山岳遭難が過去最多…要救助者に多い“軽装登山”“写真映え” 東京消防庁の山岳救助隊に密着【Nスタ解説】

1

2025年09月18日 22:16  TBS NEWS DIG

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

TBS NEWS DIG

TBS NEWS DIG

警察庁によると、今年7月と8月に全国で発生した山岳遭難は、発生件数、遭難者数いずれも統計が残る1968年以降で過去最多となりました。

【写真で見る】「要救助者、移動不能」急斜面での過酷な訓練

東京消防庁の山岳救助隊、その過酷な訓練に密着しました。

「メインロープ赤?」「白が?」救助活動訓練で“大きな課題”

取材したのは、奥多摩や八王子など、4つの消防署に配置されている東京消防庁の山岳救助隊です。技術力を統一するため、資格化されました。

現役の消防官たちが、資格取得を目指し、7日間にわたる訓練を受講します。

この日は、滑落した人の救出を想定した、最も本番に近い訓練が行われました。

整備された登山道を離れ、要救助者までの安全かつ最短なルートをたどります。

今回の訓練のポイントについて…

東京消防庁 渡邉政人 教官
「自分の行動だけに集中しないで、仲間や隊長の声にしっかり耳を傾けて、よりそれぞれが連携して活動ができるようなところ」

隊員どうしで声をかけあうことで、救助活動がスムーズにいき、さらに救助中に起こり得る事故も防ぐことができるといいます。

すると、「要救助者、発見!」との声が辺りに響きます。先に着いた隊員が要救助者の元へ。

しかし、その場所は油断したら滑り落ちてしまいそうな急斜面でした。

訓練生
「堀井主任、要救助者、移動不能」

すぐに体制を整える隊員たち。担架をおろすため、木にロープを巻き付けていきます。

今回の訓練のポイントでもある「コミュニケーション」をとるため、隊員の大きな声が響きますが…

教官
「メイン(ロープ)とバックアップ(ロープ)伝わってる?下に」

訓練生
「メイン(ロープ)が赤」
「メイン赤?」
「白がバックアップ(ロープ)」
「メインが赤?」

普段は別々の消防署で活動する隊員たち。いつも通りとはいきません。

東京消防庁 渡邉政人 教官
「上と下の連携というところで、さっきロープの使う色が違った部分がありましたので、そこはやはり共通認識を持てていなかったというのが次への大きな課題となります」

「隊長役中心に判断」 課題踏まえ、すぐさま訓練

その後、無事に搬送を終え1回目の訓練が終了。

課題を踏まえ、すぐさま2回目の訓練が始まります。

予期せぬ事故を防ぐこともできる隊員どうしのコミュニケーション。何をやっているかわかるように、隊員の声が響きます。

訓練生
「メインが?」
「白。黄色がバックアップ」
「よし」
「方向変えしましょう」

その様子を見た渡邉教官は、隊員どうしのコミュニケーションを評価しました。

東京消防庁 渡邉政人 教官
「下からの状況も、上にしっかり伝わっています」

意思疎通がとれたことで、先ほどより、安全なルートを選ぶことができました。

東京消防庁 渡邉政人 教官
「今そこにいる隊長役を中心に、判断した結果だと思います」

「“軽装登山”と“写真映え”での滑落が増加」遭難者数・件数ともに過去最多

井上貴博キャスター:
警察庁によると、2025年7月と8月に全国で発生した山岳遭難について、▼発生件数は808件、▼遭難者数は917人だということです。

いずれも統計開始の1968年以降で過去最多となりました。

急斜面を登る過酷さはもちろんですが、連携を図った訓練の状況は、なかなか見られないものでした。

山岳救助隊を取材 深瀬音々 記者:
今回、初めて登山をしましたが、「どんな山でも甘く見てはダメだ」と強く感じました。

今回は訓練の山なので悪路でしたが、皆さんがご存知の有名な山でも、一歩踏み外すと悪路が広がっています。

そういった環境で、「ケガをして動けなくなってしまったら」と思うと、改めて「舐めてはいけない」と感じました。

東京消防庁の渡邉教官によると、要救助者の中には、近年サンダルやヒールで登山をしてケガをした▼「軽装登山」、▼「写真映え」など撮影に夢中になって滑落してしまったケースが増えているそうです。

観光客が多い山は、一見簡単に登れそうで油断してしまいがちですが、そういう山だからこそ、気を引き締めなければならないと感じました。

井上キャスター:
比較的登りやすいと言われている高尾山もそうですし、一方で難しい富士山など、全国各地で遭難者が増えています。そういった状況から、「救助費用を自己負担にすべきじゃないか」と、各自治体で議論がなされています。

費用の問題ももちろんですが、それ以上に現場の皆さんが命がけで、救助してくださっていることも、どうにかお伝えできないものかと思いました。

陸上100mハードル 元日本代表 木村文子さん:
私も訓練している現場を初めて目にしました。普段一緒に働かれていない方たちが、連携を取ること自体難しいことだと思います。このような訓練に時間を費やしてくださっていることを再認識しました。

遭難したら地図アプリで「座標を」 どうやって?

深瀬音々 記者:
もし、遭難したり、ケガで動けなくなったりしたら、「とにかく躊躇せずに通報してほしい」と、東京消防庁の方は言っていました。

110番と119番がありますが、繋がった方にとにかく助けを求めて欲しいということでした。

そして「可能であれば、自分がいる場所の座標を伝えて欲しい」とも言っていました。

座標の確認方法ですが、例えばGoogleマップアプリの場合、アプリを開いて、現在地を長押しします。そして、下にスクロールすると、数字が出てきます。

そこに出てくる数字が座標になります。この座標を伝えると、よりスムーズな救助に繋がるかもしれないということです。

しかし、山の中はインターネットが繋がらないかもしれません。そういったときのために、山に入る前に、「登山計画書」をしっかりと提出してください。

【登山計画書の提出】
・登山ルート
・日程
・メンバー
・装備 など記入

登山計画書によって、登山者がどこにいそうか絞れたり、迅速な救助に繋がったりする可能性があるとのことです。

==========
<プロフィール>
深瀬音々
Nスタディレクター 登山は未経験
人生の“山場”は情熱で越えてきた

木村文子さん
陸上100mハードル 元日本代表
'12ロンドン・'21東京オリンピック出場
現在は講演や解説などで活躍 昨年第一子を出産

動画・画像が表示されない場合はこちら

このニュースに関するつぶやき

  • 正しい山の登り方を誰も教えてないから無茶苦茶やるんちゃうの (´・Д・)」 外国人観光客がヤーパンの掟の全てを知って来てるとは思えないし
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(1件)

前日のランキングへ

ニュース設定