ヤマハV4エンジンに好印象。クアルタラロは「問題をすべて解決してくれると期待すべきではない」と喚起/ミサノ公式テスト

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2025年09月18日 16:50  AUTOSPORT web

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ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGPチーム)/2025MotoGPミサノ公式テスト
 9月15日、2025年ロードレース世界選手権MotoGPクラスのミサノ公式テストがイタリアのミサノ・ワールド・サーキット・マルコ・シモンチェリで行われた。ヤマハが実戦投入したV4エンジンを搭載したYZR-M1プロトタイプマシンは、レギュラーライダたちにどのような印象を与えたのだろうか。

 第16戦サンマリノGPではV4エンジンを搭載したYZR-M1プロトタイプマシンが初めて実戦投入され、テストライダーのアウグスト・フェルナンデスが走らせていた。決勝距離でのデータを収集するという参戦目的も達成し、テストライダーとしてしっかりと役割を務めただけでなく、決勝レースではポイントも持ち帰った。終了後には「V4エンジンのポテンシャルは確かにあるよ」とポジティブな印象を口にしていた。

 そしてレース翌日の9月15日(月)には、同地ミサノで公式テストが実施された。ヤマハ陣営はテストライダーは参加せず、レギュラーライダー4名のみがテストに取り組んだ。そのなかV4エンジンを搭載したYZR-M1は、ファビオ・クアルタラロ(モンスターエナジー・ヤマハMotoGPチーム)、ジャック・ミラー(プリマ・プラマック・ヤマハMotoGP)の元にそれぞれ1台ずつ用意されていた。

 今回のテストでV4エンジンを搭載したYZR-M1の試乗を熱望していたというクアルタラロとアレックス・リンス。走行が始まるといち早く乗り込んだのは、クアルタラロだった。フィーリングの確認、そして今後の開発に向けたデータ収集とチームにより多くのフィードバックを供給するべく、午前中は入念に走行。午後にはシーズン終盤戦に向けて2025年型ヤマハYZR-M1を走らせ、比較も行っていたようだ。終了後には次のようにコメントしている。

「このバイクはまだ開発初期段階だから、やるべきことはまだたくさんある。バルセロナ(のテスト)でのフィーリングとは全く違う印象だったけど、改善の余地はあると思う。V4エンジンへの適応は全く問題ないよ。ただ、このエンジンがすべての問題を一気に解決してくれると期待すべきではないと思っているんだ。セッティングやエレクトロニクスなど、調整が必要となる重要な部分もあるから今はその可能性を探っているところだよ」

 ポジティブな印象もあるようだが、V4エンジンのみに頼り切るのはよくないと警鐘を鳴らしている印象が伺える。そしてチームメイトのアレックス・リンスは、午前にクアルタラロがライドしていたV4エンジン搭載車両に午後から乗り込む形となった。午後は34周をこなして、比較テストを行っていた様子だが、彼もまたプラスな印象を抱いていた。

「新しいバイクの挙動にはとても満足しているよ。多くの良いところ、そして改善の余地も十分にある。ブレーキングの感触も本当に良かったよ。まだ『最終的な完成系のバイク』ではないけれど、次に新しいバイクに乗る頃には、多くのパーツが変わっているだろう。ラップタイムではかなり差をつけたけれど、V4エンジン搭載のプロトタイプはグリップも良好なんだ。正しい方向に進んでいるよ」

 そして、今回ふたりに加えてV4エンジン搭載車両のテストの機会が与えられたミラーは「とても興味深い経験だったよ。マシンの長所と短所の両方を理解し、長所を最大限に活かして短所を改善する良いテストとなった。僕たちは正しい方向に進んでいる」とポジティブな印象を口にしていた。

 また、続けて「順調に機能しているし、今年のYZR-M1と比べると、すでにいくつか進歩も遂げているから良い方向に向かっている。コーナーリングスピードが最大の強みだった旧型のYZR-M1から移行し、現在はジオメトリー、重量配分など、あらゆる面で新たなバランスを見つけようとしているんだ。マシンはあらゆる面で期待通りの性能を発揮していると思う。あとは時間が必要だ。まだプロジェクトは初期段階だからね」と語り、期待も膨らませている様子。

 今回のテストでの順位としてはリンスが17番手、クアルタラロが18番手で終えており、両者ともに採用されたベストタイムは現行のYZR-M1でマークしたものだと思われる。またプリマ・プラマック・ヤマハMotoGPとしてもミゲール・オリベイラが16番手、ミラーは19番手と下位に沈む形となった。ただ、今回はあくまでシェイクダウンおよび多くのデータを収集し来季以降に向けて改善し作り上げるのが目的だ。

 そのため、順位こそ下位を占めているものの、現時点でライダーたちはV4エンジン搭載車両に対してポテンシャルの高さは実感しているようだ。モンスターエナジー・ヤマハMotoGPチームのチームディレクターを務めるマッシモ・メレガリも「開発はまだ初期段階であり、ラップタイムをプロジェクトの進捗状況の客観的な指標として用いることはできない。今回のサンマリノGPとテストを客観的な視点から見ると、ベースマシンにはポテンシャルがあることは証明されている。得られた知見に基づいてプロトタイプを調整し、さらに開発を進めていく必要がある」と口にしていた。

 注目を集めているV4エンジン。改善の余地は十分にありそうだが、ライダーたちが口を揃えてポジティブな印象を語っているだけに、今後に向けても期待ができそうだ。今後どのように改善され、真の戦闘力がいつ発揮されるのか今後の動向にも注目していきたいところだ。

[オートスポーツweb 2025年09月18日]

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