香川照之「どこまで理解?」 WOWOWドラマ再構築「災 劇場版」サンセバスチャン映画祭へ

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2025年07月29日 18:00  日刊スポーツ

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香川照之の主演映画「災 劇場版」(C)WOWOW

香川照之(59)が主演し、WOWOWで今年、放送・配信された「連続ドラマW 災」全6話をリビルド(再構築)した映画「災 劇場版」が、9月19日にスペインで開幕する第73回サンセバスチャン映画祭のコンペティション部門へ出品されることが決まった。


日本での公開に先駆けてのワールドプレミアも決定した。


香川にとって、監督集団「5月」の関友太郎(38)平瀬謙太朗(39)両監督らとともに作り上げた、22年11月18日公開の主演映画「宮松と山下」がニューディレクターズ部門出品されたのに続き、2作連続でのサンセバスチャン映画祭出品となる。「シーンの順番はめちゃくちゃ、私が演じる多岐にわたる人物像がさらにそれを混沌(こんとん)とさせ、一体現地の人たちはどこまでこれを理解するというのだろう」と、独特の言い回しで出品決定への思いを語った。


また、26年の劇場公開も決まった。


「連続ドラマW 災」は、現代を生きる罪なき6人の主人公たちの人生を描く群像劇。交わることのない6人と、それぞれの日常に、いつの間にかひとりの男が紛れ込み、6人の人生には、何の前触れもなく災いが降りかかる。その独特な構造によって、全てを見渡している観客だけが、男の存在に底知れぬ恐怖を抱くことになる異色のサイコ・サスペンス。香川にとって、19年に女性へのハラスメントがあったと22年8月に一部で報じられ、TBS系「THE TIME,」金曜MCなどを降板した中、227月期のテレビ朝日系「六本木クラス」以来のドラマ出演となった。


「災 劇場版」は、各話完結する全6話の物語を、時系列や展開を大胆に再構築することで、世界観やテーマ性を引き継ぎながらも全く新しい1本の映画に仕上げた。劇中で、ある“男”を演じるにあたり、香川は姿、口調、性格や所作まで変えた。香川は3月に都内で行われた会見で「今回、衣装合わせが1日で終わらず2日…いつまでたっても終わらない。僕は、衣装と髪形が1番の鍵だと思う」と振り返った。


「不明瞭で難解なピースが続く。(視聴者を)カタルシス(快感)で納得させるのが、ドラマではない。専門家、一般の観客がどう思うか? 酷評される勇気、ありますよね」と両監督に問いかけた上で「歴史に残るドラマになると自信を持って言うことができる」と自信を見せていた。


その言葉通り、映画化され、世界各国の監督が目指す国際映画祭の1つ、サンセバスチャン映画祭のコンペ部門に出品された。


香川は「『5月』組の監督たちと初めて組んだ『宮松と山下』も十分に狂った作品だったが、今作『災』は6話連続だった長尺のドラマ版でさえ難解奇妙な物語だったものを、三分の一の尺の2時間の映画に編集し直してさらに混迷を極め、理解不能が大前提のような狂作へとぶっ返り、それを二作連続で自身の映画祭に、しかも今回は猛者たちが群雄割拠するコンペティション部門へ招いたというサンセバスチャンの勇猛果敢さには心底頭が下がる」と映画祭側に感謝した。


「そして来年、本作は劇場公開されると聞いた。元となったドラマ版をその後でも見ることができる我々は、まだ筋の答え合わせをする機会があるだけ恵まれている。世界屈指の美食の街サンセバスチャン。何はともあれ、そこから黒船は出発する。心配である」と熱っぽく語った。


主演の香川のほか、香川演じる男を追う刑事を演じた中村アン(37)竹原ピストル(48)Travis Japan宮近海斗(27)中島セナ(19)松田龍平(42)シソンヌじろう(47)内田慈(42)藤原季節(32)坂井真紀(55)安達祐実(43)井之脇海(29)が出演。両監督もコメントを発表した。


関友太郎監督 ドラマから産声をあげた風変わりな映画が、サンセバスチャンという世界的な舞台に呼んでもらえたこと、本当にうれしく思います。8人の男をさも当たり前のように怪演してくださった香川さんをはじめ、『災』の世界を作り上げた俳優・スタッフの全仕事がただただ誇らしいです。映画愛があふれかえっているあの街で、このえたいの知れぬ作品がどう受け止められるのか…。緊張と興奮が渦巻いたまま上映当日を迎えることになりそうです。


平瀬謙太朗監督 意味もなく、前触れもなく、慈悲もなく、悪意すらなく私たちの人生を壊すものを、人は「災い」と呼びました。それは、恐ろしいほど乱暴な現象にもかかわらず、いざ相対するまで、一体、どこに潜んでいるのか感じ取ることすらできません。その"目に見えぬ恐怖"を”今までにない形”で描こうと試み、この「災」という作品が生まれました。”今までにない形”ということを大切にしたので、結果、ドラマと映画、それぞれまったく違う作品になりました。映画「災」は、映画にしかできない形で、見る人の胸中に"目に見えぬ恐怖"を静かに呼び起こします。この試みが世界に届いたことをうれしく思うのと同時に、世界中から集まった映画を愛する観客が、この映画から何を受け取り、何を感じるのか、すこしだけ緊張しています。そして、まずは世界に問うことになりましたが、2026年にはこの”恐怖”と”形”を皆さまにもお届けします。


◆「災 劇場版」さまざまな悩みや葛藤、希望を抱えながら現代を生きる罪なき6人。ところが気が付くと、どの物語にも“ひとりの男”が紛れ込んでいる。男は性格を変え、顔つきを変え、口調や笑い方や歩き方まで変え、全く別々の人間として人々の前に現れる。そして、次々に“災い”が起こる。“男”は一体何者なのか?彼らに訪れる“災い”とはなんなのか?


◆監督集団「5月」 監督・脚本・編集を務めた関、平瀬の両監督は、「だんご3兄弟」の作詞、プロデュースなどで知られる、東京芸大大学院映像研究科の佐藤雅彦名誉教授(71)の教え子。佐藤研究室の5期生4人と「Cプロジェクト」と名付け、5人でカンヌ映画祭を目指して3年が経過した14年に短編映画「八芳園」が、世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭(フランス)短編コンペティション部門にノミネート。18年「どちらを」も、同部門にノミネートされた。その後、同名誉教授を含め「3監督でやろう」と3人で作った「5月」で「宮松と山下」を製作した。「災」も原案から手がけ、NHKのドラマ演出などで活躍した関監督と、二宮和也(42)主演映画「8番出口」(川村元気監督、8月29日公開)でも共同脚本を務める平瀬監督が監督・脚本・編集を務めた。

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