ラリークロス界の強豪として名を馳せて来たハンセン・モータースポーツが新規参戦を表明 この10月にも開幕が迫ったFIAエクストリームHワールドカップに向け、シリーズは最初のチームとドライバーラインアップを発表。ラリークロス界の強豪として名を馳せて来たハンセン・モータースポーツが、アンドレアス・バッケルドとケイティ・マニングスをドライバーに迎え、世界初の水素燃料ワンメイク・オフロード選手権に参入する。さらにシリーズの前身たるエクストリームEでも活躍したカール・コックス・モータースポーツや、言わずと知れた元F1王者ジェンソン・バトン率いるJBXE改めJBXも、立て続けに体制発表を実施している。
開幕戦に先立ち10月4〜5日にサウジアラビアにて、初代BEVの機材を活用し、水素時代の幕開けを前に“ファイナルラップ”と名付けられた単発イベントで復活し、そのまま首都リヤドから約48km離れたトゥワイク山脈に位置するキディヤにて、改めて10月9〜11日に開幕戦を実施するエクストリームHだが、初年度に参戦する総勢8チーム16名のドライバー(各チーム男女1名ずつ)のうち、この段階で4チームのラインアップが確定した。
その新生FIA格式カップシリーズの創設初年度に先立ち、シリーズ参入を表明したハンセン・モータースポーツは、ラリークロスにおいて長く輝かしい歴史を誇り、チーム創設者のケネス・ハンセンとスーザン・ハンセン夫妻は、この分野のレジェンドとして知られている。
夫のケネスはヨーロッパ・ラリークロスで14度のチャンピオンに輝き、妻のスーザンは1994年のERAヨーロッパカップでグループNクラス優勝を達成。その後、2015年のWorldRX世界ラリークロス選手権でチームチャンピオンを獲得し、2019年には長男ティミー・ハンセンをドライバーズタイトルに導いた。その同年にはチームチャンピオンも獲得し、2021年にもこの偉業を再現している。
そんなチームの新代表に就任した長兄のティミーは「代表就任は僕自身にとって特別な瞬間だ」と意気込みを述べた。
「僕らにとってモータースポーツはつねに家族の絆であり、母のスーザンと父のケネスから多くのことを学んだうえで、新たな役割を担うことは刺激的な挑戦だと感じている」と続けたティミー。
「アンドレアス・バッケルドとケイティ・マニングスをドライバーに迎えることができ、大変うれしく思っている。ケイティと僕は長年にわたりチームメイトとして素晴らしい関係を築いてきた。アンドレアスとは数々の勝負や思い出を共有し、彼がいかに強いドライバーであるかを身をもって知っている」
「僕たち全員が築いてきた歴史から生まれる敬意と信頼は、エクストリームHという新たな挑戦に挑む上で大きな力となるだろう。彼らが自信を持って速く走れるよう、素晴らしいマシンを提供できることを願っている」
長年、ハンセンのファミリーチームとはライバル関係にあり、北米大陸で活躍を演じながらヨーロッパ・ラリークロス選手権を2度制覇しているバッケルドは、JBXEで過ごしたエクストリームEでの経験を元手に、初めて宿敵とも呼べる相手とタッグを組むことを選んだ。
「誰もこんなことになるとは思っていなかった。僕自身もまだショックを受けているよ! 長年にわたり世界タイトルを争い、ラリークロス界屈指のライバル関係として激しい戦いを繰り広げてきたふたりが、突然タッグを組むなんて……控えめに言っても大きな出来事だ」と続けたバッケルド。
「チーム・ハンセンに加入するだけでなく、ティミーがチーム代表を務めることには、より深い意味がある。僕らはともにタイトルを争う機会を得たし、ハンセン兄弟のためにレースをしながら、ケイティ(・マニングス)の隣で自分の仕事に全力を尽くしたい。こんなことを言いながら、いつまでたっても慣れないかもしれないけどね!」
そう名前の挙がった2016年のERCヨーロッパ・ラリー選手権レディストロフィー覇者であるマニングスも、アンドレッティ時代にタッグを組んだティミーと、グリーンランドで開催された『アークティックXプリ』で優勝を飾っており、通算8回の表彰台獲得数をさらに更新したいと意気込む。
「チーム・ハンセンに加入でき本当にうれしく思っている。彼らは長年、私にとって家族のような存在であり、モータースポーツ界における最高のメンターでもあるから」と近年は活動の視野を広げ、電動ボートの『E1シリーズ』に参戦し、初開催の初年度シーズンでは5戦の出走で3回の表彰台を獲得したマニングス。
