『アフター・ザ・クエイク』©2025 Chiaroscuro / NHK / NHKエンタープライズ第78回カンヌ国際映画祭監督週間部門に出品され、国内歴代興収記録をのばしている『国宝』、同映画祭「ある視点」部門に出品された『遠い山なみの光』など、昨今、原作小説の魅力をさらに高める形で映像化された作品の勢いは海外からも信頼を寄せられている。
また、世界中にファンを持つ村上春樹の原作小説を映画化し、主演に岡田将生、鳴海唯、渡辺大知、佐藤浩市を迎えた『アフター・ザ・クエイク』が10月3日(金)より全国公開される。
今回は、そんな「小説が映像化された作品」の中からこの秋、劇場で観たい注目作を一挙に紹介。原作への忠実さ、台詞の魅力、映画化ならではのオリジナリティ…。表現方法の違う2つの作品を見比べることにより、新たな魅力を発見できる5作品となっている。
『国宝』公開中
原作:「国宝」(吉田修一 著/朝日新聞出版)
小説家・吉田修一自身が3年間歌舞伎の黒衣を纏い、楽屋に入った経験を血肉にし、書き上げた渾身作「国宝」。任侠の一門に生まれながらも、歌舞伎役者の家に引き取られ、芸の道に人生を捧げた主人公・喜久雄の50年を描いた壮大な一代記。
そんな圧倒的傑作が、世界最高峰のスタッフ&キャストと奇跡のような集結を果たし映画化。監督を、第30回日本アカデミー賞最優秀作品賞などを受賞した『フラガール』の李相日監督。
主人公である稀代の女形・立花喜久雄を演じるのは、どんな役でも演じ切る圧倒的演技力で、脚光を浴び続ける吉沢亮。喜久雄のライバルとなる歌舞伎名門の御曹司・大垣俊介を演じるのは、第48回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞も記憶に新しい横浜流星。
そのほか、日本映画には欠かせない主演級の俳優たちが一堂に揃い、物語をさらに美しく、厚くする。
『近畿地方のある場所について』公開中
原作:「近畿地方のある場所について」(背筋 著/KADOKAWA)
発行部数70万部突破、日本全国で話題沸騰中の小説の実写映画化。2023年1月、Web小説サイト・カクヨムに第1話が投稿されると、「これは本当に虚構のストーリー?」「その場所は実在するのではないか」など様々な反響がSNSで投稿され、小説の世界観に引き込まれた読者の間で熱を帯びた議論が巻き起こった。同年8月に単行本化されると、たちまち爆発的人気に。
そんなタイトルが気になり過ぎる異色作が、監督を『貞子VS伽椰子』『サユリ』の白石晃士監督が務め、ついに実写映画化。主演に菅野美穂、赤楚衛二、主題歌を椎名林檎が担当するなど豪華スタッフ・キャスト陣にも注目だ。
『遠い山なみの光』公開中
原作:「遠い山なみの光」(カズオイシグロ著/ハヤカワ文庫)
2017年にノーベル文学賞を受賞し、「日の名残り」「わたしを離さないで」など、映画化作品でも非常に高い評価を受ける作家カズオ・イシグロが、1982年に綴り、王立文学協会賞を受賞した長編小説デビュー作品の映像化。
戦後間もない1950年代の長崎、そして1980年代のイギリスという、時代と場所を超えて交錯する“記憶”の秘密を紐解いていくヒューマンミステリー。監督は、『ある男』で第46回日本アカデミー賞最優秀作品賞を含む最多8部門受賞という快挙を達成した石川慶。カズオ・イシグロ自身もエグゼクティブ・プロデューサーとして名を連ねる。
主演の広瀬すずほか、二階堂ふみ、吉田羊、松下洸平、三浦友和ら豪華キャストを迎え、終戦80周年となる2025年、女性たちがついた“嘘”から始まる物語をスクリーンに描き出す。
『宝島』公開中
原作:「宝島」(真藤順丈 著/講談社文庫)
戦後沖縄を舞台に、史実に記されてこなかった真実を描き切った真藤順丈による傑作小説「宝島」。審査委員から満場一致で選ばれた第160回直木賞をはじめ、第9回山田風太郎賞、第5回沖縄書店大賞を受賞し、3冠に輝いた小説を実写映画化。
監督を、『るろうに剣心』シリーズや、『レジェンド&バタフライ』など常に新たな挑戦をし続ける大友啓史が務める。主演には妻夫木聡を迎え、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太ら日本映画界を牽引する豪華俳優陣が集結。
日本に見捨てられ、アメリカに支配された島、沖縄。全てが失われ、混沌とした時代を全力で駆け抜けた“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちの姿を、圧倒的熱量と壮大なスケールで描く。
『アフター・ザ・クエイク』10月3日より公開
原作:「神の子どもたちはみな踊る」(村上春樹 著/新潮文庫)
村上春樹の傑作短編連作「神の子どもたちはみな踊る」が刊行から25年経ったいま、岡田将生、鳴海唯、渡辺大知、佐藤浩市ほか超豪華俳優陣で映像化。物語の鍵を握る“かえるくん”の声をのんが演じ、奇妙で美しき物語世界へ観客を誘っていく。
監督は連続テレビ小説「あまちゃん」、映画『その街のこども』など数々の話題作を手掛けてきた井上剛。脚本を『ドライブ・マイ・カー』の大江崇允、音楽を『花束みたいな恋をした』の大友良英が手掛ける。
本作はギャラクシー賞を受賞したNHKドラマ「地震のあとで」(2025年4月放送)と物語を共有しつつ、4つの時代を結ぶ新たなシーンが加わり、世界が大きく変わった30年という時代のうねりを映し出した1本の映画として新たに生まれ変わった。
『アフター・ザ・クエイク』は10月3日(金)よりテアトル新宿、シネスイッチ銀座ほか全国にて公開。
(シネマカフェ編集部)