翔田千里2005年8月、35歳でセクシー女優としてデビューした翔田千里さんは、2025年でデビュー20周年を迎えます。
そこで改めて、デビューのきっかけやセクシー女優のお仕事に関しての考え方、ファンとの関係などをうかがいました。長くセクシー女優を続けてきた翔田さんだからこそ感じる「業界のターニングポイント」など、ほかでは聞けない話も満載です。
◆子どもの学校行事に参加する時間を作るために転職
――翔田さんはデビュー当時、35歳。シングルマザーで息子さんもいたわけですが、デビューのきっかけはなんだったんですか?
翔田千里(以下 翔田):渋谷で友達がスカウトされて、デビューしたのがきっかけです。
彼女も私と同じシングルマザーで、デビュー後にランチしたときに仕事について楽しそうに話してくれたんですよ。
――デビューする前には、人材派遣会社の正社員だったんですよね?
翔田:はい。でもデビュー前には会社は辞めて、ケアマネージャーの学校に通っていました。
息子が小学校に入学するタイミングで、前職は辞めたんですよ。シングルマザーで正社員だと、なかなか学校行事に参加できないので。
だから、時間の融通が利く仕事に転職したいと考えたんです。ちょうどそのタイミングでセクシー女優の仕事を知り、興味をもつようになりました。
◆1本だけ体験して、イヤだったら辞めればいい
――ケアマネージャーからセクシー女優とは、大胆な方向転換ですね。
翔田:友人がたまたまデビューしたのがきっかけなので、本当に偶然の流れなんです。でも、すぐ応募したんじゃなくて、自分なりに事務所のことを調べよう、と思って。結局、興味を持ってからデビューするまでは半年くらいかかりました。
大手の事務所を選んで面接を受けたんですが、まだそのときは「1本だけ体験して、イヤだったら辞めればいい」みたいなノリだったんですよ。
――それまで、性的なお仕事とは無関係の業界で働いていた翔田さんにとって、撮影は恥ずかしくなかったですか?
翔田:デビュー作は、私のこれまでの人生をなぞるドキュメンタリー的な作品でした。恥ずかしい……よりも「面白くないな」って(笑)。
――意外な感想ですが、面白くない、とは?
翔田:撮影って、もっとお芝居をするものだと思っていたんですよ。出演者とスタッフで作品を作り上げていく、みたいな感じで。だから、素の私を記録するドキュメンタリーは「なんか違う」って思ってしまったんですよね。
でもそのあと、ドラマ作品を撮影するようになってから、どんどんお仕事が楽しくなりましたね。20年も続けちゃうくらいに(笑)。
◆「バレる」なんてまったく考えてなかった
――デビューに関して、周囲から反対されませんでしたか?
翔田:いや、もうそのとき、私は35歳ですからね。35歳の人間が自分で決断したこと、自分で責任を取っていくことだから、他人が反対する理由もないですよね。
前職の会社の人も、家族も、子どもの父親も、私の仕事のことはみんな知っていますし、反対はありませんでした。
――デビューがお子さんが小学校に入学するタイミングだったのは、気になりませんでしたか?よく世間では「子どもがイジメられたらどうするんだ」などと言われますが。
翔田:仕事のことがほかの人にバレたら、ってことですよね。そもそも私、バレるなんてまったく思っていなかったです。
だって「熟女」って当時はマニアックなジャンルでしたし、よっぽど好きな人が作品を見て、私を実際に見ても「あ、翔田だ」なんて気付かないですよ。
そもそもお仕事のときとプライベートでは、全然違いますし。私、すごく特徴があるわけでもないから、普段は周囲になじんじゃうんで、まずバレません(笑)。
――実際はそんなものですよね。
翔田:仲のいいママ友には、お仕事のことも話していますし。家にも息子の友達がバンバン遊びに来ていましたしね。私の仕事が原因で学校でトラブルになる、なんてことはなかったです。
◆「熟女」がメインジャンルになるまで
――「熟女はマニアックなジャンルだった」とのことですが。現在はすっかり、メインジャンルになりましたよね。
翔田:そうですね、ちょうど私がデビューした頃から、コンビニの成人雑誌でも熟女が取り上げられるようになって、熟女メーカーも増えてきて、という流れはありましたね。
でも「熟女の人気が上がった」って言うより、ユーザーさんの年齢が上がって「同年代の女優さんが見たいな」と考えた結果、熟女ジャンルの売り上げがアップしたんじゃないかなって思ってます(笑)。
――翔田さんは、ファン歴が長い方も多そうですよね。
翔田:ファン層に入れ替わりはありますけど、デビュー当時からずっとファンでいてくれる方もいますね。でも20年も活動していると、体調を崩したりしてだんだんイベントに来られなくなる方もいて、寂しいときもあります。
――ちょっと切ない話ですね。でも若いファンの方も増えているんじゃないですか?
