戦後80年の所感を発表する石破茂首相=10日午後、首相官邸 石破茂首相が10日、戦後80年を巡る所感を発表した。「今後も平和を追求してほしい」「物価高の中、なぜ今の発表だったのか」。被爆地や沖縄などからはさまざまな声が上がった。
広島県原爆被害者団体協議会(県被団協)の佐久間邦彦理事長(80)は、首相が所感で植民地支配や侵略に言及しなかったことについて「侵略戦争という位置付けは首相の中にもなく、戦争が起きたのはやむを得なかったと思っているように感じた」と指摘する。
石破首相は所感発表に以前から意欲的だったが、結果的に退任間近になった。佐久間さんは「もっと早く出すべきだった。けじめとして話をしようとしたのではないか」と語った。その上で「誰が首相になろうとも、核兵器のない世界、平和な世界は今後も追求してほしい」と日本政府に期待を寄せた。
先の戦争で住民を含む約20万人が犠牲となった沖縄県。激戦地の一つ糸満市出身の70代女性=那覇市=は戦争で叔父と叔母を亡くし、祖母も肩に重傷を負った。「所感が出されても、米軍基地の過重な負担といった現状は変わらない。あの凄惨(せいさん)な戦いのことを思うと…もっと沖縄のことを考えてほしい」と声を詰まらせた。
那覇市に住む50代のパート女性は「石破さんには経済対策を期待していた。物価高などで国民の生活が大変な時に所感を出すべきなのか」と対応を疑問視した。
戦没者を祭る靖国神社(東京都千代田区)を訪れた京都府向日市の無職男性(61)は「今の政治家は政権を取るための行動ばかり。所感で指摘された教訓を踏まえたとしても、実際に平和のために行動ができるのか」と疑問を呈した。その上で「平和を守る意識は大事だが、日本が防衛のためにどのような外交を行っていくのかを具体的に考えてほしい」と注文を付けた。