24号車との接触後にクラッシュしたAstemo CIVIC TYPE R-GT(塚越広大/小出峻) 2025スーパーGT第5戦鈴鹿
8月24日に鈴鹿サーキットで行われたスーパーGT第5戦。レースは2番手スタートのMOTUL AUTECH ZがピットタイミングでARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT16号車を逆転、ニッサンZが今季初の優勝を飾った。
300kmレースながらセーフティカー1回、フルコースイエロー(FCY)2回とやや荒れた展開となったが、その裏ではどんなことが起きていたのか。ここではクラッシュ、アウトラップ、ポジションダウンなど、気になるレース内容があったGT500の4人のドライバーに話を聞いた内容をまとめてお届けする。
■三宅淳詞(Niterra MOTUL Z) 3位
サクセスウエイト12kgと軽量な状態で今ラウンドに臨んだ佐々木大樹と三宅。予選では僚友23号車に続く3番手を獲得し、決勝前半ではポジションをキープ。ピットインのタイミングは前の2台が入った翌周となる19周目。後半を託された三宅は、いきなり大勝負の局面を迎える。
23号車は、ポールスタートのARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT16号車をピットで逆転したが、コールドタイヤの三宅がピットアウトしたのはこの2台の間。背後からは16号車の佐藤蓮が迫っていた。
「もうアウトラップ勝負、むしろそこに賭けていたところもあったので気合いも入れていましたし、クルマのセットアップ的にも、選んだタイヤ的にもウォームアップは良かったので、そういうところに助けられてのポジションキープだったかなと思います」
「本当は23号車の前に出ているつもりだったんですけど、ピューっと行ってしまって。『これはマズいかな』と思ったのですが、意外と16号車はまだ来ていなかった。フリー走行とかウォームアップ走行の感覚からいくと、『これぐらいの距離なら抑えられるだろうな』と思いました。気持ちで負けないように心がけましたね」
テクニカルな東コースをしのぎ切って、デグナーカーブを迎えたあたりでは、リヤタイヤも完全に発動。「フロント(のグリップ)はちょっと来なかったですけど、ちょうどトラフィックとなるGT300もいなくて僕としては結構自由に動くことができて、そういう意味では運も良かったんじゃないかなと思います」。
「ただ、僕らのあとにピットインした14号車(ENEOS X PRIME GR Supra)が前に入ってきたので、最初は『あれ? ポジションダウンしたのかな?』と思ってしまったのですが、普通に彼らが速かっただけでした。もう、異次元に速かったですね」
ENEOS X PRIME GR Supraのサクセスウエイトは67kg。その14号車はやがて三宅の視界から小さくなり、首位23号車を追っていったが「ウエイトに差があるなかで負けていたのは、ちょっと悔しい」と、三宅。
「次戦もまだそこまで重たくはないと思いますし、次のSUGOは本当に勝負になると思います。気合いを入れて頑張ります」
■平峰一貴(TRS IMPUL with SDG Z) 8位
ベルトラン・バゲットが5番手からスタート。表彰台圏内を睨んでレースを運んだ12号車TRS IMPUL with SDG Zは、ミニマム周回数となる18周でピットへ。後半のロングスティントを平峰が託された。
全車がピット作業を終えた段階では5番手。しかし残り数周で迎えたFCY(フルコースイエロー)明けから、ずるずるとポジションを下げてしまう。
「ちょっと(マシンの)バランス的に苦しんでしまいました。ドライバーとしても、もうちょっと速さを引き出したかったんですが、苦しかったです」
前日の予選Q1では平峰自身がトップ通過を果たすなど、一発の速さは示せたレースウイークだったが、課題は決勝でのセットアップにある模様。平峰も「予選までは良かったんですけど……」と首をひねる。
「レースに対して合わせきれていなくて、そこが僕のスティントになって、より厳しくなってしまったかな。(後続を)ブロックしまくって、1台でもなんとかしたかったんですけど、ちょっとうまくいかなかった。今回は、しょうがないです」と、予選と決勝でのまったく異なる手応えに、落胆している様子だった。
■牧野任祐(STANLEY CIVIC TYPE R-GT) 10位
予選Q2では山本尚貴の走路外走行もあり、10番手スタートとなった100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GT。こちらも12号車と同じく、最短となる18周で山本から牧野へとドライバー交代を行った。
「まったく勝負にならないな、という感じで。選んだタイヤはピークは出るものだったのですが、その分レースはちょっと厳しくなるのかなと思っていたら、実際その通りな感じでした。僕に代わって最初の2〜3周は良かったのですが、そのあとは摩耗的にも厳しく、ずっと右側はピックアップもしていたので、ペースが上げられませんでした」
牧野はまた、サクセスウエイトが100kgで燃料リストリクターが3段階絞られている1号車au TOM’S GR Supraとの直線スピード差でも、厳しいものがあったと指摘。ウエイト52kgの100号車は燃料リストリクターによる規制はまだ1段階目だ。
「(1号車に対しても)正直ストレートでまったく追いつかなくて。逆に後ろから39号車(DENSO KOBELCO SARD GR Supra/SW48kg)が来たときは、もう何も太刀打ちできない状況でした。かなり厳しいレースでしたね、今日も」
ピットストップで1号車に逆転された状況も引き合いにしながら、牧野はメーカー間の勢力図を現実的に捉えており、「残り3大会でチャンピオンが狙えるのかと言ったら、それは無理に等しいと思う。それくらい、圧倒的に総合的な差はあるのかなと思う」と語る。
「もちろん諦めていませんし、残りのレースでどこまで自分たちがやれるのか次第ですが……状況はかなり厳しいかなと思います」
■小出峻(Astemo CIVIC TYPE R-GT) リタイア
14番グリッドから17号車Astemo CIVIC TYPE R-GTのスターターを託されたルーキーの小出。しかし、そのレースは4周を完了する前に終わってしまった。目前には、2周目の130Rでコースを飛び出し、順位を大きく下げた24号車リアライズコーポレーション ADVAN Zがいた。
「あの周、130Rで24号車がミスをしていて。それが結構大きなミスだったので、失速していたところを、(自分は)普通にアクセル全開で130Rいって。そのまま(Astemoシケインに向けて)左側に並ぶしかないという状況で、並んでブレーキをしている途中で、24号車がかなり外側の方へ寄ってきて。それで当てられて、そのまま左側のランオフにはみ出してしまったという形です」
小出の17号車はグリーンにはみ出したことで充分に減速することができず、そのままバリアへとクラッシュした。衝撃は小さくなさそうに見えたが、身体は無事だという。
「意外とウレタン(バリア)、しっかりしているな、って。まぁ実際、アドレナリンも出ていたと思うのですが、いまのところ身体は全然大丈夫です。クラッシュしてしまったのは残念ですが、あれをやられてしまうと行き場もないので……悔しいですね」
この接触では、24号車側にペナルティが科せられている。
[オートスポーツweb 2025年08月24日]