すばる望遠鏡による観測で発見された太陽系外縁部の小天体「アンモナイト」の想像図(台湾・中央研究院提供) 国立天文台などが参加する国際研究チームは31日までに、すばる望遠鏡(米ハワイ島)を使った観測で、太陽系外縁部を特異な軌道で公転する小天体を発見したと発表した。シミュレーションの結果、この軌道は40億年以上安定していることも判明。太陽系初期の痕跡をとどめる「化石」のような存在で、太陽系形成過程を解明する手掛かりになるという。論文は英科学誌ネイチャー・アストロノミーに掲載された。
産業医科大(北九州市)の吉田二美准教授らは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラを使い、約46億年前の太陽系誕生直後の痕跡を残す外縁部天体を探索する国際プロジェクトに参加。2023年3〜8月の観測で、直径220〜380キロと推測される小天体「2023 KQ14」を見つけ、「アンモナイト」と愛称を付けた。
この小天体は、最も太陽に近づく近日点でも66AU(天文単位、1AUは地球―太陽間の距離で約1億5000万キロ)で、長半径が252AUの楕円(だえん)軌道を公転。外縁部天体の中でも特異な軌道を持つ「セドノイド」の仲間だが、既知の三つのセドノイドとは異なる軌道だった。
観測を基にシミュレーション計算を行った結果、当初は他のセドノイドと似た軌道だったが、太陽系誕生から3、4億年後に軌道が変化して以降は安定していることが判明。理由は不明だが、今は存在しない惑星が太陽系外に放出されたことなどが考えられるという。
吉田准教授は「現在の太陽系に残されている状況証拠をかき集め、外縁部天体の複雑な軌道分布をつくり出した『犯人』を特定できるかもしれない」としている。