困難乗り越え目標の鈴鹿8耐初優勝へ。エース不在で車両ベース作成の加賀山監督「レースは結果で恩返しするのが一番」

加賀山就臣（SDG-DUCATI Team KAGAYAMA）／2025鈴鹿8耐テスト

　いよいよ2025年の鈴鹿8耐ウイークに突入した。2度目の参戦で優勝を目指し準備を進めているDUCATI Team KAGAYAMAだが、事前テストで主砲の水野涼が怪我により不在、さらにマシンが全焼とさまざまなアクシデントに見舞われた。そんななか、チーム代表監督の加賀山就臣氏が自らもドゥカティパニガーレV4 Rに乗り込んでテストを重ね、チーム一丸となってマシンを作り上げて本戦へと臨む。

　2024年にイタリアのドゥカティとタッグを組んで再出発したDUCATI Team KAGAYAMAは、2025年も全日本ロードでさらなる強さを発揮し、さらに今年は2度目となる鈴鹿8耐で優勝を目標に準備を進めている。今年は主軸の水野涼が大クラッシュでマシンも全焼とやや前途多難なアクシデントに見舞われ、水野は2度の事前テストで不在、さらにはパーツなどもすべてのパーツをいちから揃え直す必要があった。

　そのなか6月に行われた1度目のテストにはレオン・ハスラム、2度目のテストではマルセル・シュロッターを招聘。このふたりはすでに本戦への出場も発表されているが、事前テストには1度のみの参加であったことから、ロングランを中心に行っていたという。さらに水野が不在ということから、加賀山監督が自ら鈴鹿8耐に向けたドゥカティパニガーレV4 Rのベース作成と様々なパーツのテストをするという役割を担い乗り込んでいた。

「スペアパーツなどが燃えてしまったのもあって、足りていない状況でした。鈴鹿8耐用のパーツはまた別ですが、クイックチェンジのシステムやタンクだったりと別のパーツがあるので、余分な転倒やクラッシュをさせると全日本ロードで使っているパーツを使わないといけなくなるので、厄介な状況でした。招集しているライダーが転んでしまうのは、頑張っている最中の転倒なので仕方ないですが、テストライダーが転ぶのは意味ないがないので、切り替えてやりました」

「テストでは水野を乗せることができなくて、レオン（・ハスラム）とマルセル（・シュロッター）でしたが、どちらかというと彼らには走り込みをさせたいという思いがありました。でも鈴鹿8耐ウイーク前はかなりのテスト品があり、それは別にラップタイムも必要もないし、パーツの機能確認、エラーやタンクの残量確認といった速く走るためには少し足手まといとなるようなテストがいっぱいあります」

「ゆっくり走って欲しいというテストもあるし、そういった意味ではしっかりと走り込みをさせたいマルセルには少し荷が重いので、ベースを作るためのテストは全部俺がやっちゃう！　ということでテストライダー化していましたね。タイヤもずっとマルセルが使い終わったものを使って、良いタイヤを全部回せるようにしました。それが加賀山の仕事でしたね」

　様々なパーツのテストを遂行しながらも、期間中は何度もピットイン・アウトを繰り返し走行機会としては多く、ファンにとっても嬉しい瞬間となっていたのではだろうか。テストではパーツ不足ということももちろん考慮し、期間中は120パーセント転ばない様に走っていたという加賀山監督だが、そんなファンの応援に応えるかのように一時は2分06秒台という脅威のタイムも叩き出した。

　未だ衰えぬ速さを示していたが、加賀山監督といえばライダー現役時代は様々なスズキのマシンを操り、いわば日本車メーカーの経験が多い印象だ。そんな彼が外車メーカーであるドゥカティのマシンに乗り込んでしっかりとタイムも出し、ベースを作成していたというのは少々驚きもある。そんな加賀山監督は、楽しみながらもテストをしていたようだが、期間中には彼ならではの好奇心が芽生える瞬間もあったという。

「ベースというのは捉え方もあると思いますが、俺はセッティングとかに関してアドバイスはするけど一切口を出さず、レースに出るライダーのやりたい方に合わせています。当然、俺は日本車の経験が多いので『あーしたい、こーしたい』という違いを多く感じるけど、そこはそこです。加賀山セットを出してしまうと足枷になって余分なことになってしまうので、テストはテストで切り替えてやっていました」

「ただグリップするタイヤを入れて走ると、頑張って速く走りたくなってしまうので、使い古したタイヤでいいよと遠慮しましたね（笑）本当に『あー飛ばしたいな！　攻めたいなぁ！』とか『俺だったらここはこういう風にセットアップしたいな』とか思っちゃいますよね」

　加賀山監督が楽しみつつも作成したベース車両が鈴鹿8耐へと持ち込まれ、本戦では復帰予定の水野、そしてドゥカティ経験豊富なハスラムとシュロッターの3名が乗り込み、初優勝を目指す。彼らがどのような印象を抱くのか気になるところ。また、DUCATI Team KAGAYAMAとしては、今年の鈴鹿8耐でスーパーフォーミュラから得た技術でピット時間短縮を狙う取り組みを遂行している。

　テストの際にはまだトラブルや耐久性や強度のテスト項目、データの解析など様々な作業があったという。ただ、実戦での使用に向けてTriple K（株式会社加藤製作所）とともに開発は進められており、こちらも注目ポイントのひとつとなっている。

　加賀山監督は「情報を共有してくれた4輪のチーム、DOCOMO TEAM DANDELION RACINGさん、4輪と繋がりを持っていたTriple Kさんに本当に感謝しています。『それのおかげで去年より成績が出たよ！』と恩返ししたいですね。やっぱりレースの世界は結果で恩返しするのが一番なのでノントラブルかつピットワークも早くできたよと知らせてあげたいなと思っています」と口にしていた。

　昨年同様に優勝候補のひとつであるDUCATI Team KAGAYAMA。トラック上での速さはすでに証明済みだが、4輪から取り入れた技術でピット時間短縮ができるのか。そして加賀山監督も応戦し、チーム一丸となって作り上げた車両はどのような戦闘力を発揮するのか、明日8月1日からスタートする鈴鹿8耐でぜひ彼らの勇姿を見届けてほしい。

[オートスポーツweb 2025年07月31日]

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