長野県中野市で2023年5月に住民女性と警察官の計4人を殺害したとして、殺人と銃刀法違反の罪に問われた同市の農業、青木政憲被告(34)の裁判員裁判で、長野地裁は14日、求刑通り死刑を言い渡した。坂田正史裁判長は「結果の重大性、残虐性などを前に被告の刑事責任はあまりにも重大で、死刑をもって臨む以外にない」と述べた。
「被告人を死刑に処する」。4人を殺害した罪などに問われた青木被告の裁判員裁判で、坂田裁判長は約30分間にわたり判決理由を読み上げた後、極刑を告げた。青木被告は下を向いたり、体を揺らしたりしながら静かに耳を傾けていた。
「自分ごとではなく、人ごとと感じているようだった」。閉廷後、記者会見した裁判員の一人は印象を振り返った。
一連の公判では、青木被告の口から犯行に至った理由や被害者への謝罪が語られることはなかった。
「あなたしか母の最期を話せる人はいない。話してもらえませんか」。被害者遺族が直接問いかけた際も、青木被告は淡々と「黙秘します」と繰り返すのみ。「他の言葉はないのか」との投げかけには「何もありません」と答えた。
|
|
判決などによると、青木被告は都内の大学に進学後、周囲から「(独り)ぼっち」「きもい」と言われていると妄想を抱くようになり、大学を中退。実家に戻り家業の果樹園で働き始めると落ち着いたが、2022年から経営を任されたジェラート店では「(店員から)ぼっちとばかにされた」と怒りをあらわにすることもあった。事件はこうした妄想が引き金とされる。
青木被告の父親は公判で「政憲が悪いのはその通り。親として病気を見逃し、悔やんでも悔やみきれない。(ジェラート店を任せるなど)政憲のためと思ったことが逆の方向になってしまった」などと証言した。
公判で青木被告が事件に触れたのは一度。結審に際し裁判長から促され、数秒の沈黙後、早口で語った。
「私は異次元の存在から迫害を受けて、死刑になるためにここに来た。中の人たちを傷つけて申し訳ない。もう二度とプレーしない。被害を受けた人たちには埋め合わせがあるだろう」
弁護人は発言自体に驚き、「(現実と)妄想とのギャップをどう埋め合わせるか、苦しんだ上での発言だったのだろう」と推察した。
|
|
判決を受けて被害者遺族たちは「(青木被告が)自身の犯した重大な罪に真剣に向き合うことを強く望みます」と文書でコメントした。【鈴木英世】
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 THE MAINICHI NEWSPAPERS. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。