「視聴者が見たいところを見せてくれない」『あんぱん』前半は絶賛の嵐も後半の失速招いた“時間飛ばし”【識者が解説】

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2025年10月04日 06:10  web女性自身

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今田美桜(28)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『あんぱん』が9月26日、ついに最終回を迎えた。



『アンパンマン』を生み出した漫画家のやなせたかしとその妻の小松暢をモデルに、激動の時代を乗り越えて、人々に希望を与える国民的作品に辿り着くまでの夫婦を描いた同作。今田が妻の暢をモデルにした朝田のぶを、北村匠海(27)がやなせたかしをモデルにした柳井嵩を演じた。



3月末の放送開始当初から高評価を得ていた同作は、全130回の期間平均世帯視聴率が16.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、歴代最低を記録した前作『おむすび』の13.1%を大きく上回った。26日に放送された最終回の世帯平均視聴率は18.1%で、番組最高を記録し、大団円で幕を閉じた。



放送前は同作に高い期待を寄せていたTVコラムニストの桧山珠美さんに、半年を総括してもらった。



(以下、ネタバレを含みます)



「前半は盛り上がっていましたが、後半は特に“必殺すっ飛ばし”が気になりました。というのも、視聴者が見たいところをなかなか見せてくれないんです。



例えば、1番近いところでは、アンパンマンがようやくアニメ化される話があって、視聴者も”ここを待ってたんだぞ!”っていうところなのに、”崇がこだわって3年経ちました”と、もう3年後になっている。



そのこだわりとかやり取りの部分が『1番見たかったんですけど……』と思ってしまいました。そういう”あれから何年経った”みたいな”すっ飛ばし”がこのドラマにはよくあって、それが必ず1番見たいところなんです。なので、そこがすごく何だかなという気持ちになりました」



また、アンパンマンの原型となる、「頭巾をかぶってマントをつけ空を飛ぶ太ったおじさん」のキャラクターが描かれたイラストの作中での扱いにも違和感を感じたという。これは実際には、’70年に出版された短編メルヘン集『十二の真珠』にも収録されているアンパンマンの原点ともいえる作品の一部だ。



「作中でこのおじさんのキャラクターを編集者に見せるんですが、不評なんですよね。それなのに諦めずに持ち込みとかもするのですが、何年経っても何の工夫も努力もせず、ペラで1枚、白黒で描いただけのまま。



持ち込みするなら最低でも、ストーリーを作ったり色付けするとか本にするとかできることはあると思うんですよね。あれでは、私が編集者でもピンと来ないと思います。この問題は脚本家の思い入れの強さにあると思います」



中園氏は10歳のときに父を亡くし、つらい時期に母がやなせ氏の詩集『愛する歌』を買い与えたのがきっかけで文通が始まり、思春期になる頃まで続いたというエピソードを明かしている。



「中園さんはやなせさんとは特別な繋がりがあって、脚本ができる前から『下手なものは書けない』みたいに話していますよね。作中にも自分の分身的な少女が登場して、彼女がアンパンマンの原型を見て『このおじさん、私好きよ』と言って、崇が動くみたいな構図でした。



脚本家にとっては大切なこのエピソードを入れたいがために、やなせさんがアンパンマンの原型を何年も放置するという、視聴者には違和感のある設定になっていたのかなとも思ってしまいました」



そして、最大の違和感はやなせたかしの物語なのに、物語の中心がヒロインののぶであることだと指摘する。



「大前提として、なぜ妻を主役にしたのかというのがあります。そのせいで、何かと不自然にのぶの手柄になっていました。のぶに言われて漫画を描いたりコンクールに応募したり。アニメ化の話があったときも、崇は『僕はテレビ局もあなたも信用してないけど、妻だけは信用しているのでやります』みたいなセリフを言わせていましたよね。



実際の暢さんは、お茶の先生や山登りなど自分の人生を生きていた人のようですが、作中では崇の仕事が順調に行き始めると、のぶは突然『私は何者にもなれなかった』みたいなことを嫌な感じで言ったり、最後までヒロインへの苦手意識が拭えなかったのは残念です」



一方で、高く評価するポイントもある。最終話のラストシーンでも流れた主題歌のRADWIMPSによる『賜物』だ。



「”逆転しない正義”がひとつのテーマでしたが、私の中で1番逆転したのが主題歌の『賜物』です。最初にオープニングで聞いたときは朝ドラっぽくなくて『なんだこれ 』と思ったんですが、歌詞を見たら歌詞がすごくよくて好きになりました。



そして、最終話のラストでこの曲がクラシックバージョンで流れたじゃないですか。病気ののぶが元気になった夫婦のシーンで『時が来れば お返しする命』と歌詞の字幕付きで流れて、もう歌詞がぴったり。あの歌がなければ最後絶対に締まらなかったと思います。



野田洋次郎さんのやなせさんの解釈は間違っていないと思いました。この『賜物』が、私たちに贈り物をくれたなっていうのがあのドラマなんだろうと思います。最初の印象と最後では全く逆転してしまいましたねって」



辛口な部分もあったが、桧山さんは半年を振り返って総じて「面白かった」と評価する。



「1番上手く書けていたと感じたのが、やっぱり松嶋菜々子さん演じる身勝手なお母さんですよね。同じく自身の生み出した’00年のドラマ『やまとなでしこ』の松島さんのキャラとそっくりなのも面白かったです。



他にも、おじいちゃんの吉田鋼太郎さんも良かったし、もちろん伯父さんの竹野内豊さんも弟の千尋の中沢元紀さんもすごくよかった。出演者の高い演技力に加え、やっぱり誰もが知る国民的アニメだから視聴者はとっつきやすかったし、楽しめたと思います」

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