設立25周年を迎えたタイの孤児施設「バーンロムサイ」

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2025年10月14日 21:38  TBS NEWS DIG

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日本人が手掛けるタイの孤児施設

タイ北部チェンマイにある子どもたちの生活施設「BAN ROM SAI(バーンロムサイ)」は、HIVに母子感染した孤児の施設として、名取美和さんが1999年に設立しました。
ここでは衣類や雑貨などを製作して販売したり、リゾートホシハナという宿泊施設の運営もしたりして、収入の一部を賄うほか就労支援としての役割も担っています。
去年設立25周年を迎えたということもあり、近況を聴きました。

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名取美和さんの娘、バーンロムサイジャパン代表の名取美穂さん
「元々うちはHIVに感染した孤児たちの施設としてオープンしたんですけれど、もうお薬が広まってからお薬を飲んでいると発症せずに生活していけるし、お母さんからの感染も防げるようになったので、もう10年以上前から母子感染児っていう子は新しく入ってきてないんです。今は他の事情で親と暮らせない子どもたちを預かっています」

バーンロムサイの施設の定員は30人ですが、2020年に新型コロナの流行で子どもたちの受け入れがストップしました。
今は17人の子どもたちが暮らしていて、今後、国立孤児院から新しい子どもたちもやって来る予定です。
ただ、施設で預かれるのは18歳までなので、大きくなった子は施設を出て生活しなければいけません。
そのような卒園した人たちへのHIVの薬の支援も行っています。
HIVに感染するとエイズの発症を抑えるために薬を飲み続けなければなりません。
患者にとっては薬代が大きな負担となります。

バーンロムサイジャパン代表の名取美穂さん
「最年長の卒園生の男の子が、今度うれしいことにビザの申請も通って、初めて日本で働くんです。受け入れ先は長年うちを支援してくださっている会社なんですが、いま私はお薬のやり取りをしていて、日本で同じ薬を飲もうとすると年300万円(保険適用前)とかすごい金額になっちゃうので、今それを何とかしようと思っているんです。最年長の男の子、今年で34です。子じゃないですね、普通に大人でした。(笑)」

この最年長の男性ですが、中学の頃からずっと「日本に行きたい」と言っていたそうで、ようやく夢が叶うということになります。

初の同窓会を開催

今年4月、バーンロムサイ設立25周年の「同窓会」が現地で開かれました。
卒園生は60人くらいいるそうですが、このうち40人ほどが集まったということです。

同窓会ではこれまで顔を合わせたことがなかったという、卒園者と今の子どもたちとの初の対面という場面もあり、交流が深まったそうです。
また、会場は屋外だったので非常に暑かったそうですが、日本のお祭りのような雰囲気でにぎやかだったということです。

バーンロムサイジャパン代表の名取美穂さん
「本当いろいろ支援者の方が来てくださって、大きな企業のお偉いさん方が頑張って日本の屋台みたいなのを作ってくださって、たこ焼きとか焼きそばとか、みんなたぶん楽しんでくれたんじゃないかなと思います。総領事の方にもお言葉をいただきまして。彼氏彼女さんとか子連れもいましたし。もう嬉しかったです」

鎌倉で出会うバーンロムサイ

バーンロムサイは日本では鎌倉に店舗を構え、衣類や雑貨などを販売しています。
例えば、インドコットンを使ったブラウスやパンツ、ピンクや赤など色鮮やかな花柄が刺繍されたタイの山岳民族の衣装をリメイクした財布などがあります。

最近は、鎌倉の街は外国人旅行者が多く訪れていて、お店も駅から鎌倉の大仏に向かう道の途中にあるため、取材中も外国人客がたびたび訪れていました。
現地タイで作られたものはもちろん、コロナの時に始めた岐阜県の縫製工場で外国人実習生が作った「ジャパンメイド」のものも人気だそうです。

商品がどう作られ、どこに還元されるのか

取材した日にお店にいたのは、2年前からバーンロムサイで働く台湾出身の林芳宇(リン・ファンユ)さん。バーンロムサイの誇れるところを聞きました。

バーンロムサイで働く台湾出身の林芳宇さん
「商品の販売だけではなく、その商品はどうやって作っているのかとか、お客さんとしてもお金を払っているわけで、その払ったお金はどこに行くのかという、そういうストーリーを伝えるのはすごくバーンロムサイの強みかなと思います。大量生産のものは確かに安いから買いやすいんですけど、捨てられるのも早いから地球にも優しくないし、お金も一部の人だけに集中してしまう。もっといい循環を作る社会貢献ができればいいかなと思います」

バーンロムサイが作る衣類や雑貨は、鎌倉の店舗のほかオンラインショップでも購入できます。

買うことで、代金が子どもたちの支援に使われます。

(TBSラジオ「人権TODAY」担当:進藤誠人)

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