<陸上:世界選手権>◇第2日◇14日◇東京・国立競技場発着◇女子マラソン(42・195キロ)
早大のサークル「早稲田ホノルルマラソン完走会」出身の小林香菜(24=大塚製薬)が、7位入賞を果たした。日本勢最高の2時間28分50秒。同種目の日本人の入賞(8位以内)は、19年ドーハ大会7位の谷本観月以来3大会ぶりとなった。大学時代に部活に所属していなかった超異色の新星が、実業団入りからわずか1年半で世界の7位となった。
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日本橋の沿道とゴール地点の国立競技場で見届けた母・美絵さんは「うれしかったです」と3姉妹の末っ子の激走をたたえた。
4年前は世界で7番目になるとは想像できなかった。「普通の大学生でした」。法学部で授業を受け、ドラッグストアでアルバイトをしていた。
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ただ、好きなことはとことんやり抜く性分だった。「昔から走りすぎちゃって」。大学3年生のころには、授業の合間に自転車で30分かけて杉並区の和田堀公園へ行き、1人で練習をしていた。
「サークル時代は朝も走って、夕方も走って、ご飯もつくって、授業も出て、バイトに行って、本当に大変そうでした」
食事にも気をつかい、忙しない中でも栄養バランスを考えながら自炊を続けていた。その姿を見た美絵さんが「面倒くさいなら買ってもいいんじゃない?」とコンビニの手軽なご飯を勧めた時も「コンビニのご飯じゃダメなんだよ。バランスを考えないといけないから」と譲らなかった。
ちょうどそのころに、実業団で本格的に競技をしたい旨を伝えられた。国家公務員試験の塾にも通っていたが「こんなに好きだったら、実業団に入ることを応援してあげたい」と背中を押すようになった。
「『なんでそんなに頑張るの?』『休んだら?』と言っても『やらなきゃ!』と言って、一生懸命に頑張っていました。実業団に入れば、練習環境や指導者の方もいらっしゃるので、そのほうがいいのかなと応援するようになりました」
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複数の実業団に電話やメールで売り込み、大塚製薬には河野匡監督に直談判して内定をつかみとった。
昨春から実業団の所属となり、徳島を拠点に練習する日々。高度な内容に「厳しい」ともらすこともあったが、「辞めたい」という言葉は1度も口にしなかった。
美絵さんは今大会前も「頑張ってね」とは声をかけなかった。「本人が頑張っているのは分かっているので」。だからこの日も、沿道からは「マイペースで、楽しんでね!」とエールを送った。
それに応えるように、初めて日の丸を背負った小林は堂々と入賞を飾ってみせた。「普通の大学生」は4年の月日を経て、世界の7番目になった。
美絵さんは初の世界大会を戦い抜いた愛娘へ「お疲れさま、と声をかけてあげたい」と優しそうに笑った。
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