予選2番手を獲得した39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supra スポーツランドSUGOで行われている2025スーパーGT第6戦。公式予選は当初、雨になるのではないかと言われていたが、結局はドライコンディションでセッションが進み、GT500クラスでは16号車ARTA MUGEN CIVIC TYPE R-GTが2戦連続でポールポジションを獲得。特にQ2では、佐藤蓮が1分09秒122でコースレコードを更新する走りで、2番手以下に0.4秒以上の差をつけ、頭ひとつ抜け出した感があった。
一方のライバルたちは予選を終えた後の感触はさまざま。なかでも、決勝に向けて自信を持っているチームもあれば、今年ずっと抱えていた問題が解消したチームも。逆に原因不明のトラブルに見舞われてQ1敗退を余儀なくされたチームもいた。
今回は、3チームをピックアップし、SUGO予選後の各事情をまとめた。
⚫︎原因は“アレ”を究明してパフォーマンス大幅アップ/39号車DENSO KOBELCO SARD GR Supra
前回の第5戦鈴鹿では、15番手スタートから9ポジションアップの6位入賞を果たしたDENSO KOBELCO SARD GR Supra。レース後に脇阪寿一監督が「ここまで抱えていた問題が解消の方向に向かうかもしれない」とコメントしていた。
今回のSUGOでは、今まで起きていた症状が出てこず、予選Q1では関口雄飛がトップタイムを記録。Q2ではサッシャ・フェネストラズが2番手に食い込み、今季ベストの予選結果となった。
公式映像のインタビューで関口が「原因がアレじゃないかなと思っていて……」と話していたが、その“アレ”について、脇阪監督に聞くと「モノですね。今シーズンを迎えるのに対して、普通に交換したパーツが原因でした」とのこと。
エアロ周りなのかマシン内部のメカニカル系パーツなのかの具体的な箇所については「両方ですね。それが、いろいろな部分に影響したのだと思います」と明確な回答は得られなかったが、第5戦の鈴鹿で予選15番手に終わったことで、チーム首脳陣が集まって、今季のドライバーコメントやパーツ交換履歴を全て振り返ったという。
「『どこで何を替えたのか?』『どのタイミングからドライバーのコメントに変化が出たのか』というのを全部振り返りました。そのパーツを使い始めたときは他にもいろんな問題があったので、精度良く『(原因は)これ!』と決められない部分もありました。(鈴鹿の予選で最下位に終わった後は)残るはこれかもうひとつの箇所しかないということで、メカニックも夜中まで作業してくれて、パーツを交換しました。
今になっての話ではあるが、原因があったパーツについては、阿部和也エンジニアも「実は、そのパーツを入れた時に、ほんの少しだけ違和感は感じたんですよ」と“思い当たる節”があった様子。
「でも『大丈夫かな?』と思っていましたし、(今シーズンの)最初の頃は、僕もこのチームで仕事するのは初めてなので、よく分からないところもありました。『僕のクルマ作りが悪いのか?』と思って、最初はそこ(不具合箇所)を疑いませんでした。でも、今振り返ると(不具合があったパーツ)を付けてから、顕著に問題のある症状が出ていましたね」
各レースでさまざまな対処を講じたが、根本の問題は解決されないまま。「(昨年まで)14号車(ENEOS X PRIME GR Supra)でやっていた時は、こんなことはなかったですし、何をやってもダメで……『走れないにもほどがあるな』と」
「鈴鹿の時に『さすがにおかしい』となって……どのみち最下位だったので、1回替えようということになって、決勝では問題だった症状は何も出なかったです。でも、それだけで確証は持てなかったので、今回のSUGOに向けてそのまま持ってきましたけど、何も起こらなくて、普通に走っています」と、阿部エンジニアからも久しぶりに笑みがこぼれていた。
このままいけば、決勝も力強い走りが期待できそう。脇阪監督は「もちろん優勝か、最低でも2位。それができれば、ポイント差を詰められて、我々も戦える権利が得られると思います。残り2戦のパフォーマンス次第ではタイトルもあると思うので、なんとか今シーズンは笑って終わりたいです」と、明日の決勝だけでなく、チャンピオン争いに向けても意欲を見せていた。
⚫︎暑くなりそうな決勝を見据えたタイヤ選択/24号車リアライズコーポレーションADVAN Z
もう1台、決勝に向けて楽しみな存在が5番手につけたリアライズコーポレーション ADVAN Zだ。Q1、Q2ともに真っ先にピットアウトし、ウォームアップにかけた周回数も全車のなかで一番多かった。
これについてQ1を担当した松田次生に聞くと「明日は温度が上がることを見越して硬めのタイヤを選びました」とのこと。天気予報では、土曜日が雨絡みとなり、日曜日が晴れて気温と路面温度が上昇するのではないかと言われている。
「Q1も通れるかどうかギリギリのタイヤを選んでいたんですけど、なんとか通ることができましたし、最終的に5番手に入れたのはめちゃくちゃ大きいです」と松田。予選で少々苦戦する覚悟の上で、決勝を見据えた戦略をとったようだ。
「今日は路面温度が26℃で、温度レンジに外れているようなタイヤだったので、明日のスタートで温度が上がってくれれば、今日のようにウォームアップで時間がかからずに済むと思います。そうすれば、5番手をキープして後半勝負にできるかなと思います。そこをとにかく(名取)鉄平とふたりでやっていきたいです」
「明日、温度が上がればすごくポジティブな結果が得られるのではないかなと思います」と期待を膨らませる松田。SUGOは天候やコンディションが変わりやすいだけに、どうなるか分からないが、目が離せない存在になりそうだ。
⚫︎原因不明のトラブルで遠のいていくチャンピオン争い/100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GT
今回の予選で、ホンダ陣営としても衝撃的だったのが、ホンダ陣営のトップでランキング8位でSUGOを迎えた100号車STANLEY CIVIC TYPE R-GTの予選最下位。どうやら予選Q1のアタックに入ったところで、車両のどこかの部分に不具合が発生し、ステアリングを握っていた牧野任祐はスピンしそうになり、とてもアタックできる状態ではないとのことで、スローダウンしてガレージに戻ることになった。
予選後、チーム関係者、そしてホンダ開発陣に聞いてもまだ原因は判明できておらず、これからクルマをバラして原因を探すとのこと。
いずれにしても、100号車にとってはこのSUGOで上位に入ることができればまだまだチャンピオン争いの候補に入れるだけに、15番手の最下位スタートはタイトル争いを考えると非常に厳しい結果になってしまった。
[オートスポーツweb 2025年09月20日]