近多いなと思うんです」と作品自体がジャンルに縛られないようになっていると指摘。SYOも『愛はステロイド』や『チェンソーマン』を挙げつつ、「マンガの『ダンダダン』もオカルトやSF、ファンタジーなど全盛りだったりしますが、映画も“ジャンル映画”というくくりが変わってきている気がしますね」と同意した。

 それから話題は「エンドロールについて」に。加藤は櫛山が手掛けた『水曜日が消えた』のエンドロールがこっていたと言い、「ああいうこったものを手掛けるときは最初から予算を組んでいるんですか?」と質問。というのも編集を進めていく中で、タイトルバックやエンドロールのアイデアを出しても予算の関係で諦めなければならないことも多くあるのだという。

 余韻を楽しむ『近畿地方のある場所について』を除いて、ほとんどの作品でエンドロールに力を入れているという櫛山は「『あの人が消えた』は編集を結構変えた結果、『その後の活躍が見たい』と編集段階で思って、エンドロール裏をアニメーションにしました」と編集過程で出てきたアイデアを採用したことを明かす。『水曜日が消えた』や『かがみの孤城』などでも物語の「その後」や「その前」をエンドロールに入れており、「そういうのは頑張って予算を取るようにしています」と加藤の疑問に答えた。

 メディア露出の多い役者や監督とは異なるクリエイターの視点が共有された本イベント。90分だったが、登壇者も驚くくらい時間があっという間に過ぎていった上、プレゼント企画などもあり来場者も満足げだった。SYOは「つたない進行だったと思いますが、これからもゆるくて楽しいイベント企画していければと思っております」と最後にあいさつ。集まった人への感謝とともに「引き続き応援いただければと思います」と呼びかけ、イベントを締めくくった。
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