仮面ライダーシリーズ最新作『仮面ライダーゼッツ』のオンエアを記念して、今年も『週刊プレイボーイ』のスペシャルイシューが発売! 9月8日に発売された38・39号では「歴代仮面ライダーヒロインが大集合!!」と題し、仮面ライダー女優たちが登場。水着グラビアの最新撮り下ろしやインタビューなど、仮面ライダーファン必見の充実した内容となった。
その特集より歴代ヒロイン4名のインタビューを、週プレNEWSにて再掲載。今回は『仮面ライダーゼロ』(2019〜2020年)でイズを演じた鶴嶋乃愛さんが登場。イズは、秘書型AIを搭載したヒューマギア(人型ロボ)。社長秘書として主人公・飛電或人(ひでんあると/演:高橋文哉)を全面サポートしていく。そんな彼女は当時、どう演じていたのか? 今回の取材では、出演にまつわるエピソードから当時の心境などを語ってもらった。
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――12歳からモデルとして芸能活動をされてきた鶴嶋さん。連続ドラマへのご出演は『仮面ライダーゼロワン』が初なんですよね。
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鶴嶋 はい。まだ上京前だったんですけど、マネージャーさんに声をかけてもらい、オーディションを受けました。ずっとお芝居の仕事に憧れていたんですよ。受かった時はとにかくびっくりしましたね。じつはオーディションを受けたのはその時が初めて。なのにいきなり仮面ライダーのヒロインだなんて! 感激しました。
――『仮面ライダー』シリーズはご覧になっていたんですか?
鶴嶋 私の実家の高知ではやっていないんです(苦笑)。でも男のコが一度は憧れるヒーローというイメージはあって。オーディション前に『仮面ライダーエグゼイド』の劇場版は見ました。私、『セーラームーン』が大好きなんですけど、ヒロインが戦うシーンもあるし、性別や年齢を問わず楽しめる作品なんだなと思いました。
――鶴嶋さんが演じたイズは、秘書型AIを搭載したヒューマギア(人型ロボ)で、主人公・飛電或人(ひでんあると/演:高橋文哉)の秘書。最初に役柄の説明を受けたときはどう思いました?
鶴嶋 驚きましたよ。だって、AIがヒロインだなんて、みたことも聞いたこともない! さすが令和第1作の『仮面ライダー』だな、すごい!って思いました。
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――役作りはどんな風に?
鶴嶋 (メイン監督の)杉原(輝明)監督からは「イズはヒューマギアの基準になるから、ブレずにキャラクターを立たせて欲しい」と言われたんですよ。なので、誰もがイメージするような「ザ・AI」を意識して、人間味が出ないことを徹底しました。声色やしゃべり方はアナウンサーっぽく無感情にして、まばたきを控えたりとか。メイクなどは自分からたくさん提案させて頂きました。
――モデル経験が生きたというか。
鶴嶋 はい。メイクさんと一緒に考えました。ヘアスタイルは、前髪パッツンのボブにして近未来っぽさを出したり、肌はベースメイクを白くつるんとして無機質な感じを出し、あとリップは少しだけ明るくしてお人形さん感を意識したり。見た目を作り込むことで、お芝居の際、AIになるスイッチが入りました(笑)。
――撮影現場にはすぐ溶け込めました?
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鶴嶋 大丈夫でしたね。私が一番年下で、最初から"妹"って感じで可愛がってもらって。あと撮影では山など自然の多い場所へ度々いくんですけど、周辺は何もなくて、携帯を見るか、誰かとお話しするしかやることがないんですよ(笑)。なのでキャストのみんなとも自然と仲良くなりました。本当にすごく仲が良くて、空き時間にみんなで公園へお弁当を食べに行くなんてこともありました。
――初めてのお芝居の仕事。苦労もあったのでは。
鶴嶋 感情の出し方は悩みました。物語の中盤から度々、監督から「人間味を出して」と言われるようになったんですよ。でもそのさじ加減が難しくて。出しすぎたらAIではないじゃないですか。特に映画『仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション』(2019年/監督:杉原輝昭)の時は苦労したかな。窮地に置かれた或人に、イズちゃんが強く語りかけるシーンがあるんですけど、何度もやらせていただき、(高橋)文哉くんにもすごく助けてもらいました。でも苦しんだことで、イズちゃんのキャラクターは広がったし、また自分も俳優として成長できた気がします。
――それ以外はスムースに?
