7号車ドライバー兼チーム代表の小林可夢偉 WEC世界耐久選手権第7戦『富士6時間耐久レース』の予選日、9月27日夜。自らの乗る7号車GR010ハイブリッドはニック・デ・フリースが予選を担当し14番手、平川亮がアタックした8号車が8番手で公式予選を終えた後、トヨタGAZOO Racingのチーム代表も兼ねる小林可夢偉が、記者団の取材に応えた。
■“1輪のみソフト”は秘策となるか
サンパウロ、そしてオースティンという直近2レースに続き、走り出しから劣勢に置かれているトヨタ。それでも可夢偉は、前向きな姿勢を崩さぬよう努めているように見える。
「ニックも『(アタックラップを)うまくまとめられなかった』と言っているものの、とはいえトップからは(タイムが)かなり離れているので……何ができるのか、しっかりチームと解析しながら、準備していきたいと思います」と7号車の予選日を振り返った可夢偉。決勝に向けても、確固たるポジティブな要素をつかんでいるわけではなさそうだが、チャレンジは続けていくという。
「正直レースペースも、僕らが速いわけでも、自信を持っているわけでもないので、普通にいったら表彰台は獲れない。何かしないといけないので、ストラテジーであったりとか、クルマのセットアップの部分で、いままでにやったことがないこともやりつつ、何かいいものを見つけて、今後につなげていきたい。いままで、そういうチャレンジの少なさがあって、今に至っている部分もあると思うので」と、決勝に向けてはセットアップ等で大きめな変更を加える可能性も示唆した。
同時に可夢偉チーム代表は、困難な時期には、チーム全体をメンタル面でコントロールすることも重要だと指摘する。
「いまは精神のコントロールの方が大変かな、と。みんな、アツくなっているので」
「ただ、そういうところが、人を鍛えていいクルマを作ることにもつながると思うし、やっぱり『仲良しごっこ』では勝つことはできないと思っていて。そういう意味では、自分たちから意見を言い合って、速いクルマを作るために、しっかりやっていければいいかなというふうに思います」
「すぐに結果が出るとは思っていませんが、このつらい時間をどういう風に使っていくかが、今後につながると思っています」
なお、今回ミシュランタイヤが持ち込んでいるコンパウンドはソフトとミディアム。予選までを見ていても、比較的高気温なこともあってか、ほとんどの陣営がミディアムで戦っている状況のようだが、トヨタはFP3で『右フロントのみソフト』という組み合わせも試している。もし決勝で気温が下がってくる状況があれば、そこに光明を見出したい、という狙いもあってのチャレンジのようだ。
「(プラクティスで走る)あのくらいの距離であればそこまでネガはないですけど、『すごく速い』という感じでもなかったですね。まぁ、『使える』ということは確認できた。これから気温が下がっていくぞ、ということであれば、時間帯によってはひとつの手だな、という感じです」
劣勢な状況は変わらないものの、『重箱の隅をつつく』かような姿勢で、がむしゃらに挑戦して可能性を見出そうとしている。それが、ホームコースの富士でトヨタGAZOO Racingが置かれている現状のようだ。
[オートスポーツweb 2025年09月27日]