2025年WEC第6戦COTAで総合4位となった93号車プジョー9X8(プジョー・トタルエナジーズ)。姉妹車の94号車は3位表彰台を獲得した プジョー・スポールのテクニカルディレクター、オリビエ・ジャンソニは、2027年のWEC世界耐久選手権に向けて、現在の『プジョー9X8』に代わる新型マシンの製造が許可されるかどうかについて、レギュレーション策定者からの明確な回答を待っていると述べた。
ジャンソニは、サーキット・オブ・ジ・アメリカズで行われた今季第6戦『ローン・スター・ル・マン』に先立ち、WECのハイパーカーメーカーに追加のホモロゲーションを付与するか、あるいは来シーズン以降もさらなる“エボ・ジョーカー”の使用を許可するかについて、FIA国際自動車連盟とACOフランス西部自動車クラブが「今後数週間のうちに」結論を出すと予想していることを明らかにした。
雨の影響を受けたWECアメリカ・ラウンドは、昨年の改良以来『9X8』にとって最高のショーとなり、プジョーは総合3位と4位を獲得した。ステランティス傘下のこのブランドは、競争の激化するなかで新しいクルマを評価していることが知られている。
しかし、そのためにはFIAとACOの承認が必要だ。ここ数週間、すべてのLMH(ル・マン・ハイパーカー)/LMDhメーカーと統括団体が参加する協議が激化しており、ジャンソニは解決策が間近に迫っていると考えている。
「現在のところ、議論は非常に込み入っている」とジャンソニはCOTAで記者団に語った。
「今後数週間のうちに明らかになると思う。テクニカルレギュレーションは(2032年まで)延長された。このカテゴリーの創設初期から参戦している我々のようなチームには、何らかのかたちでマシンをアップデートする機会が与えられる必要がある」
「議論されているのは、少しだけオープンにしつつ、オープンにしすぎない適切なバランスを見つけることだ。そうすることで全体的なコストの増加を防ぎ、新規参入チームと長年参戦しているチームの間で公平性を保つことができる。もちろん、これは簡単なことではない。それが時間が掛かっている理由だ」
プジョーは、昨年投入された9X8の2代目モデルで苦戦しているにもかかわらず、WECに長期的に参戦したいという意向を以前から表明しているが、すでに2度目のホモロゲーション取得を済ませており、5つの“エボ・ジョーカー”もすべて使い切ったと考えられている。
ジャンソニは、サトリーを拠点とする同社は、白紙設計と現行9X8の追加アップデートの両方のコンセプトを「つねに評価」しており、レギュレーションが最終的に決定次第、すぐに対応する「準備ができている」と述べた。しかしSportscar365の質問に対し、彼はふたつの選択肢のどちらを好むかについては明言を避け、ルールが明確である必要性を強調した。
「私の考えは、それが何であれ明文化されたレギュレーションに基づいて行動することだ」とジャンソニー。「プジョーが100%避けなければならないのは、LMHレギュレーションの導入当初に我々に起こったこと。つまり、マシンの設計がすでに完了していた段階でレギュレーションが変更されることだ」
「難しいのは、ルールが誰にとっても完全に明確であることだ。それには時間が掛かる。規則は、何をしてよいか、何をしてはいけないか、ということが分かるものであり公平で一貫性のあるものでなければならない」
仮にプジョーが新型プロトタイプの開発を決定した場合、ジャンソニはLMDhプラットフォームよりも、LMHにこだわることがプジョーの優先事項であると示唆した。
「振り返ってみると今日に至るまで、なぜLMDhではなくLMHの規定を採用したのか、その理由を説明してきた」と彼は述べた。「これは、我々の中で変わっていない」
「実質的に唯一変わったかもしれないのは、LMHは技術的な野心という点で一般的により困難だと理解していることだ。イチから完全な車両を設計する必要がある。それはより複雑なプロジェクトだ」
「しかし、プジョーが耐久レースで実現したいマーケティングとポジショニングという観点理由は変わっていない。だから、私たちにとってLMHは最良のルールであると考えている」
ジャンソニはまた、LMHとLMDhのルールセットを2020年代末までに統合する提案についても意見を求められ、次のように答えた。この方針はポルシェのモータースポーツ責任者であるトーマス・ローデンバッハがとくに強く主張しているものだ。
「現在、我々はレギュレーションの進化について喜んで議論しており、すべてを統合する可能性もある。しかし、我々にとっての統合とは、LMDhへの移行を意味するわけではない」とジャンソニは語った。
「つまり、わたしたちは真の統合を目指し、その中間の何かを作り出すことを目指すということだ。問題は、いつそれが可能になるのか、そしてそれが実際に現実的かどうかだ」
[オートスポーツweb 2025年09月16日]