北村匠海「Z世代とホンネトーク」『愚か者の身分』俳優の北村匠海、林裕太、綾野剛が第30回釜山国際映画祭のメインコンペティション部門で最優秀俳優賞に輝いた映画『愚か者の身分』の試写会が10月13日、都内で行われた。
西尾潤氏のデビュー作で、第2回大藪春彦新人賞を受賞作した小説を映画化した逃亡サスペンス。貧しさから闇ビジネスの世界に足を踏み入れてしまい、抜け出せなくなった3人の若者たちの運命と友情を描く。
この日は、「Z世代とホンネトーク」と題したティーチイン付試写会に北村と林、永田琴監督が出席し、映画を鑑賞したばかりの観客と意見交換。北村は本作が描く社会の闇の根底に「お金の価値(の問題)があると思う」と語り、「生きる=お金ではない。人とのつながりや、ありがとうが言えること。身近にある小さな小さな幸せをつかんでほしい」と自身の“幸福論”をファンに伝えた。
北村はSNSで女性を装い身寄りのない男たちを利用して“戸籍売買”で稼ぐ主人公・タクヤを、そして林は、複雑な家庭環境で愛を知らずに育ち、兄のように慕うタクヤに誘われて、闇ビジネスに足を踏み入れてしまうマモルを演じている。
北村は「タクヤを演じながら、お金の価値や稼ぐ意味を考えた」と言い、「タクヤとマモルにとっては、お金が希望だった。そこにすがる人もいて、否定も肯定もしないですが、執着するとこうなる」と映画が描く悲劇について持論。「生きづらさを感じ、人生に目を背けたけど、マモルと出会って生きる理由を見出した」と役柄について語った。
一方の林も「タクヤがいたからこそ、人の愛情や優しさを受け取れたし、悲しみも知れた。それを得て、マモルが生きようと選択したのなら、それはすごく素晴らしいこと」と両者の絆について言及。「みんなにも、タクヤみたいな存在がいてくれたらいいと思う」と話していた。
すると、北村は「僕が今まで出会った人の中で、一番ピュア」だと林を評し、「僕にはそのピュアさはないかな(笑)。裕太がマモルを演じたからこそ、その魅力が引き出された」と絶賛していた。
舞台のひとつとなる新宿・歌舞伎町について、永田監督は「昔に比べると、だいぶ変わった。反社の人たちがセーブされて、ある意味安全になったが、簡単に入りやすくて若い人には危険。実際、中高生みたいな子もたくさんいて、どうしたものかなと」と問題提起。同時に「そこをオアシスのような生き場にしている人たちもいて、今はとにかく不思議な場所」だと当事者に思いを寄せた。
北村と林は、実際に深夜の歌舞伎町でロケを行い「言葉にできない風景で、混沌さを肌で感じた。タクヤやマモルにとっては、確かに生きる場所だし、これは否定できないなと」(北村)、「そこに生きている人は楽しそうですけど、どういう事情で楽しんでいるのかは分からない。それに楽しい側面だけ見たい人や『こうだよね』って言いたい人もいて、いろんな人の視点が入り混じっている」(林)とリアルな肌感をふり返っていた。
『愚か者の身分』は10月24日(金)より全国にて公開。
(シネマカフェ編集部)