イベントで日本酒を試飲する参加者ら=10日、ロンドン 【ロンドン時事】英国で「SAKE(日本酒)」への関心が高まっている。高級紙タイムズが特集を組んだり、地元スーパーが取り扱いを始めたりと、和食ブームがけん引する形で認知度も向上。一方で、コロナ禍を経て家飲みが増えたほか、若者世代は低アルコールやノンアルコールを好む傾向があり、日本酒の裾野拡大には逆風となりかねない状況だ。関係者は逆風を追い風に変えるべく、「消費者に直接アピールすることこそが鍵」と強調する。
「消費者を動かさないと小売店での取り扱いは増えず、普及しない」。英国で約20年日本酒プロモーターとして活躍する吉武理恵さんはこう語る。英国に輸入される日本酒の約8割が和食レストラン向けとされるが、メニューにあっても実際に注文する人は少ないのが現状だという。
家飲みが増える昨今、間口を広げるには「消費者に知ってもらうことが重要」として、試飲イベントなどに力を入れる。10〜11日にも、日本の食と酒類を「オールジャパン」で売り込むイベントをロンドンで開催した。
こうした中、小売り販売でも糸口が見つかりつつある。現地のスーパー大手ウェイトローズは昨年、日本酒の取り扱いを開始。検索数が前年比で約240%増えたことが後押ししたという。
「売れないものは置かない」と言われる同社に卸すため、酒造会社の明石酒類醸造(兵庫県明石市)で海外マーケティングを担当する小松美保さんは、デザインを分かりやすくし、試飲や日本酒教育を通じて地道に働き掛けたと明かした。ワイン小売り大手にも卸す予定で、今後も「販売は伸びる」と期待する。
ロンドン西部でパブを経営するマークさんは、価格が高いのが課題だとしつつ、「日本酒はアルコール度数が低く、弱いお酒を好む若者の嗜好(しこう)と合う。ターゲット層となり得る」と語った。