2025年F1第2戦中国GP クリスチャン・ホーナー代表(レッドブル)&トト・ウォルフ代表(メルセデス) メルセデスF1のチーム代表トト・ウォルフは、レッドブルF1の元チーム代表であるクリスチャン・ホーナーとの激しい関係を特徴づけた熾烈な対抗意識についてあらためて語り、彼は宿敵であると同時にF1を象徴する人物のひとりだったと評した。
ホーナーは今年のF1第12戦イギリスGP終了後、レッドブルのチーム代表兼CEOの職を解かれ、20年にわたるチームのリーダーシップに終止符が打たれた。在任中、ホーナーはレッドブルを、2005年にグリッドに新規参入したチームから連続タイトルウイナーへと変身させ、8回のドライバーズタイトルと6回のコンストラクターズタイトルを獲得した。
第14戦ハンガリーGPの週末に『formula.hu』のインタビューに応じたウォルフは、ホーナーのF1での活躍について率直な評価を隠そうとはしなかった。
「彼は嫌な奴のように振る舞った」
ウォルフとホーナーのライバル関係は、レッドブルのマックス・フェルスタッペンとメルセデスのルイス・ハミルトンが、F1で最も劇的なタイトル争いのひとつによってドライバーズ選手権を争った2021年シーズンに最高潮に達した。そのシーズンはアブダビで批判の多い形で終結し、両チーム代表の激しい応酬も相まって、彼らの敵意は強固なものになった。
公の場での非難から、当時のレースディレクターのマイケル・マシとの白熱した無線でのやり取りまで、彼らの衝突は記憶に残る瞬間となった。Netflixの『Drive to Survive(邦題: 栄光のグランプリ)』に収録された2022年カナダGPでの白熱した議論もそのひとつだ。
「あの数年間、特に2021年はマックスとルイスだけの問題ではなく、クリスチャンと私の問題でもあった」
「それに、非常に難しいときもあった。それらはすべて歴史の本に記されており、これからもずっと残るだろう」
ウォルフは、ホーナーの長年にわたる振る舞いに対する感情を隠さなかった。
「私はどう思っているか? そう、彼は過去12〜15年の間に、かなり頻繁に嫌な人物のように振舞ってきた」
「彼はまったく異なる価値観にもとづいて行動しているが、どれほど大きな敵にも親友はいるものだ」
ウォルフは、ライバル関係についてのホーナー自身の言葉を思い出しさえした。
「彼はいつも、『私は彼を憎むことが大好きだ』と言っていた。それなら今、私は誰を憎むべきだろうか? どうやら他の人を探さないといけないようだ」
■ホーナーのレガシーと変化するF1の風景
個人的な衝突があったにもかかわらず、ウォルフはホーナーがF1に与えた計り知れない影響についても語った。ホーナーの指揮下でレッドブルは124回の優勝を果たし、彼はマクラーレンのロン・デニスに次いでF1史上2番目に成功したチーム代表となった。
「一方で、彼は自身がやったことにおいて非常に成功した」とウォルフは認めた。
「彼がいなくなって、少なくともしばらくの間は、本当の個性がスポーツ界から消えた」
ウォルフはまた、F1におけるチームリーダーシップの進化についても振り返り、ホーナーの退任はF1の“旧世代”の人物たちの時代の終わりを意味すると指摘した。
「純粋にF1の観点から見れば、ここには古いタイプのチームボスの恐竜はほとんど残っていないと思う」とウォルフは冗談めかして語った。
「多分私だけかもしれない。フレッド(フレデリック・バスール/フェラーリのチーム代表)も少しばかり恐竜かもしれないね」
ウォルフも認めているように、ホーナーの退団はパドックに目立った空白を残した。
「彼は物議を醸し、意見が分かれる人物だったが、ここでは主役のひとりだった。彼は、ドライバーとしても重要な人物だったと言っても過言ではないだろう」
F1が前進するなか、ウォルフのコメントは、このスポーツの最もスリリングな時代のひとつを活気づけたライバル関係の複雑な遺産を強調している。ふたりの間の個人的な緊張関係は否定できないが、ホーナーの退団により、少なくとも今のところは、ウォルフにとって最大のライバルがいない状態となった。
[オートスポーツweb 2025年08月22日]