過密日程の中、雨の富士で14位となった小林可夢偉(Kids com Team KCMG) 富士スピードウェイで行われたスーパーフォーミュラ第9戦、決勝レースはあいにくの悪天候により、セーフティカーランによる赤旗終了となってしまった。荒れた展開や混戦でレース巧者として知られる小林可夢偉(Kids com Team KCMG)は予選16番手からスタートから挽回のチャンスなく、14位でレースを終えることになってしまった。レース後、第9戦を振り返るとともに、今回の富士への過密日程を心配する声に可夢偉節が炸裂した。
「う〜ん、ちょっとギャンブル的な予選になっちゃいました」と、まずはウエットコンディションとなった予選を振り返る可夢偉。
「(予選Q1A組のチームメイトの福住)仁嶺が(惜しくも7番手で)Q1通らなかったので、僕らはタイヤの内圧を逆に上げて行ったけど、一瞬グリップが良くなったけど、それからはうまくハマらなかったですね。2台揃ってダメでした。予選の結果を見たら、雨なのにキレイにチーム順みたいになっていて、『ドライバー要なしか!』(苦笑)という結果になったのが、非常に歯痒いですね」
予選16番手から臨んだ決勝は、とにかく視界が厳しい状況だった。
「とにかくウィービングするのが大変でした。見た目は走り始めて途中から台風、最後の方はスチームサウナの中にいるような感じでした。本当に。どっちにしても見えませんでした」
レースの内容もさることながら、今回の可夢偉はWEC(FIA世界耐久選手権)のアップデート型トヨタGR010の2日間の耐久テストに参加し、そのフランスのポール・リカールから富士スピードウェイに直行して参戦している体調を心配する声が多い。前日の取材では、2日間で3時間程度しか寝れていないと話していた可夢偉。さすがに昨晩はよく眠れたことだろう。
「いや、逆になんか寝れなかったです。もう4時間くらいで、全然寝ていないですね。なんか、だんだん疲れてきました」
それはそうだ、とツッコミを入れてしまう。
「なんなんですかね」と、首を傾げる可夢偉。
取材したメディア陣から、可夢偉の『ワーク・ライフ・バランス』を心配する声が挙がる。
「それはなんですか?」と可夢偉。
自民党の新総裁に就任した高市早苗氏が『私自身もワーク・ライフ・バランスという言葉は捨てます』と総裁就任についての意気込みを話し、話題となっていることを伝える。
「何を言っているんですか! 人間、働いてナンボですよ! 働かないと。働いて、働いて、働くんですよ」と、熱く反論する可夢偉。
「我々スポーツ選手は老後が早いので、自由な時間は老後に取っておいて。星野一義さんが50歳近くまで走っていた(49歳までトップフォーミュラに参戦)ので、あと10年(現在、可夢偉39歳)経ったら、ホリディ・アンティル・ダイ(死ぬまで休日)という人生を歩めるので、そこまでは寝ずとも走り続けて、乗らなくなったら、消える」
あまり寝ていないためか、若干、ナチュラルハイの可夢偉。可夢偉節と人生論の話が飛躍していく。
「最近、僕思うんですけど、人間ってマヒするって、こういうことなんだなと。お酒を飲んで酔っ払っている時に自分が酔っ払っているってわかっていなくて、ふとした時に『俺、酔っ払っている』って気づくのと同じで、働くことが普通すぎて、寝ようと思っても寝れない。でも、それで今、『バランスを考えろ』というお叱りを受けて」
いや、叱っているわけではないです。
「こうしてお叱りを受けたわけですけど、『いや、何を言っているんですか』と。『倒れるまで働け』と。ワーク・ライフ・バランスという言葉を今、初めて聞きました」
働き方の議論はともかく、今の可夢偉にはまずはしっかりとした睡眠を改めて提案したい。
「今日はレースをすることなく終わって、特にこの後もセッティングについて話すこともないので、早く帰って、早めにテキーラ飲んだら8時くらいに寝れて明日、スッキリして来れるんじゃないかと。ですので今日は早く帰ります」
明日の第10戦の可夢偉パフォーマンスは、すでに始まっているようだ。
[オートスポーツweb 2025年10月11日]