翔田:これは「熟女女優あるある」みたいなんですけど。50歳を過ぎると、20代のファンが一気に増えるんですよ。私も、息子よりも年下のファンが増えて、ちょっと心配してます。
――心配、ですか?
翔田:だって、下手したら自分の母親と年が変わらない私を、性的な目で見ているんですから。「お母さんみたいに思っている」とは違うので、違和感はありますよ。でもそういうお仕事をしているんですから、仕方がないとも思いますけど(笑)。
◆2011年は業界的なターニングポイントだった
――最近は、女性に甘えたいと言うか、リードされたい男性も増えていますしね。
翔田:そうですね、女性が男性を責める「痴女作品」が増えているのも、その影響かもしれませんね。
そう言えば、昔は「女の子が陵辱される」みたいな内容の作品が多かったんですけど、内容的にも明るい作品が増えてきていますね。
ジャケット写真も、女優さんが笑顔で写っているものが増えているんです。これは2011年の東日本大震災以後からの傾向だと思います。
――世相が暗い内容の作品よりも、明るい作品を求めだしたってことですかね。業界的には、2011年がある意味ターニングポイントになっている、と。それは初めて聞いた話です。
翔田:ドラマ作品なんて、女優さんが哀しい顔しているとか、目線をカメラから外してうつむいているとか、そういうジャケットばっかりだったんですよ。だから、2011年がターニングポイントだったんじゃないかって、個人的には思っています。
◆TikTokやライブ配信も頑張りたい
――翔田さんはこれから、挑戦したいことはありますか?
翔田:去年から、TikTokを始めたんです。でも有効活用できていなくて、それなのに1万9000人近くフォロワーさんがいて、申し訳なくて。
いろんな人に「なにをすればいいですかね?」って相談したら「ライブ配信してみたら?」と言われたので、8月からライブ配信も始めます。イベントに来られない方や海外のファンの方にも喜んでもらえるかな、と。
――そうやって、どんどん新しいことにチャレンジするのは、お若い証拠ですね。
翔田:でもアナログ人間ですよ(笑)。TikTokでは、映画とか音楽とかアートとか、自分の趣味をどんどん出して配信していこうと思っています。アダルト方向じゃなくて、ファンの人と一緒に楽しめる配信がしたいですね。
――ほかにやってみたいことはありますか?
翔田:うちの事務所は熟女女優さんが多いんですけど、みんなでイベントをやりたいなって思いますね。昔はトークイベントやファンの方との触れ合いイベントがあったんですけど、新型コロナで大勢集まるイベントはできなくなってしまったので。
新しいファンの方も増えてきていますし、また大人数のイベントを開催したいです。
――ファンに喜んでもらうための目標ばかりなのが、翔田さんらしいですね。
翔田:ファンの方には感謝しかありませんから。ぜひこれからも応援していただけたらうれしいですね。
<取材・文/蒼樹リュウスケ 写真/杉原洋平>
【蒼樹リュウスケ】
単純に「本が好きだから」との理由で出版社に入社。雑誌制作をメインに仕事を続け、なんとなくフリーライターとして独立。「なんか面白ければ、それで良し」をモットーに、興味を持ったことを取材して記事にしながら人生を楽しむタイプのおじさんライター