
自公連立の崩壊で分からなくなっているのが、次の総理大臣が誰になるかです。来週予定される総理大臣指名選挙。与野党の駆け引きの中で浮かぶ「3つのシナリオ+1」とは?
自公連立解消で混沌とする次期総理の座…“野党共闘”の現実味は?13日、多くの聴衆が詰めかけていたのは、国民民主党の街頭演説会です。
少し遅れて玉木代表が到着すると、聴衆の関心は一気に玉木代表に。演説では、自らこう切り出しました。
国民民主党 玉木雄一郎 代表
「我々、国民民主党も『どこと組むんだ?』とか『玉木さん総理大臣になるのか?』とかいろんなことを聞かれますが、これは、今まだ誰にもわかりません」
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公明党の連立離脱で混沌とする次期総理大臣の座。
公明党 斉藤鉄夫 代表(10日)
「自公連立政権については、一旦白紙」
自民党 高市早苗 総裁(10日)
「一方的に連立政権からの離脱を伝えられました」
連立離脱を突きつけられた自民党の高市総裁は、連休中、議員宿舎にこもり、公の場に姿を見せていません。
その高市氏に対し、アメリカのベッセント財務長官は…
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アメリカ ベッセント財務長官(Xより)
「高市氏が自民党の総裁に選出され、近日中に日本の首相になることをお祝いします」
祝福に対し、高市氏は感謝のメッセージを投稿しましたが、その心中やいかに…
一方、野党は仮に立憲・国民・維新がまとまれば、自民党の議席数を上回る状況で、“共闘”に向けた動きが始まっています。
この連休中、精力的に地方を回った玉木代表。
11日は万博会場を訪れ、偶然会ったという維新の藤田共同代表と撮った写真を投稿しました。この場で、どんな会話が交わされたのかはわかりませんが、その後、大阪市内で演説を行った玉木氏は…
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国民民主党 玉木雄一郎 代表
「私は国民民主党の公党の代表として、内閣総理大臣を務める覚悟はいつでもあります」
改めて、総理大臣になる“覚悟”を強調しました。
その玉木氏に対し、立憲民主党の野田代表は12日に出演した民放の番組で…
立憲民主党 野田佳彦 代表
「玉木さんは有力な選択肢で、当然、維新の藤田さんだって対象」
こう話し、国民民主と維新に党首会談を呼びかけました。
立憲民主党 野田佳彦 代表
「自民党から政権をもぎ取るのは十数年に一度のチャンス。目の前に野党が頑張ればできるかもしれないことをみすみす逃すのは、責任ある党としての態度ではない」
野党3党は14日にも幹事長による課題の整理を行い、近く党首会談を開催する方針です。
ただ、玉木氏は「安全保障などの重要政策で考えが一致しないと立憲とは組めない」との考えも強調するなど、“野党共闘”は一筋縄ではいかない気配も…
国民民主と自民党は、14日幹事長同士が会談を行う予定です。
自民党の鈴木幹事長は…
自民党 鈴木俊一 幹事長
「何があっても(高市総裁が)首班(指名)を受けられるように最大限いま努力している」
また、袂を分かった公明党に対しては、これまで公明党が候補者を擁立してきた衆院選の選挙区に独自候補を擁立する方向で検討しています。
四半世紀続いた連立の解消で、加速する新たな枠組み作り。
街の人はどう見ているのでしょうか?
