2025年鈴鹿1000km 130Rでクラッシュを喫したマエザワ・レーシングの555号車フェラーリ 9月14日(日)、三重県の鈴鹿サーキットでIGTCインターコンチネンタルGTチャレンジ第4戦『第49回鈴鹿1000km』の決勝が行われ、チームWRTの32号車BMW M4 GT3エボ(ラファエレ・マルチェッロ/ケルビン・ファン・デル・リンデ/シャルル・ウィーツ)がポール・トゥ・ウインを飾った。ここでは決勝日の各種トピックをお届けする。
■BMWとポルシェに「一度も戦えなかった」とメルセデス勢
第49回『鈴鹿1000km』は、6時間30分のレース時間中に170周を走行し、1000km到達に必要な距離に3周足りなかった。リードラップカーの実際の走行距離は987.19kmだった。
ファン・デル・リンデとマルチェッロは、鈴鹿で2度目の優勝を果たし、ウィーツは初優勝を飾った。さらにチームWRTは、2019年のアウディR8 LMS GT3エボでの優勝に続いて連勝を達成した。
チームWRTの31号車BMWをドライブしたアウグスト・ファーフスは、鈴鹿初参戦のマックス・ヘッセとダニエル・ハーパーとともに参戦して6位となったが、優勝した姉妹車のペースに追いつけなかった理由について、明確な説明ができないと語った。
ファーフスはSportscar365に対し、「難しい週末だった。最高速度が落ち、バランス調整に苦労した。チームは理解しようと多大な努力を払ってくれたが、ホームから遠く離れていることもあってレースに必要なリソースが不足していたと思う。解決に至らず、本当に残念だよ」と語った。
メルセデスAMG・チームGMRの888号車メルセデスAMG GT3エボをミカエル・グルニエ、ルカ・ストルツとともにドライブしたマキシム・マルタンは、この週末のメルセデスAMGはBMWとポルシェに対して「一度も戦えなかった」と述べ、とくに直線速度の不足を弱点として挙げた。
ベルギー出身のマルタンは「我々のマシンでは、オーバーテイクは不可能だった。直線速度がまったく足りなかった。マシン間の速度差はまるで冗談のようだったよ。序盤は暑さの影響もあったようだが、ポルシェはレースを通して速くなっていき、BMWは最初から最速だった」と語った。
■中国のGT3ドライバー3名が予選で活躍
メルセデスAMG勢で2番目に良い順位(総合10位)だったメルセデスAMG・チーム・クラフト・バンブー・レーシングの77号車メルセデスAMG GT3エボ(太田格之進/マキシミリアン・ゲーツ/ラルフ・アーロン)は、残り1時間でエアコンユニットの故障によりペースダウン。最終スティントを担当した太田は、フィニッシュまでに脱水症状に陥った。
太田は今週末、アメリカのインディアナポリスで開催されるIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の第10戦『バトル・オン・ザ・ブリックス』に、アキュラ・メイヤー・シャンク・レーシングから参戦する予定だ。
5台出走したフェラーリ296 GT3は、レース中さまざまなトラブルに見舞われていた。トップとなったのは、6番手からスタートしたハーモニー・レーシングの21号車フェラーリ(ダスティン・ブラットナー/デニス・マーシャル/ロレンツォ・パトレーゼ)で、22位フィニッシュとなった。これは、最初のピットストップでホイールナットの固着により数周遅れとなったためだ。
K-チューンズ・レーシングの98号車フェラーリ296 GT3(山脇大輔/高木真一/ショーン・ウォーキンショー)は、終盤にオイルタンクの亀裂を修理するためにピットロードで1時間41分を費やし、28位で完走した。唯一、これより短い距離を走行しながらも完走扱いとなったのは、マエザワ・レーシングの555号車フェラーリ(前澤友作/横溝直輝/トーマス・ノイバウアー)だったが、横溝がドライブ中の119周目に、130Rで98号車フェラーリから漏れたオイルに乗ってクラッシュしてしまった。
アウディの唯一の代表車、アウディスポーツ・アジア・チーム・ファントムの14号車アウディR8 LMS GT3エボII(クンフー・チェン/ユー・クァイ/デン・イー)は、グリッド3番手からスタートしたが、わずか113周しか周回できず、完走することはできなかった。これは、順位確定に必要な最低周回数119周(優勝者の70%)に6周足りない周回数だった。これは、燃料漏れとみられる原因によるピットロードの火災で、レース序盤に2時間近くピットインしていたことによるものだ。
アウディ・スポーツ・アジアのカスタマーレーシング責任者であるアレクサンダー・ブラッキーは「鈴鹿1000kmで世界のトップドライバーたちと対戦するために、中国を代表するGT3ドライバー3名を起用したのは、彼らが誰とでも互角に戦えると確信していたからだ。3人は予選でそのことを証明し、3番手を手にした。しかし決勝では運に恵まれず、彼らに責任はないものの敗退した」と語った。
■日本チームのトップはポルシェセンター岡崎
予選で日本勢トップの7番手を獲得したチーム5ZIGENの500号車ニッサンGT-RニスモGT3(金丸ユウ/青木孝行/元嶋佑弥)は、最終スティントを金丸が担当していたが、グッドスマイル・レーシングの00号車メルセデス(谷口信輝/片岡龍也/小林可夢偉)に乗る小林に追突されたものの最悪の事態を免れた。
2台はそれぞれ15位と16位でフィニッシュし、日本勢最上位となったポルシェセンター岡崎の18号車ポルシェ911 GT3 R(992)(永井宏明/小高一斗/篠原拓朗)に次ぐ、日本チームのなかで2、3番目のポジションでレースを終えた。
ポルシェセンター岡崎でドライブした小高は、GTワールドチャレンジ・ヨーロッパのニュルブルクリンクラウンドを欠場することとなった怪我から回復し、日本チームトップのフィニッシュに貢献できたことを喜んだ。
「必ずしも目標としていたわけではありませんが、5ZIGENとグッドスマイルには誰もが知っているドライバーがいるので、負けたくありませんでした。永井(宏明)さんは素晴らしい仕事をしてくれましたし、彼らに勝つことができて本当に嬉しいです」
チーム・ハンドワーク・チャレンジの30号車ニッサンGT-RニスモGT3(佐々木大樹/木村偉織/三宅淳詞)は、スーパーGTのGT500クラスドライバーであるの三宅の運転中に、突然のエンジントラブルに見舞われリタイアした。
ビンゴ・レーシングの9号車キャラウェイ・コルベットC7 GT3-R(武井真司/笹原右京/伊東黎明)に乗り、チームのオーナーでもある武井は、チームのキャラウェイ・コルベットは少なくともあと1レースは参戦する予定で、年末までにスーパー耐久に参戦する予定だと明かした。なお、このマシンのホモロゲーションはあと1年間有効であるため、来年には最後のレースを迎えることになるだろう。
笹原、武井、伊東とつないでいた9号車キャラウェイ・コルベットは、87周目のAstemoシケインで停止しリタイアとなった。マシンが完走できなかった原因は、ブレーキペダルの固着だと発表されている。
鈴鹿サーキットは、2日間の観客動員数が2万4000人で、そのうち決勝日に来場した人数は1万5000人だったと発表した。2019年の鈴鹿10Hの2日間の観客動員数は5万1000人、2018年の鈴鹿10Hは5万3000人だった。ただし、鈴鹿10Hの観客動員数は3日間で計測されていた。
[オートスポーツweb 2025年09月16日]