
8月9日午前11時2分、長崎市上空で原子爆弾がさく裂した。
日本赤十字社の看護師たちによる『閃光の影で−原爆被爆者救護赤十字看護婦の手記―』を原案にした映画『長崎―閃光の影で―』(8月1日全国公開)は、地獄と化した長崎の街で使命を全うしようとした看護学生たちの葛藤を描く。
80年前を生きる覚悟
手記に記された看護師たちの体験談をもとに、長崎出身で被爆三世でもある松本准平監督が凄まじい筆致で脚色。筆舌に尽くしがたい惨状をありのままに、時に容赦ない描写を用いて、戦争が引き起こす悲劇をダイレクトに再現した。
「撮影前にみんなで集まって当時の資料映像を見たり、原案となる手記を読んだり。戦時下当時の少女たちの感覚を探るためにゴム飛びや刺繍遊びもしました。戦争という実際に起こった悲劇を描く内容だからこそ、覚悟を持って挑まなければと」
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そう振り返るのは、俳優の川床明日香(23)。菊池日菜子、小野花梨とともに看護学校の生徒を演じた。
空襲による休校を機に長崎に帰郷した仲良し3人組。彼女たちの人生を原爆が一変させる。川床が扮する岩永ミサヲは敬虔なクリスチャン。神も仏もないような阿鼻叫喚を前に、その信仰心は揺らぐ。
「ミサヲを演じる上で軸になると思ったのは、何かを信じるという心。ミサヲが生きていた日常を私自身の中に落とし込みたくて、大浦天主堂を訪ねたり、撮影の合間を縫って近くの教会でミサにも参加したりしました」
ファーストテイクの感情活かす
看護の甲斐なく息を引き取っていく無数の人々を前に、アツ子(小野)はやるせない本音を吐露する。ミサヲは信仰心に根差した「赦し」を語るが、未曽有の現実を前に二人の言葉は涙でかき消されていく。
俳優たちの新鮮な感情をカメラに収めるべく、松本監督はファーストテイクを優先。一連の芝居を長回しで撮っていった。
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「本番前にテストをしたとしても、感情を一切排してセリフを棒読みして確認するくらい。カメラの前に立って最初に出て来る感情を一番大事にしてくださる撮影でした。緊張感はありましたが、現場全体が同じ方向を目指している士気の高さを感じました」と川床は語る。
本作に共鳴した長崎市出身の福山雅治が主題歌をプロデュース&ディレクション。復興のシンボルになった長崎市にある山王神社の被爆クスノキをテーマに福山が2014年にリリースした楽曲『クスノキ』を菊池、小野、川床の3人が『クスノキ―閃光の影で―』として歌うことになった。
松本監督に勧められたことから、川床は撮影中に福山版『クスノキ』を聴いて集中力を高めていたという。「それもあって主題歌に決まった時は本当にビックリしました。しかもそれを自分たちが歌うという。うれしい反面、現実とは思えなくてわけがわからなくなりました」とはにかむ。
目の前で福山雅治が
レコーディングでは福山から直接レクチャーを受けて歌唱した。「レコーディング自体初めての初心者なのに、福山さんを前にして歌う緊張感…。キーがわからなくなった時に、目の前で福山さんがギターを弾きながら歌ってくださったりして。とても優しく寄り添っていただき、贅沢すぎるご褒美のような時間でした」
その主題歌はエンドロールで流れる。「エンドロールで流れる主題歌を聴いたときに、これを含めて『長崎―閃光の影で―』という一つの作品なんだと実感しました。現代の私たちが歌うことで、命が受け継がれていることをより感じられると思います。映画を観終わって聴いていただくと、私たち3人が歌った意味を受け取っていただけるはず」と期待を寄せる。
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劇中で描かれた惨劇から80年。2002年生まれの川床は「私自身、本作を通して『自分にできることは?』と考えることが増えました。平和な生活を疑わざるを得ない気持ちが生まれてしまう今の時代だからこそ、平和について、日々の生活について考える一つのきっかけになったらうれしいです」と願っている。
【川床明日香プロフィル】
かわとこ・あすか 2002年7月10日生まれ、福岡県出身。2014年、第18回ニコラモデルオーディションでグランプリを受賞(総勢11256人)。雑誌『nicola』の専属モデルを4年半務め、CM「積水ハウス」で注目を集める。近年の出演作品は、『沈黙のパレード』(22)、短編映画『実家』(24)、ドラマ「先生さようなら」(NTV)、連続テレビ小説「虎に翼」(NHK)、「外道の歌」(DMM TV/すべて24)、『室町無頼』(25)、舞台「こまつ座 第153回公演『フロイス-その死、書き残さず-』」(25)など。
(まいどなニュース特約・石井 隼人)
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