60代女性
「別れて良かったと私は思う。理念がもともと本当に一緒だったのかよくわからない」
30代女性
「結局、集票のために、与党で居続けるためになんとか一緒にいた感じがする。一緒にいることに限界が見えていたと思う」
70代男性
「えらく停滞感が長い間続いていたので、そういうことが刷新できて、新しいビジョンが描けるような政治が提案されればいいかなと」
新たな総理の指名選挙は来週、行われる見通しです。
誰が総理に?「3つのシナリオ」 第4の可能性“総総分離”も?小川彩佳キャスター:
公明党の連立離脱で激震が走っていますが、政権交代の可能性も出てきているという中で、3つのシナリオについて星さんに伺っていきます。
シナリオ1「高市総理説」
シナリオ2「野田総理説」
シナリオ3「玉木総理説」
藤森祥平キャスター:
まずは、少数与党の自公から公明党が抜けました。これでさらに混沌としています。総理は誰になるのか、可能性が高そうな順番でお伝えしていきます。
一つ目は「高市総理説」です。どこの野党もまとまらずに、1回目の投票で各党が自分の党の党首の名前を書くということになりますと、上位2人の決選投票で高市総裁と野田代表が争うことになります。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
それで2回目も各党の党首の名前を書くと、自民党と立憲民主党以外は無効票扱いになるんです。2回目は多い方が勝ちですので、高市総裁が勝つということなんですが、そうすると、自民党と立憲民主党以外の政党は「何をやっているんだ」という批判が出ますよね。
それから、高市総裁が勝って、自民党の少数単独政権が発足しても、非常に不安定な政権なので、内閣不信任が出たらすぐ可決されるので、補正予算でも通したら年内に解散総選挙という動きになりますので、そうなったら今度、自民党は公明党の応援も得られないから困るということになってきますから、なかなか大変な局面になりますよね。
小川キャスター:
一方で、そうした局面のときに高市総裁が総理になった場合、「自民党の保守層が戻ってきて議席を増やすのではないか」といったような声もあるようですが。
星浩さん:
それは相当楽観的な人で、おそらく都市部のかなりの人は公明党の創価学会の世話にならないと選挙に勝てないという人がいますし、「保守層が戻ってくる」と言っていますが、保守層のかなりの部分は参政党に取られていますから、今度選挙になれば、自民党はおそらく相当厳しい状況になると思います。
一節には、公明党の応援がないというだけで、単純試算しても「議席は20〜30は軽く減るだろう」と言われています。
藤森キャスター:
そして、二つ目は「野田総理説」です。これは野田代表に維新の会、それから国民民主党などの野党が協力して、高市総裁に勝つというシナリオですね。
星浩さん:
この場合は、野党政権ができて、国民民主党も維新の会も閣僚を出すということですね。
ただ野田代表は「自分じゃなくてもいい。玉木代表でもいい」と言っていますが、最終的には玉木代表と野田代表の話し合いでどうするのかと。数が圧倒的に多いのは立憲民主党なので、野田代表が「自分がやる」というのか、玉木代表と調整するのかと、そういうことになってきます。
藤森キャスター:
そして同じく、野党がまとまって国民民主党の玉木代表を推す「玉木総理説」ですが、その前に、そもそも国民民主党の玉木代表が自民党と組んで乗っかるということはないんですか。
星浩さん:
自民党と組んでも数は過半数に達しませんし、国民民主党と公明党が作っていた政治改革案を自民党が蹴ったわけですね。政治改革案を蹴られた側として、「公明党は抜けましたが、私(国民民主党)はついていきます」というのも少しかっこ悪いので、国民民主党が自民党と組むというオプションはなかなか考えにくくなりましたね。
そうすると、玉木代表が「自分がやるんだ」ということを貫くのか、立憲民主党を中心とした政権の中で重要閣僚をやって準備を整えるのかは、玉木代表の判断ということになってくると思います。
東京大学准教 斎藤幸平さん:
自民党と維新の会という組み合わせはないんですか?
星浩さん:
これは維新の会次第ですが、公明党が抜けたところに維新の会が入る事に対して、果たして自民党の中でウェルカムがあるかどうかですね。
公明党は創価学会の票がありましたが、維新の会は大阪の票しかないので、自民党の中で維新の会を歓迎するムードはなかなかないんですよね。
東京大学准教 斎藤幸平さん:
玉木代表があんな態度なので、そうなってくるとシナリオ1の「高市総理説」が有力かなと思いますが、それでも結局安定しないので、政治はますます停滞して空白が生まれて、結局、この間我々が苦しみますよね。
インフレ対策などが全然進んでいないことに国民は怒っているので、その不満は結局、「日本人ファースト」を掲げる参政党に行ってしまう。
この状況は、ヨーロッパなどでポピュリズムが出てきているのに似ているわけですが、ヨーロッパを見ると、この状況は打開策がほとんどなくて、年単位で続いていくということを、日本の我々も覚悟しなければいけないなというふうに見ています。
小川キャスター:
喫緊の課題がずっと宙に浮き続けていますからね。
星浩さん:
石破総理が続投するという可能性もゼロではないですが、“総総分離”、いわゆる総裁と総理が分離するという可能性もあります。
28日にトランプ大統領と日米首脳会談を開催しますが、実権のない総理大臣だけの石破総理に日米首脳会談が本当に務まるのかどうかという疑問もありますし、むしろ自民党の中で、高市総裁に対して不満をもつ人たちが造反を起こす可能性が出てくると、また複雑な動きに繋がってくると思います。
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<プロフィール>
斎藤幸平さん
東京大学准教授
専門は経済・社会思想
ドイツに研究滞在も
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
政治記者歴30年
福島県出身