<寺尾で候>
日刊スポーツの名物編集委員、寺尾博和が幅広く語るコラム「寺尾で候」を随時お届けします。
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熱狂する甲子園を眺めながら、今シーズンの阪神優勝がもたらしたものを考えていた。これでクライマックスシリーズ(CS)の仕組みが議論されるのではないだろうか。
阪神は2位巨人に17ゲーム差をつけてゴールインした。しかも、他の全5球団が借金を抱えるペナントレースは異常と言うしかなかった(8日現在)。
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これまでもCS改革を唱えてきたが、球界が踏み切ることはなかった。しかし阪神がぶっちぎって優勝したことで、改めてCSの存在意義が問われている。
今後は3位以内を狙うチームによる戦いが繰り広げられる。阪神と20ゲーム差以上引き離された中日、広島が勝ち上がって日本一をかけて戦う可能性も出てくるわけだ。
優勝インタビューに臨んだ監督の藤川球児は「143試合の競技でペナントをとるその1チームだけがチャンピオンです」と強調し、CSは「別のステージ」と位置づけた。
ただシーズンを戦い抜いたチームが、下位チームに足をすくわれる“下克上”に幾度も出会った。むなしさが残って、ペナントレースの価値観が宙に浮いたようでもあった。
「球界再編」を契機に導入されたCS制度。07年は落合博満が率いた2位中日がリーグ優勝の巨人に勝って、日本シリーズでは日本ハムを下して頂点に立った。
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10年のパ・リーグは、3位ロッテが西武、ソフトバンクに勝った後、セ・リーグ1位の中日を日本シリーズで4勝2敗1分けで退けた。
また17年の広島は2位阪神に10ゲーム差、3位DeNAに14・5ゲーム差をつけて2年連続優勝を果たすも、CSファイナルでDeNAにあっさり敗れた。
実は当時、セ・リーグ内では真剣にCSルール変更が話し合われている。しかし結局は6球団がまとまらず、パ・リーグの同意も得られなかった経緯があった。
これまでゲーム差によってCSファイナルの1勝のアドバンテージをさらに上げる、また「セ・リーグ1位−パ・リーグ2位」「パ・リーグ1位−セ・リーグ2位」の“たすき掛け”の試合形式案なども遡上(そじょう)に載った。
さて、ここからこれだけ大差のついた2位以下のチームのCS争いは、どういう盛り上がり方をするのだろうか。
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一方、CSファイナルまで1カ月間以上もある阪神では、せっかくの野球日和なのに、試合でなく黙々と練習をする、もったいない風景に出くわすことにもなりそうだ。
そもそもCS制度導入の大きな目的は、消化試合が減少することで、球団がビジネス的メリットを得ることだった。そのため現状で経営サイドに、CS撤廃は選択肢にない。
いずれにしてもモデルチェンジの必要性に迫られているのは確か。本来はセ・パ両リーグが歩調を合わせるべき。今度ばかりは、パ・リーグが賛同しなくても、セ・リーグは本気度を示すのかもしれない。【寺尾博和】
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