高校生平和大使としてノーベル平和賞の授賞式に参加した甲斐なつきさん=9月23日、広島市中区 日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞決定から11日で1年を迎えた。昨年12月の授賞式に高校生平和大使として出席した広島市立基町高3年の甲斐なつきさん(18)=同市西区=は「核兵器はなくせる、なくせないではなく、なくさないといけないものだという思いがより強くなった」と力を込める。
曽祖父が広島、曽祖母が長崎で被爆した甲斐さんは、受賞決定後に広島市役所で行われた日本被団協の会見に同席した。「日本被団協は平和活動の原点。名誉ある賞の受賞がすごくうれしく、モチベーションをもらえた」と振り返る。
授賞式があったノルウェーの首都オスロには、他の高校生平和大使3人と一緒に派遣された。式ではノーベル賞委員会のフリードネス委員長や日本被団協の田中熙巳代表委員(93)の講演を聞き、「若者への責任や期待は大きいと感じた」。
田中さんの講演を聞いて涙ぐむ参列者も多く、「被爆者の実体験や生の声が人々に与える影響はすごく大きい」と実感した。その一方で、後世にどうつなげていくかという課題も感じた。
オスロでは、現地の高校などで家族の被爆体験や平和活動について話す活動も行った。大学での講演では、高校生平和大使のスローガン「微力だけど無力じゃない」を紹介すると、会場から拍手が起きた。「自分たちの思いがきちんと伝わっているのを目の当たりにしてすごくうれしかった」
現地の高校生からは「核兵器などの問題に危機感を持ち続けている」との声も聞いた。ただ、自分の周りには核兵器の問題に強い関心を持つ人は少ないという。「平和や核兵器、戦争といったテーマは漠然としたものに見えるが、実は私たちの生活に直結している。いつ(戦争が)起こってもおかしくないという問題意識を持ってほしい」と若者に呼び掛ける。
この1年、「自分の話をする機会をもらい思いを広められた」と語る甲斐さん。今後も平和団体に所属するなどして、身に付けてきた知識や経験を基に活動を続けていく考えだ。「自分よりも若い世代に被爆の実相を訴え続け、被爆90年、100年と続くような努力をしていきたい」と話している。

ノーベル平和賞の授賞式前に英国の若者らと交流する甲斐なつきさん(右から2人目)=2024年12月10日、オスロ(高校生平和大使派遣委員会提供)