『テレビの中に入りたい』© 2023 PINK OPAQUE RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.A24製作のジェーン・シェーンブルン監督作『テレビの中に入りたい』より本編映像が解禁された。
90年代アメリカ郊外を舞台にした本作は、自分のアイデンティティにもがく若者たちを描いた“メランコリック・スリラー”。
この度解禁されたのは、主人公のオーウェンとマディが夢中になる深夜のテレビ番組「ピンク・オペーク」の内容が映し出された本編映像。
映像は、主人公のオーウェンが暗室で「“番組初回”(再放送)」とマディの手書きで書かれたVHSテープを手に持つシーンから始まる。薄暗い部屋でひとりテレビにVHSテープを入れると、無表情のまま「何度も繰り返し見たけど、飽きなかった」と語るオーウェンの切なげな表情が捉えられ、そこからまさに“テレビの中に入っていく感覚”に陥るかのように「ピンク・オペーク」の映像が映しだされていく。
「ピンク・オペーク」は、主人公となる2人の少女・イザベルとタラが、敵であるミスター・憂鬱(メランコリー)の遣わす怪物たちと毎週戦うヒーローものの番組。月の男“ミスター・憂鬱(メランコリー)”が郡の各地に送り込むモンスターと戦うのが使命なのだと彼女たちは知るが、邪悪な彼は現実の支配を目論み、“真夜中の国”という監獄を作りイザベルとタラを閉じ込めようとする。
映像では、森の中で白い洋服を身に纏ったモンスター“マルコとポーロ”が怪しげな踊りを繰り広げ、次のシーンでは川辺に座り真剣な面持ちで語り合うイザベルとタラの会話が映しだされていく。裏で糸を引く月の男“ミスター・憂鬱(メランコリー)”が、ふたりを空から怒り狂う恐ろしい顔で見つめる姿も捉えられており、「私に何が起きたの?なんで私はそれが分かるの?」と不安げな表情でタラに問いただすイザベルに対し、「もっと強く心を持って。私も同じ、特別なの。私たちは“ピンク・オペーク”。運命なの」とタラが強く答え、ふたりの首のタトゥーがピンク色に輝く「ピンク・オペーク=OP」の象徴的なシーンも見ることができる。
本作と同じく35mmで撮影され、ポストプロダクションでVHSとベータマックスに変換するなどこだわり抜いて作られた劇中の「ピンク・オペーク」の映像は、夢と現実、映画とテレビの狭間のように感じられる独特の質感を作り出している特別な映像となっている。また本作が記念すべき俳優デビューとなった「スネイル・メイル」でヴォーカルとギターを務める人気ミュージシャンのリンジー・ジョーダン(タラ役)の演技にも注目だ。
「ピンク・オペーク」の映像やモンスターのビジュアル、そのトーンの美しさは、映画の中で時間の経過とともに変化しており、ジェーン・シェーンブルン監督は「若い頃の曖昧な記憶や、不安定な感情が混濁した主人公たちといった、“信頼できない語り手”たちがこの映画を動かしています。12歳の時に郊外の地下室で見れば、テレビ番組は最高にクールなものに思えますが、中年になり抑圧されていてソファに横たわって見ると魔法は完全に失われてしまうと感じます。観客は提示されるメディアとの関係を問うべきです」と語っている。
また新たに解禁となった場面写真には、イザベルがモンスターに捕らえられているショッキングな場面や、スーパーマーケットで立ち尽くす意味深なマディのカット、さらに主人公オーウェンが幼い頃から影響を受ける母親の姿も写しだされている。
また公開に併せ、bonjour recordsでは本作の公開を記念したエクスクルーシブTシャツが発売。劇中の象徴的なテレビが燃えるシーン、オーウェンとマディの二人がテレビを見入るシーン、テレビ番組「ピンク・オペーク」のモチーフなどを用いたグラフィック・フォトTシャツとなっている。
『テレビの中に入りたい』はヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開中。
(シネマカフェ編集部)