鶴嶋 特に苦労は感じなかったです。ただ撮影後は大変だったかも。
――撮影後というと、帰宅してからですか?
鶴嶋 はい。翌日の台本を読んだり、お芝居の準備をするんですけど、毎朝5時に入るなどスケジュールがハードで、毎日本当に時間がなくて。苦しいときは、自分に「あなたなら絶対にやれるから、大丈夫」ってたくさん言い聞かせて、現場に臨んでいました。
――特に好きなエピソードはありますか?
鶴嶋 う〜ん。どれも好きだから、決められないですけど......、強いて言えば、第12・13話ですかね。
――或人の父親・飛電是之助の片腕として活躍していた旧世代型ヒューマギア・ワズが登場するエピソードですね。ワズはイズのプロトタイプにあたるので「自分はイズの兄だ」と言うものの「兄妹」というものをよくわからず、イズは素知らぬ顔。ただ敵を倒すため、ワズはイズの身代わりとなって自ら命を投げ出すんですよね。
鶴嶋 そう。そのあたりから、イズちゃんが少しずつ感情を表に出しはじめるエピソードなんですよ。物語の最後のほうでワズくんに向かい「私の素敵なお兄様」と言うセリフがあるんですけど、自宅で読みながらひとりですっごく泣いちゃって......。家で台本読んで泣いたのは後にも先にもあの時だけでした。
――そんな裏話があったとは。普段の撮影でさほど苦労はなかったと言っていたけど、イズは或人の秘書。だから戦闘中も現場にいるわけですよね。
鶴嶋 そう。文哉くんたちは変身したらいなくなっちゃうんですけど、私は最後までずっと撮影してました(笑)。
――それは大変じゃなかったですか? 朝早いし疲れるでしょう?
鶴嶋 全然! だってスーツアクターさんたちの華麗な動きを近くで見られるんですから。休憩の時、お話しするなど、すごく仲良くさせていただきました。
――すべてを楽しんでいたんですね。
鶴嶋 もちろん! とにかくお芝居の仕事をやるのは私の夢でしたから。それこそカメラがあって、照明があって、マイクがあって......と現場のすべてにワクワクしていました。ずっと撮影を見ていたいし、スタッフの皆さん全員ともたくさんお話もしたい。現場にいればお芝居の相談も、たくさんできますし。
――たくさんコミュニケーションも図っていたんですね。みんなからは「妹」以上に愛されたのでは?
鶴嶋 現場はとにかく文哉くんが盛り上げてくれたので、私はニコニコしていただけですけど、しょっちゅうお菓子を買ってきていただいたり、すごく気にかけていただきました。
――愛されていますね(笑)
鶴嶋 場を和ませるというか、"癒し的な存在"でいたいと思っていたので、そう言われたのは嬉しかったです。それは現在のお仕事にも活きていて。進行が押したりしたら、やはりピリつくじゃないですか。特に自分が主演であればそういう時、「大丈夫!いまから巻き返しましょうね!」って言うんです。みんなニコニコしながらできるのが一番いいと思っているので。そういうムードメイカーでいる大切さは『ゼロワン』で学んだことですね。
――鶴嶋さんが思う、『仮面ライダーゼロワン』の魅力は?
鶴嶋 令和第一弾ってこともあってか、笑顔に溢れていて、明るい作品だってことです。主人公・或人は元気があって真っ直ぐなキャラクターだし、なにより1話なんて遊園地から始まりますから! 私自身、出演者なのにめちゃワクワクしました(笑)。あと『ゼロワン』はライダーのビジュアルが洗練されていて、アクションもスマートでかっこいい。それも見どころのひとつです。
――鶴嶋さんにとって『仮面ライダーゼロワン』とは?
鶴嶋 俳優人生の原点です! あそこまですべてにおいて一所懸命に向き合った現場はないですし、『ゼロワン』がなければ今の自分はいません。これからも機会があればまたイズちゃんを演じたいです。本当にイズちゃんと出会えて幸せですよ。
鶴嶋乃愛(つるしま・のあ)
2001年5月24日生まれ 高知県出身 ○2013年、「第21回ピチモオーディション」でグランプリを受賞し、モデルデビュー。2019年に『仮面ライダーゼロワン』で俳優デビュー。俳優、モデルに加えファッションブランド「Romansual」のプロデューサーとしても活動
取材・文/大野智己 撮影/荻原大志 ©石森プロ・東映