
「秘密を抱えている人間なので。キリッと、気持ちや表情が緩まないように。自分のことをアル・パチーノ、もしくは『ドライヴ』('21年)など、ダークサイド系の役だったころのライアン・ゴズリングだと思い込ませてやっています(笑)」
と話すのは、戸塚祥太。7月22日から始まったドラマ『極道上司に愛されたら』の主演を務めている。近年は舞台での活動が多い戸塚にとって、連ドラ主演は『凛子さんはシてみたい』('21年)以来、約4年ぶり。
水抜きで66kgから60kgに
「“いけるのか?”“大丈夫なのか?”とオファーをいただいたときには思いましたね。漫画原作ということもあって、美術的にすごくきれいな作品なので。
ただ、ファンの方々は“戸塚イズバック”と言ってくれて……って、冗談ですけど(笑)。でも4年の歳月ってすごいですね。“またあの次元に行けるのか?”と思いながらも、そこと戦いながら何とか頑張ろうと思っています」
広告代理店で働く真琴(紺野彩夏)は同棲中の彼氏に浮気をされて路頭に迷うも、手を差し伸べてくれたのは優秀&冷徹ゆえに“極道上司”と呼ばれる・小田切蓮(戸塚祥太)。意外な同居生活が始まるが、実は小田切はリアルに極道の若頭という、もうひとつの顔が……。
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背中にがっつり刺青が入ったキービジュアルには大きな反響があった。
「普段は、バイオレンスのバの字もない自分ですが、あの撮影の前には初めて水抜きしましたね。4年前のドラマでは、めちゃくちゃ身体を枯渇させていたのと比べると、まだそこまで持っていけていないと思ったので。
前日の夕方から水を飲まず、ずっとサウナに入って。特にクラクラすることもなく、淡々と。66kgの体重が60kgになっていて、びっくりしました。自分でも初めて見るような目元になっていて、“ここまで追い込めばいけるかな”と思いましたね。今後も極道の凄みを出すシーンの前には、やろうかな」
「自分を認められつつあるのかな」
裏の顔を持つ上司との“むずキュン”の恋愛ドラマだが、
「最初は“難しい&キュン”だと思ってました。成就が難しい、みたいな? ムズムズだと聞いて、びっくりしました。知らなかったです、その言葉。真琴さんに対しては、単純に守りたいという気持ちが強いですね。だから“真琴を悲しませるヤツは全員殺す”“駆逐してやる”みたいなスイッチを入れています」
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現在38歳。年齢を重ねる中での恋愛観の変化について聞くと、
「自分はわりと、恋愛みたいなことをサボってきちゃったので。しっかりそこにも向き合わないといけないかな、と思ってはいますけど……恋愛かぁ(笑)。
なんか、まともな人間が、まともじゃなくなるじゃないですか、恋愛すると。人を狂わせる、というか。そこが面白いなと思いながら、(恋愛している)人の話を聞いていますね。自分も常にその渦中にはいたいとは思いますが、ひとまず、今はこの作品で“本能寺の変”くらい、逃げられないロマンスの真っ最中です(笑)」
昨年は初めてのソロライブツアーを行った。俳優、A.B.C-Zでの活動、アーティスト……思い描いている今後は?
「自分は何かにならなきゃいけない、という固定観念みたいなものが結構あって。いまだにあると思うんですけど。でも、何もカテゴリー化しなくてもいいのかな、と思いつつありますね。
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自分の父親のように、ひとつのことを長くやり続けている人のことをずっとカッコいいと思っていて、憧れてきました。でも一方で、自分がやらせてもらっていることはバラバラなようでいて、でも大枠が芸能であることに変わりはない。役者、ダンサー、シンガー、バラエティー番組への出演など、『風姿花伝』じゃないけれども、芸の道を極めることにつながると思っていて。だから自分はそれでいいのかなと、自分で自分を認められつつあるのかな。なんか、呼吸はしやすくなってきた気はします」
二面性、ある?
イケてる上司と極道。二面性のある役を演じている戸塚に、ちょっと意外な二面性を尋ねると、
「仕事がないオフのときは、本当にすごく退廃的な人間で(笑)。お酒に溺れてハッピーになってますよ(笑)。ウイスキーか焼酎ですね。前、帰り道に酔っぱらって、何度か地面に身体を打ちつけながら帰宅したんですよ。でも、翌日起きたら、完全に無傷で。自分の記憶ではだいぶ転んだのに、無傷っておかしいんですけど。何か、大きな力に助けられたとしか思えないですね(笑)」
取材・文/池谷百合子 撮影/伊藤和幸 ヘアメイク/奥山信次 スタイリング/野友健二(UM)