「だからこそ、今、彼らのためにレースに参戦できることは、まさに原点回帰の瞬間ね。メカニックからスポッター、メディアチームまで、メンバー全員が業界最高の人材であることは間違いない。そのおかげで、最高のパフォーマンスを発揮できると確信している」
「彼(ティミー)は誰よりもこのスポーツを熟知しており、私たちのポテンシャルを最大限に引き出してくれるでしょう。クレイジーなアンドレアスと組めることも本当にうれしく思っているし、きっと一緒に楽しい時間を過ごせるでしょうね!」
そして世界的DJとして活躍するカール・コックスが創設したチームは、2023年にエクストリームEにデビュー。すぐに競争力を高め、わずか3回目の出場で3位表彰台をもぎ取る躍進を披露した。その立役者としてチームを牽引したティモ・シャイダーは、この水素燃料時代への移行に際しエースドライバーとチーム代表の立場を兼任する。
「今回はドライバーとしてだけでなく、チーム代表としてもカール・コックス・モータースポーツに復帰できることを光栄に思っている」とDTMドイツ・ツーリングカー選手権で2冠を誇るシャイダー。
「これまでエクストリームEでカールとチームとともにレースに出場する機会に恵まれてきたが、今回サウジで開催される最新のワールドカップへ挑むことは、新たな章への刺激となる」
「このチームを本当に特別なものにしているのは、カール(・コックス)がもたらす信じられないほどポジティブなエネルギーであり、それがチーム全員に浸透しているからだ。そのスピリットは僕にとって大きな意味を持ち、僕らの成功の秘訣だと心から信じているよ」
そのシャイダーは、2024年に新興SUNミニミールで共闘したクララ・アンダーソンと引き続きのタッグを組む。
「カール・コックス・モータースポーツに加入し、エクストリームEの最終戦とエクストリームHワールドカップ初戦で再びティモとチームを組めることを光栄に思う」と、近年はWorldRXでもレギュラー参戦を続けるアンダーソン。
「一緒に走ったのはほんの数レースだったけど、チームのメンタリティと情熱は本当に素晴らしかった。伝説の男、カール・コックスのためにレースをできることも最高にクールね。私たちの使命は、彼に誇りに思ってもらうことよ!」
そして2009年F1世界チャンピオン、ジェンソン・バトンによって2021年に設立されたJBXEは、今季よりチーム・モナコとジョイントし、改めて『JBX Powered by Team Monaco』として新鋭トミ・ホールマンと、シリーズ黎明期から参戦してきた“GZ”ことクリスティーン・ジャンパオリ・ゾンカを起用する。
「JBXが水素時代の新境地を切り開くこのシリーズに引き続き参加できること、そしてFIAエクストリームHワールドカップに参加できることを本当にうれしく思っている」と続けた創設者であるバトン。
「チームはシリーズへの参戦開始以来、エクストリームEの全ラウンドに出場しており、このプロジェクトを新たな段階へと進めていくことは非常にエキサイティングなことだ。サウジアラビアはその幕開けを飾る素晴らしい場所であり、JBXにトミーとクリスティンの両選手を温かく迎え、数週間後のキディヤで彼らがどのように活躍してくれるのか、それを見るのを楽しみにしている」
さらに、かつてWRCで活躍したマンフレッド・ストール率いるストール・グループGmbHの傘下であるSTARD(ストール・アドバンスト・リサーチ・アンド・デベロップメント)も、代替燃料と電動モビリティの多才な研究開発専門会社としてシリーズへの新規参入を表明。新たにイギリス出身のパトリック・オドノバンと、北米出身アマンダ・ソーレンセンという実績あるペアを起用する。
「STARDは真に革新的な企業であり、エクストリームHのグリッドに立つことは我々にとっても完璧な組み合わせだ」と語るのは、グループを率いるマンフレッド・ストール。
「チームは参戦準備を進めながら、ワークショップからレーストラックへと革新を推進するという使命を継続していく。卓越した技術力と進歩への情熱を融合させることで、STARDとそのドライバーであるパトリック・オドノバンとアマンダ・ソーレンセンは、世界の舞台で持続可能なモータースポーツの未来を形作る一翼を担う」
[オートスポーツweb 2025年09月29日]