ポールスタートから見せ場を作れず。防戦一方になってしまった16号車ARTAとホンダ陣営に漂う重い空気感

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2025年08月24日 22:30  AUTOSPORT web

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スタート直後はギャップを広げたものの、すぐに2番手に追いつかれてしまったトップのARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GT#16
 スーパーGT第5戦鈴鹿、GT500クラスでポールポジションを獲得し、GRスープラの今季全勝をストップする最右翼と見られていた16号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTだったが、4位に終わり、表彰台をも逃す結果となってしまった。予選での速さがありながら、決勝では何が起きていたのか、レース後に聞いた。

 レーススタート直後から2番手の23号車MOTUL AUTECH Zを引き離しにかかった16号車ARTA、スタートの第一スティントを担当した大津弘樹が振り返る。

「タイヤ的にはたぶん、僕らは23号車よりも柔らかいタイヤを装着していたので、序盤でできるだけマージンを築いて、スティントの後半はおそらく23号車の方が強いかなと思っていました」と大津。

 実際、スタート後の数周に大きく2番手23号車とのギャップを広げることに成功したが、数周でその状況が逆転してしまう。23号車のラップタイムが上回り始めたのだ。

「セクター1は調子良く走れるのですけど、セクター3、セクター4で結構、差を詰められて、何度かその次の1コーナーでオーバーテイクされそうになってしまいました」と大津。

 その直後に後続のGT500のクラッシュがあり、セーフティカーが導入され、2台のギャップはいったん、リセットされることになった。

「タイヤ的にもコンディション的にも、内圧がドンピシャに合ってきてペースもこれから上げられるかも、というところでのセーフティカーでした。もっとマージンを築けたはずだったかなという手応えもあって、イチからギャップを築こうと思ったのですけど、たぶん他車と比べたら速かったとは思うのですけど、23号車のペースに対してはちょっと防戦一方という感じでした」

 それでもなんとかトップを守っていた16号車ARTAは、レースの3分の1を過ぎたいわゆるミニマム周回数のタイミングでピットイン。そこで2番手の23号車MOTULと同時ピットの争いとなった。16号車ARTAは特に大きなミスがあったわけではないが、結果的に23号車MOTULが前に。ピット位置が前の100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GT、後ろのModulo CIVIC TYPE R-GT号車Modulo CIVIC TYPE R-GTと同じタイミングでピットインしたことから、若干、お互いが干渉してしまった部分があったのかもしれない。

 大津から乗り替わった16号車の佐藤蓮は、アウトラップの翌周にも1周遅れてピットインした3号車Niterra MOTUL Z、そしてその後の14号車ENEOS X PRIME GR Supraにもオーバーカットされ、4番手までドロップしてしまった。佐藤蓮がその状況を振り返る。

「ピットでのタイヤ交換のロスはなく、みんなうまくこなしてくれたのですけど、他車に比べるとちょっと給油時間が長かったのが原因かなとは思いますね。それで3号車(NiterraZ)にも先行されてしまった。そこからはやはりダウンフォースをつけていた(セットアップ)というところで、ちょっと前のクルマを抜くチャンスはなかったかなと思います」(佐藤)

 シビック・タイプR-GTは単走に比べて、前のクルマの後に付くとダウンフォースが抜けて近づきにくくなるという症状を訴えるドライバーの声が他メーカーよりも多い状況だった。今回の16号車ARTAも同様だったようだ。

「特にダンフォース依存が強いクルマなので、前のクルマの後ろ走ると近づけないですし、ストレートもライバルに比べて速い部類ではないので、やはり、先行していないと厳しいかなと思います」(佐藤)

 結局、16号車は後半スティントで4番手のまま順位を上げることができず、4位でフィニッシュ。サクセスウエイトがもっとも軽く、ポールからのスタートという絶好のチャンスだっただけに、大津、佐藤のレース後の落ち込みも大きかった。

「ボールを獲って、今日は優勝しか見ていなかったですし、チーム的にもミスなく、いい仕事してくれたと思うのですけど、それが結果につながらなかったのが本当に悔しい。ただ、僕たちの中で今回、結構トライしたことがいろいろあって、それがいい方向に行ってポールも獲れた。その精度を上げていけば、今後もいい戦いができるんじゃないかなと思うので、次に向けてしっかり準備していきたいですね」(大津)

「今回は勝ちに来ていて、そこでちょっとしたことで逃してしまった。まだチャンスはあると思うので、この悔しさを次のSUGOで晴らせるように頑張りたいと思います。クルマ、タイヤのフィーリングはいい部分が多くありましたし、今までに比べると拡段に良くなっています」(佐藤)

 大きなミスがあったわけではなく、ポールからスタートして、ニッサン陣営に力負けのような状態になってしまった16号車ARTA。ドライバーのふたりはなんとか次に期待を託すが、ホンダ・シビック勢としては今回の鈴鹿は厳しい戦いになってしまった。

 路面温度が52度の暑い気温でダウンフォースが厳しくなるコンディションの中、中高速コーナーの多いホームコースの鈴鹿でニッサンZだけでなく、サクセスウエイトの重いGRスープラにも先行される結果となり、レース後のホンダ陣営内には重い空気が漂ったままだった。

[オートスポーツweb 2025年08月24日]

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