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ロシア・カムチャツカ半島付近を震源とする30日の地震では、国内の広範囲に津波警報が発表された。太平洋沿岸では鳴り響くサイレンに緊張が走り、夏休みシーズンの海水浴場や観光施設が相次いで閉鎖に。東北地方では14年前の東日本大震災を思い起こす住民も多く、避難所で不安な時間を過ごした。
千葉県内では、開設されていた47カ所の海水浴場が全て閉鎖された。大網白里市の白里海水浴場には警報が出た際に30人以上がいたが、ライフセーバーや海の家の従業員が避難誘導した。市商工観光課の担当者は「普段から津波に備えていたが、実際に防災スピーカーのサイレンが鳴ると気持ちが焦った」と話した。
茨城県日立市の久慈浜海水浴場も注意報を受けて閉鎖になった。海水浴客を誘導し、監視を続けていたライフセーバーの男性(49)は「みんな素直に従ってくれた。大きな津波は見ていないが、多少の潮位の上げ下げは感じられる」と話し、海を見つめていた。
観光施設の休館も相次いだ。海に近いアクアワールド茨城県大洗水族館(大洗町)では、開館中で観光客がいたが、臨時休館に。高台に避難した客と職員たちは、飲み物や氷を分け合って暑さをしのいでいた。水族館の桜健太郎・経営企画課長は「年2回、訓練を実施している。実際に避難するのは初めてだが、問題なく実行できた」とほっとした様子だった。
鴨川シーワールド(千葉県鴨川市)や新江ノ島水族館(神奈川県藤沢市)も、警報を受けて臨時休館を発表した。
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一方、2011年に起きた東日本大震災の被災地。児童・教職員84人が大津波の犠牲になった宮城県石巻市立大川小の遺構では、訪れた茨城県立太田第一高の生徒ら約50人が語り部の遺族から体験談を聞いていた時に警報が発表された。
同校では震災から毎年、ボランティアをするため石巻を訪れている。生徒らは避難所となった中学校に移動し、避難者や乗用車の誘導を手伝った。毎年参加している3年生の山本瑛舜(えいしゅん)さん(17)は「まさかこんなことになるとは思わず、びっくりした。たくさんの車が高台に上っていくのを見て、宮城の人は津波への意識が高いと思った」と話した。
震災で甚大な被害を受けた岩手県釜石市でも、多くの住民らが高台に逃げた。市中心部の寺院「仙寿院」には、近くの住民やこども園の園児ら計200人以上が避難。芝崎恵応住職は「震災で1000人以上が避難してきたことを思えば少ないが、停電など不測の事態に備えて備蓄食料で昼食を準備した。長丁場も覚悟している」と話した。
仙台市は小中学校24校に避難所を開設し、付近の住民が避難した。視聴覚室にはパイプ椅子が並び、避難者に飲料水が配られた。震災で自宅が全壊した内海成子さん(73)は「突然の警報に驚いた。これはただ事じゃないと感じ、あの時を思い出した」と疲労感をにじませていた。
各地で記録的な暑さが続く中、避難者の体調管理も課題となる。避難所を運営する仙台市の担当者は「場合によっては支援物資などの必要も出てくる。避難が長期化しなければいいが……」と心配していた。【中村聡也、田内隆弘、竹田直人、奥田伸一、遠藤大志、井手一樹】
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