ジェイコブ・フォーチュン・ロイド「映画を見終わった後で、ブライアンのことを愛してほしいと思います」『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』【インタビュー】

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2025年09月24日 17:10  エンタメOVO

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ジェイコブ・フォーチュン・ロイド(C)Andrew James

 ザ・ビートルズを世界的な成功に導いたマネジャー、ブライアン・エプスタインの実話を基に描いた伝記映画『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』が9月26日から全国公開される。本作で主人公のブライアン・エプスタインを演じたジェイコブ・フォーチュン・ロイドに話を聞いた。




−まず、出演の経緯から伺います。

 ある日、エージェントから「ミーティングがある。ブライアン・エプスタインをやることになるかもしれない」という電話を受けましたが、その時僕は「ブライアン・エプスタインって誰だっけ?」みたいな感じで、彼のことを全く知りませんでした。その後、プロデューサーに会い、オーディションを受け、台本を受け取ってという流れになりました。ブルジット・グラントという素晴らしい脚本家が書いた台本を得て、ブライアンについて何も知らなかった僕が、数日後には彼のことよく知っているという状態になりました。

−ブライアンはイギリスでも知る人ぞ知るような存在なのでしょうか。

 多分ほとんどの人がブライアン・エプスタインがどんな人だったのかを知らないと思います。ビートルズやあの時代の音楽のファンであったりしない限りは、たとえあの時代に生きていたとしても、知らない人は多いと思います。ブライアンのことがこんなに知られていないというのは、ある意味奇妙なことだとも思います。

−ブライアンのキャラクターをどのように捉えましたか。

 僕はこの人は多くの矛盾を抱えた人だと思いました。誰もが矛盾を抱えていますが、普通の人よりも大きなものを抱えていたと思います。芸術的なセンスやテイストに関してはすごく自信を持っていたと思いますし、成長する過程が他の人よりも早く、若いのに成熟した人だったとも思います。それと同時に、すごくシャイでもありました。そして、自分自身に対するフィーリングがとても複雑で、自分を愛せなかったということもあると思います。人生の後半になると文化的な影響力もあり、とても裕福になるのですが、彼自身のゲイであるというセクシュアリティーが起因して、自分が犯罪者であるかのように思っていたところもあると思います。それによって、脅迫もされたし、ダメージも受けたと思いますが、やはりこの両極端、個人の感情とパブリックイメージのはざまで生きていた人なのではないかと思います。

 また、すごく真面目でシリアスな人だったということです。例えば、オフィスでは、皆に「ミスター・ブライアン」と呼ばせていたようですし、自分にも他人にもスタンダードの基準がとても高かったのだと思います。自分にも他人にも期待値が高く、その期待に応えることはほぼ不可能だったと思いますし、結果的に自分にも他人にもプレッシャーを与え続けることになったのだと思います。

 でもその一方では、すごく優しい人で、紳士ですし、愛にもあふれていた人だとも思います。だからこそ、ビートルズのメンバーもブライアンのことが大好きだったのでしょう。それはブライアンに責任感があって大人だったからです。実際、ブライアンはビートルズのためにいろんな世話をし、彼らが音楽に集中できるような環境を作りました。それと同時に、ブライアンにはユーモアもあって、ビートルズもブライアントと過ごす時間がとても好きだったようです。本当におじさんみたいな、親子みたいな、友達みたいな関係性だったのだと思います。

−実在の有名人を演じることにプレッシャーは感じましたか。

 はい。プレッシャーは感じていました。なぜなら、実際にブライアンを知っている人、そして愛している人は、今もいらっしゃいますし、文化的にも歴史的にもとても重要な人物だと思ったからです。演技をする上では、ブライアンのことを公平に扱いたいと思いました。なので、いろんな本などを読んで、彼のことを知れば知るほど、すごく期待値が高い人だったということを知った上で、自分も誇りのある演技をしたつもりですし、映画を見る方にもそう感じてほしいと思いました。確かにプレッシャーは感じていましたが、正しく演技をすることを一生懸命にしたと思っています。

−ジェイコブさんにとってのビートルズのイメージは?

 ビートルズを知らずに生きるというのは、イギリスはもちろんですが、この世界では難しいことだと思います。ただ、僕の育った家でビートルズがよくかかっていたというわけではありませんでしたので、ビートルズが音楽的にも歴史的にも変革をもたらした人たちだったという理解はありましたが、それほど詳しくはありませんでした。この映画をやることになって、彼らのアルバムをじっくりと聴きました。特にブライアンが生きていた時に制作された『リボルバー』や『ラバー・ソウル』は一番好きなアルバムになりましたし、4人が一緒にいることで起きた化学反応や音楽史への貢献ということも改めて理解しました。今は本当に大好きで、愛しているバンドになりました。

−例えば「抱きしめたい」や「愛こそはすべて」など、当然流れるべきシーンでビートルズのオリジナル曲が流れなかったのですが、それは版権の問題があったのでしょうか。

 この映画はインデペンデント映画ですが、ビートルズの音楽を流すのはとても高価なので、著作権の問題などで流せませんでした。確かに皆さんが期待しているところでその曲が流れないというのは、残念なところだと思います。ただ、これは直接ビートルズを描いた映画ではなく、ブライアンを主人公にした映画なので…。別の言い方をすると、ビートルズの今おっしゃったような曲に関しては、皆さんが頭の中で自動再生できるぐらいの曲だと思うので(笑)、今回はブライアンの映画ということでご理解いただければと思います。

−完成作を見た印象と、見どころも含めて、日本の観客や読者に向けて一言お願いします。

 完成作を見て、この映画に出られたことを誇りに思いました。理由としては、ブライアンが達成したこと、どんな人であったのか、彼がいなければビートルズもいなかったという、その功績や人生を伝えることができたからです。日本の観客の方には、すごく短い人生でしたが、ぜひ彼のことを知っていただいて、発見していただき、映画を見終わった後で、彼のことを愛してほしいと思います。見どころはたくさんありますが、一番は先ほどおっしゃった「愛こそはすべて」の衛星中継のところですね。世界中の人々がビートルズを見ることができた、すごくアイコニックなイベントで、とても素晴らしい映画のフィナーレになったと思います。リバプールでリンゴ・スターが育ったすぐ近くで2日間かけて撮影しましたが、撮影現場では皆涙を浮かべていて感動的でした。ほかにもアビーロードスタジオでの撮影など、すごくアイコニックな瞬間を再現したところも見どころだと思います。

(取材・文/田中雄二)


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