韓国から帰国し、首相官邸に入る石破茂首相=1日、東京・永田町 1940年の帝国議会で日中戦争を批判した斎藤隆夫衆院議員(当時)の「反軍演説」を巡り、削除された議事録を「復活」させる案を与野党が検討している。石破茂首相(自民党総裁)が森山裕幹事長に与野党協議を行うよう指示。近く衆院議長の諮問機関「議会制度協議会」で具体的な議論が始まる見通し。複数の関係者が1日、明らかにした。
反軍演説は40年2月2日の衆院本会議で斎藤氏が行った代表質問の通称。泥沼化する日中戦争について「現実を無視し、聖戦の美名に隠れ、国民的犠牲を閑却」するとして糾弾。軍部などが猛反発し、小山松寿衆院議長が職権で速記録から演説の後半を削除した。斎藤氏は議員除名に追い込まれた。
石破首相は反軍演説への思い入れが強く、2018年7月には兵庫県豊岡市の斎藤氏の記念館を訪問。戦後80年を迎えた今年1月の会合で、斎藤氏に触れて「権力に屈せず本当のことを言わないと国は傾く」と語った。首相周辺は「これは首相肝煎り案件だ」と説明した。
議事録の復活には全会派の賛同が必要とされる。立憲民主党などは前向きだが、自民内には慎重論があり、早期に実現するかどうかは不透明だ。