京都地裁=京都市中京区 京都大の旧霊長類研究所の研究費不正支出問題を巡り、京大が同研究所の松沢哲郎元所長に2億円の損害賠償を求めるなどした訴訟は14日までに、京都地裁で和解が成立した。松沢氏の代理人弁護士が同日、明らかにした。和解は7日付。
訴状によると、松沢氏を代表者とする研究が2010〜12年度、日本学術振興会の補助金対象に選定されたが、研究に使う大型ケージの一般競争入札で不適切な取り扱いがあったとして、補助金交付が取り消された。京大は加算金を含め、計約3億6100万円を同振興会に返還。うち2億円の支払いを松沢氏に求め、22年に提訴していた。
一方、松沢氏側も不正支出問題を理由に懲戒解雇されたのは不当として、京大を提訴していた。
代理人弁護士によると、双方が訴えを取り下げ、松沢氏側が解決金を支払うことで和解した。代理人弁護士は「非を認めて和解したわけではない」と説明。解決金の額は明らかにしなかった。
松沢氏は言葉を覚えたチンパンジー「アイ」の研究で知られる霊長類研究の第一人者。06〜12年、同研究所長を務めた。20年に不正支出問題が発覚、松沢氏は懲戒解雇され、同研究所もその後、ヒト行動進化研究センターなどに再編された。
京大は「和解したことは事実だが、詳細についてはお答えできない」とコメントした。