
専業主婦の投稿者さんのお父さんは末期の癌だそう。投稿者さんとしても何かやってあげたい気持ちはあるけれど、実母がいろいろと口を出してくることに辟易しているそうで……。
『母が「お父さんに〜してあげて」「あそこに連れて行ってあげて」などとうるさい。こちらにも都合があるのに、日程も勝手に決められている。その不満を伝えても「あなた専業主婦なのだから暇でしょう? お母さんは仕事があるから」と押しつけられ、我慢の限界です』投稿者さんの生活リズムも気持ちも無視され、「お父さんのために」と実母から義務のように要求される日々。しかも外出先は、野球やサッカー観戦、映画、演劇など、投稿者さんがまったく興味のないものばかり。交通費やチケット代も投稿者さんもちだそう。「お金をもらっても行きたくないくらい苦痛」とさえ感じてしまうのもムリはないでしょう。
なぜ実母が仕切ってくるのか
はじめにママたちから出たのは、「なぜ母親経由で指示がくるのか?」という素朴な疑問でした。実母が主導権を握り予定を決め、娘に実行させる……そのような構図に違和感を抱くママは少なくありませんでした。
『できる限り付き合うけれど、日程を勝手に決められるのは困る』
『お母さんが休みの日に連れて行ってあげたら? 連れて行くなら交通費もお母さんに請求すればいい。こちらにも生活費があるから、と言い返す』
『お父さんのためというより、お母さんがそうやって父と娘の時間を作ってあげている自分に満足するための予定だよね』
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お父さんの希望を尊重するべきでは?
ママたちが注目したのは、「お父さん本人が何を望んでいるのか」という根本的な問いです。
『私は父が末期癌と知らなくて温泉旅行に連れて行ったけれど、乗りものに乗っているだけでもひどく疲れるみたいだった』
『これは父親が喜んでいるか否かを確認することに尽きるのでは? 喜んでいるなら、「お父さんと直接相談しながらやるよ」と言えばいい』
『「親孝行させないと後悔する」とお母さんは焦っているようにも見受けられます。押しつけではなく、自分の思いやりの範囲内で親孝行されたらどうでしょうか。どうか後悔のないように』末期癌という状態だからこそ、貴重な時間をどう使うかは、お父さんの気持ちを最優先するべきです。さらに「自分が犠牲になっている」と感じながら過ごす時間は、親子双方にとって決して幸せではありません。あるママは、「お父さんと会ってお茶をするだけで、本人は十分かもしれないよ。少し話す時間が嬉しいってこともある」と言います。ムリをして疲れ果てた父と、イヤイヤ付き合わされてイライラする娘。実母の「よかれと思って」が招いた悲劇とも言えます。
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自分のできる範囲で。親孝行に「強制」はいらない
親孝行とは「心からの思い」であって、強制されるものではない……ママたちの意見がそこに収束していきました。
『自分のできる範囲のことをしてあげればいいと思います。末期癌は病状が突然変わるので、まだ動けるうちに……』
『父親孝行は別の形でもできます。我慢しすぎると憎しみが生まれます。それは父親も望まないはずです。仕事を優先する母親は無視です』
『私なら、こちらからやってあげたいことを提案して、都合のいい日を選んでもらいます。末期癌ならこちらも覚悟を決め、負担が少ないやり方で一緒の時間を過ごすことをオススメします』なかには「父親が好きだから付き合う」というママもいます。でもそれは、自分の気持ちがベースにあるから。好きでもない趣味に気乗りしないまま付き合わされ、しかも費用まで自腹という状況は、ママたちにとって納得しがたいものでした。
もしあなたなら、我慢して付き合いますか?
ママたちは、「ムリな親孝行は、誰も幸せにしない」と言います。本当に親のためを思うなら、投稿者さんは自分の生活や気持ちを無視されている現状を見なおす必要があるのではないでしょうか。投稿者さんの実母は、お父さんのために何かをしてあげたいという気持ちがあるのでしょう。でもその思いを、自分では実行せずに娘に丸投げしてしまっているところに、すれ違いが生まれているようです。実母の言葉には命令のような響きがあります。けれど親孝行は誰かが「こうすべき」と決めるものではありません。投稿者さんが納得しないままの親孝行は、心をすり減らすだけです。
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文・岡さきの 編集・佐藤さとな イラスト・加藤みちか