認知症になった祖母、不意に蘇った宝石への思い 孫が明かすトキメキの“1日”

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2025年09月16日 18:00  おたくま経済新聞

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認知症になった祖母、不意に蘇った宝石への思い 孫が明かすトキメキの“1日”

 認知症になって以来、かつて好きだった宝石への興味を失ってしまった祖母。しかしある夜急に起きてきて……。


 Xユーザーの「しぇりんこ」さんが投稿した、祖母とのエピソードが話題を呼んでいます。


【その他の画像・さらに詳しい元の記事はこちら】


■ 認知症で宝石への興味がなくなった祖母が、不意に「私も可愛い指輪が欲しいわ」

 しぇりんこさんはこのほどXに、右の薬指にアメシストの指輪をはめた祖母の画像とともに、次のエピソードを投稿しました。


「認知症になってから宝石に興味がなくなってしまった祖母。
ある夜、急に起きてきて『あんたの指輪、めんこいなぁ。私も可愛い指輪が欲しいわ』って言ってきて。
次の日に宝石店に行って、祖母が気に入ったのがこのアメシストの指輪。
何もかも忘れちゃっても、宝石にときめく瞬間ってあるんだね」


 もともと宝石が好きだったというしぇりんこさんのおばあさま。ブラウンダイヤやパール、カメオなどを大切にしていたそうです。


 こうした影響から、宝石に興味を持つようになったというしぇりんこさんにとっては、祖母は、祖母であると同時に大切な趣味仲間。かつては宝石の話をして盛り上がったり、一緒に展示会に出かけたりしたことも。


 「その度に祖母はブラックオパール、血赤珊瑚、タンザナイトなど、綺麗なジュエリーをお迎えしていました。どれも祖母のお気に入りのジュエリーです」(しぇりんこさん)


 しかしそんな2人を繋ぐ宝石は、おばあさまの認知症発症をきっかけに、共通のコミュニケーションの手段とは言えなくなってしまいました。


 2人の繋がりが1つ失われたことについて、「正直、寂しいな、と思っていました」と話すしぇりんこさん。


 宝石が好きだった祖母と、宝石仲間としての祖母。大切な2人を同時に失ってしまったような状況は、想像するだけで胸が苦しくなります。


 このままこの寂しさがずっと続くのかと思いきや、おばあさまはある夜にふと、宝石への興味を思い出すのです。それは認知症になって以来、初めてのことでした。


 当時のおばあさまの様子や、宝石店での様子など、しぇりんこさんに詳しくお話をうかがってみました。



■ アメシストの指輪を即決した祖母「綺麗だねぇ、綺麗だねぇ」

―― 宝石に興味がなくなってしまったおばあさまについては、どういったお気持ちでしたか?


<しぇりんこさん>
 正直、寂しいな、と思っていました。祖母が認知症になる前はよく宝石の話をして盛り上がっていたので。認知症になってからはあんまり興味を持たなくなってしまって、宝石仲間を1人失ってしまった気分でした。


―― おばあさまから「指輪、めんこいなぁ」と言われたのはその日が初めてだったのでしょうか?


<しぇりんこさん>
 祖母が宝石に興味を示したのは認知症になってから、その日が初めてでした。


 いつも私は指輪を付けていたのですが、祖母が寝たと思ったら突然起きてきて、「アンタのその指輪、めんこいなぁ」と言ってきたので、正直びっくりしました。同時にとても嬉しい気持ちになったのを覚えております。


―― 驚きと喜び、そうですよね。宝石店へ誘ったのはしぇりんこ様から?


<しぇりんこさん>
 宝石店に行こうと提案したのは私です。次の日に行こう、と言ったら祖母はすごく喜んでくれて。


―― どういった思いでお店に誘われたのですか?


<しぇりんこさん>
 再び蘇ってきてくれた祖母の宝石への興味を、祖母が覚えているうちに、指輪をプレゼントしたいと思ったからです。


―― おばあさまは久しぶりに宝石店を訪れたかと思いますが、お店ではどんな様子でしたか?


<しぇりんこさん>
 宝石店に行くと、祖母は目を輝かせて「ああ、綺麗な宝石がいっぱいだわ」と言っていました。あの時、祖母は少しだけ宝石が好きだった自分を思い出したのかもしれません。


―― アメシストの指輪は即決だったのでしょうか?


<しぇりんこさん>
 宝石店をぐるっと車椅子で回って、祖母はアメシストの指輪を「これがいいわ!」と即決しました。祖母は紫が好きだと言っていたので、アメシストを選ぶのは必然だったのかもしれません。


 祖母は何度も綺麗だねぇ、綺麗だねぇ、と言っていて、私がその指輪を購入し指に嵌めると「ああ、なんて綺麗なの。夢のようだわ、ありがとう」と少し涙ぐんでいましたね。


■ 残念ながら祖母はもうプレゼントの記憶はなく……それでも孫が「嬉しい」と話すワケ

 アメシストは「誠実」「心の平和」「真実の愛」といった意味の石言葉を持ちます。


 認知症で何もかもを忘れてしまった中でふと、かつての趣味を思い出したおばあさま。アメシストを即決したのは、そこに自分の宝石趣味の、本当に大切な“核”のようなものを見出したからなのかもしれません。


 残念ながらおばあさまは、今では指輪をプレゼントされたことは忘れてしまった様子。


 しかしたまにしぇりんこさんがアメシストの指輪をはめてあげると「あら!なんて可愛い指輪なの!これ、私にくれるの?」と毎回喜んでくれるそう。


 プレゼントを忘れられてしまったのは、一見すると寂しい結末のように感じますが、しぇりんこさんはおばあさまの反応を前向きに受け止め、こう結びます。


 「(祖母が喜んでくれることは)私にとって、とても嬉しいのです。何度もアメシストの指輪にときめいてくれるなんて、とても素敵で」



<記事化協力>
「しぇりんこ」さん(@molga_ame)


(ヨシクラミク)

Publisher By おたくま経済新聞 | Edited By YoshikuraMiku | 記事元URL https://otakuma.net/archives/2025091605.html

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