佐藤万璃音(95号車マクラーレン720S LMGT3エボ/ユナイテッド・オートスポーツ) 2025年WEC第7戦富士 9月28日(日)に静岡県の富士スピードウェイで行われた、2025WEC世界耐久選手権第7戦『富士6時間耐久レース』。ユナイテッド・オートスポーツの95号車マクラーレン720S LMGT3エボのドライバーとしてLMGT3クラスに参戦した佐藤万璃音は、自身2度目のWECホームレースを11位で終えた。
3週間前の第6戦COTAで初のWECクラス優勝を飾った佐藤だが、連勝が期待されたホームラウンドでは2番手を獲得した予選から一転、決勝で苦戦。レース後に佐藤は「思っていたようにはいかなかった。ペースの問題もあると思うし、ストラテジーでも負けていた」と話し、表情を曇らせていた。
■「見返すところが多い」地元戦に。レースを通してペースに苦労
予選はチームメイトのダレン・ラーンとショーン・ゲラエルが好走を見せ、2番手グリッドから決勝を戦った佐藤の95号車マクラーレン。スタートではラーンのドライブで1コーナーを首位通過したが、これはのちにジャンプスタートと見なされ、ドライブスルーペナルティを課された。
佐藤はこのシーンについて、「自分たちもオンボードを見ていて、『これはペナルティを受けるだろう』ということはわかっていたのですが、まさかドライブスルーが出るとは思いませんでした。次のピットストップでタイム加算とかを予想していたのですが……、まあルールとして仕方ないですね」とコメント。95号車マクラーレンは1時間経過後のセーフティカー(SC)ラン終了直後にペナルティを消化したことで後退し、ここで一旦は優勝戦線から外れてしまった。
それでもラーン、ゲラエルとスティントを繋ぎ、幾度も発生したアクシデントによるフルコースイエローやSC導入に対応しつつ、残り2時間ほどのタイミングには上位まで挽回。3度目のSCラン終了時にはトップを走っていた集団に加わり、3番手までポジションを上げていた。
そして残り1時間45分は佐藤がステアリングを引き継ぎ、15番手で隊列に加わって追い上げを開始。コースイン直後には1台をパスすることができたが、その後はユーズドタイヤで思うようにペースを上げることができなかった。
さらにここからは燃料シークエンスの異なる集団が上位に浮上するなど、最終盤まで勝敗の行方が掴めない展開となったが、佐藤は戦略の近いグループからも徐々に離されてしまい最終的に10位でチェッカーを受けた。
佐藤は、前戦ウイナーに課せられる18kgのサクセスウエイトを加味しても「ペースが足りなかった」と自身のスティントについて語った。セットアップの方向性は、終盤の佐藤の追い上げを強化するべく「少し自分の方に寄せてもらっていた」というが、それでも満足のペースは発揮できず。
「FPとの気温の変化なども影響があったのかなと思うし、エンジニアリングチームとの仕事においても、セットアップはまだまだ詰められたのかなと思います。同じストラテジーだったマンタイ(・ファースト・フォーム)の92号車ポルシェは、純粋なペースであそこ(5位)まで上がっていったし、(最終的には)ストラテジーでも他のライバルに負けていたので、これから見返すところが多いですね」と、悔しそうな表情で自身2度目のWEC地元戦を振り返った
■マクラーレンのハイパーカープログラムに“合流”なるか
佐藤が現在乗っているマクラーレンは、2027年にWEC最高峰のハイパーカークラスへ、新たに開発したLMDhマシンでの参戦を予定している。すでにマシンのモックアップがル・マンで発表されており、起用ドライバーのアナウンスが待たれる状況だが、LMGT3プログラムでプラチナランクの選手として起用されている佐藤は、この次期ハイパーカープログラムへの加入が注目されている。
これまでも「乗る準備はできている」と言葉にしてきたが、プログラム加入について改めて質問に答えた佐藤は「まったくわからないですね。今はハイパーカーのシートを気にすることよりも、目の前のELMSとWECの残りのレースを大切にしています」と返答。
そこでユナイテッド・オートスポーツの共同オーナーであり、マクラーレン・レーシングのCEOであるザック・ブラウンと直接話はしたかと問うと、「ビールを飲みながら、そういう話をしたことはもちろんありますよ」といい、「今日も自分のパフォーマンスやクルマのパフォーマンスを引き出す仕事はめいっぱいやったつもりですし、続けていればこれ以降の扉も開いてくると思います」と具体的な回答は避けつつも前向きに回答した。
[オートスポーツweb 2025年09月28日]